にゃんとワンダフルDAYS

月芝

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014 必殺猫パンチ!

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「ちょろちょろ逃げんなや、コラーっ!」

 捕獲用のタモ網を手に、チンピラ風の弟分が動物たちを追いかけ回す。
 しかしムキになって追われるほど、もっと逃げたくなるもの。
 それはネコのみならず動物全般の習性のようなものにて、てんでバラバラに叫びながら駆けまわるものだから、チンピラ風の弟分は翻弄されて右往左往している。
 そこへ二匹のドラネコたちが襲いかかった。

「にゃんにゃにゃーっ! (突撃だぁーっ!)」
「にゃんだばーっ! (やってやるっす!)」

 二頭はコテツの仲間たち。
 飛びかかっては、ガリっ! ガブリ!
 一頭が顔を爪で引っ掻き、もう一頭は腕に噛みつき牙を突き立てる。
 おもわぬ反撃にあってチンピラ風の弟分は驚き「ぎゃーっ」と悲鳴をあげるも、なおもタモ網は手放さず。ぶんぶんと振りまわしては抵抗する。

 ブゥン! ガタン! ドタン! どんがらガッシャーン!

 倉庫内に激しい物音が鳴り響いた。
 めったやたらとタモ網を手に暴れるものだから、そこかしこに積まれていたキャリーケースの山がガラガラと崩れたのだ。
 ひょうし盛大に埃と抜け毛が舞いあがった。これによりいっきに強まる獣臭。
 たまらずサングラスの兄貴分が「へっくしょん! ぶえっくしょん! しゃーなろう」 大きな声でオッサンくしゃみを連発しては、鼻をずるずる。
 それでも金蔓(かねづる)を逃がしてなるものかとばかりに、サングラスの兄貴分は猛然と和香たちの方へ向かってくる。
 このため和香たちは階段を降りられず、途中で引き返すはめになった。

 逃げるどころか逆にロフト内のVIP室へと追い詰められてしまう。
 とはいえ、そこは身軽なネコ。
 その気になればピョーン、どうとでもなりそうなものなのだが、コテツと和香はともかくスフィンクスがちょっと怪しい。残念ながらネコにもいろんな子がいる。みんながみんな運動が得意というわけじゃない。なかにはどんくさい子もいるのだ。
 いちおうスフィンクスにお伺いを立ててみたら「にゃんにゃなぁ~。(根っからのインドア派だから、あんまり自信ない)」とのことであった。
 というわけで強行突破は却下。
 ならばと、コテツが「にゃんにゃにゃにゃにゃ。(ここはオレが引き受けた。おまえたちは逃げろ)」なんぞと勇ましいけど。
 でもその台詞、死亡フラグだから。

(う~どうする? どうしよう? どうしたらいいの?)

 ピンチを脱すべく和香は懸命に頭を働かせる。いまこそ義務教育で培った知恵を活かすとき。何かヒントはないかと周囲をキョロキョロ。
 で、たまさか目に留まったのが撮影機材一式である。
 カメラは大きなレンズが付いた一眼レフにて、いかにも高そうだ。

「にゃ~にゃ~にゃんにゃあ~。(ということは、壊れたらたいへんだよねえ)」

 和香はスタスタスタ、三脚にセットされているカメラの方へと近づく。
 そんなネコの行動に気づいて、サングラスの兄貴分は明らかに狼狽した。

「げっ、ちょ、ちょっと待て。いい子だから、ねえ? おぉ、そうだ! ちゃるチュール、ちゃるチュールをあげるから。だからお願い、こっちへおいで~」

 気色の悪いネコ撫で声にて懇願されるも、ふり返った和香はにへらとの笑み。
 あいにくとペット用のおやつごときで買収されるほど、安い女ではない。
 というわけで……

「うんにゃあぁぁぁーっ! (くらえ、必殺猫パーンチ!)」

 えぐり込むようにして打つべし、打つべし、打つべし。
 渾身の三連打を喰らって三脚がガタガタ揺れてぐらり、大きくバランスを崩す。
 そのままゆっくりと傾いでいき、放物線を描き床へと向かって落ちていくカメラ。
 サングラスの兄貴分が悲鳴をあげては、ネコたちそっちのけにて豪快にヘッドスライディング。
 そのかいあってギリギリセーフ、床にぶつかる寸前にカメラをダイビングキャッチすることに成功した。
 これに和香は「ちっ」と舌打ち。
 でも、おかげで隙ができた。
 コテツ、スフィンクス、和香らは、ロフトから脱出すべく一斉に階段へと向けて駆け出した。

  ◇

 階下ではチンピラ風の弟分を相手にして、コテツの仲間たちが奮闘中。
 そこへ和香たちも加勢する。
 コテツが右足に噛みつき爪を立て、スフィンクスも「にゃにゃにゃ。(こうなりゃヤケだ)」と左足に噛みつき、チンピラ風の弟分は「ヤメて、痛い痛い」
 涙目の弟分はたまらず足に食らいついた二匹をどかそうとする。
 だが前屈みとなったところへ和香が飛びかかった、鼻先をおもいきりガブリ!
 五匹の猫たちの攻勢に押されてタジタジ、チンピラ風の弟分はすってんころりん、盛大に尻もちをつきしたたかに腰を打つ。
 そこを「シャーッ!」と容赦なく袋叩きにする五頭。
 これにて勝負あり。

 グロッキーとなったチンピラ風の弟分に、コテツたちはいまだプンスカと怒りがおさまらない。
 しかし和香はいちはやく興奮がおさまった。
 で、見つけたのが近くに落ちていたスマートフォンである。弟分の持ち物であろう。
 試しに肉球で画面に触れてみたらちゃんと反応した。不用心なことに生体認証のロック等をかけていないようだ。
 スマートフォンを前にして和香は「にゃにゃにゃ。(あっ、いいこと思いついちゃった)」
 画面を操作してやったのは、警察に通報すること。
 首尾よく電話が繋がったところで、すぐには見つからないようにスマートフォンを隅っこの方に蹴飛ばしておく。
 これで倉庫内での騒ぎが電話の向こうにも伝わるはず。
 不審におもっておまわりさんが駆けつけてくれれば、しめたもの。

「にゃっしっしっ」

 和香はほくそ笑む。


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