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「バルカン様ぁ、ギュッと抱きしめてくださいまし」
次の日の朝、フロティナは寝起きに伸びをした快感によって痣が光り輝いていた。
「かわいい俺の婚約者、おはよう」バルカンは相変わらずな様子で彼女を抱き寄せる。「昨日は温かかったです……」フロティナはうっとりとした眼差しをバルカンに向けて、少し頬を染めた。
「んー……そうか、二人で眠ると温かいなぁ」
バルカンもうっとりとした目でフロティナを見つめると彼女の頭を撫でた。
それだけなのにフロティナはバルカンが愛しくて愛しくて堪らない気分になっていく。
ずっと前から彼を求め、想い焦がれていた気分になる。
そしてそれは今彼女にとってはとても正しいことなのだ。
「バルカン様……」
「どうした?キスか?」
「はい、フロティナにキスをしてくださいまし」
バルカンはフロティナを抱き寄せながら彼女の唇にキスをする。それはドンドン深さを増して、恐らく興奮したであろうバルカンはフロティナの背中を撫でる。
ゾクゾクと湧き上がる快感を撫でさすられて……フロティナの下着が濡れていくような気さえした。
「……バルカン様、私……赤ちゃんが欲しい」
お互いの舌先からトロ……と糸を垂らしながら、フロティナは上目遣いでバルカンを見た。
「……俺もお前との子が欲しい、今すぐ結婚するか」ゴクリと喉を上下させたバルカンがフロティナを見つめて言う。
「……嘘、バルカン様は私と結婚できません。こんなにバッキバキにさせても……」
フロティナはそう言ってバルカンに縋るように抱きつくと我に返る。
「危ないわ!…………ストレッチの快感でも正気を失うなんて……注意が必要ね」フロティナはバルカンから離れると身支度を整える。
「どうした?俺のマイスイートティナ」
「フロティナは昨日食べた果実の話を酒屋さんにお伺いしたいのです……でもバルカン様がこの調子じゃあ……困ったわ」フロティナはうーん……と考えていると、カタリ――と部屋の隅から音がした。
「え?」
そこからシュッと影が動いたので(大きさ的にねずみかしら?)とフロティナが思っていると「おい!ねずみがいるではないか!!」とバルカンが正気に戻って大声を上げている。
「え?そんな果実はここでは仕入れていませんか?」
「……そうですねぇ……初めて見るな……。わるいね、うちの店では出せないなぁ。他の店をあたってもらえるかい?」店内の清掃をしていた酒屋の店主にフロティナは自分で描いた果実の絵を見せて尋ねた結果……そんな答えをもらう。
「……手に鱗のタトゥーが入ったスタッフはいらっしゃいます?……」フロティナはダメ元で聞く。この様子なら……恐らくそんな従業員はいないだろう。
「タトゥー?雇ってないねぇ、ごめんよまだ仕込みがあるからそろそろお暇してもいいかい?」店主が申し訳なさそうにそう言ったのでフロティナは非礼を詫びて店を出た。
「……鱗のタトゥーだと……?」
「食のプロも見たことがない……なかなか珍しい食べ物のようですね」フロティナは特徴的な果実の形状を思い浮かべながら呟いた。
「酔ってるからと言ってなんでも食うな!」
バルカンはフロティナの荷物を引ったくるとプンプン怒りながら先を歩く。「だってお店のサービスだと思ったんです」フロティナはその後ろからチョコチョコついていくと、木々の隙間から見える空に(随分近い)とぼんやり思った。
「クソ、体調は悪くないか?ゆっくり行くぞ」高度が高くなって来たからか、若干息が切れやすいような気はするが……「今のところ大丈夫です」フロティナはバルカンの背中にそう答えると、昔の事を思い出していた。
フロティナにはもともと……モンスターの駆除を生業とする父がいた。物心ついた頃から二人っきりの親子で、父は言葉数は少ないがとても優しい男性だったような記憶がある。
こうしてよく……山道を父の背中を眺めながら追った。
広い背中だった――――小さな自分には。
「まだ着きませんか?」
「高度が急変するからな……ゆっくり時間を掛けて登らないと気分が悪くなるぞ」バルカンはそう言って岩に腰を下ろすと自身の上着を脱いで隣の岩に掛けた。
「フロティナの席ですか?バルカン様って紳士的ですよね」フロティナはバルカンが差し出す水筒を受け取りながらニッコリ笑う。
たしかに彼女が言う通り粗暴な言葉つきとは裏腹にバルカンの行動は紳士然としていた。
「……下らん事を言うな」
バルカンは蓋を開けるのに手間取っていたフロティナの水筒を開けると、そう言いながら空を見上げている。
空がかなり近い、随分と上に上がって来たようだ。
「そんなに登った気はしておりませんでしたが……随分と高い所まできましたね」
フロティナは純粋にそう思った。
こんなに高く感じる程登っただろうか?少ししんどいピクニック程度の気分だった。
「……特別なルートで進んでるからな」
「そうなんですか」
「お前が二度と来られないように、気軽に俺の地元に来られては困る」
バルカンはどんな顔をして言ったのであろうか、空を見上げるバルカンの顔は逆光でよく……見えなかった。
次の日の朝、フロティナは寝起きに伸びをした快感によって痣が光り輝いていた。
「かわいい俺の婚約者、おはよう」バルカンは相変わらずな様子で彼女を抱き寄せる。「昨日は温かかったです……」フロティナはうっとりとした眼差しをバルカンに向けて、少し頬を染めた。
「んー……そうか、二人で眠ると温かいなぁ」
バルカンもうっとりとした目でフロティナを見つめると彼女の頭を撫でた。
それだけなのにフロティナはバルカンが愛しくて愛しくて堪らない気分になっていく。
ずっと前から彼を求め、想い焦がれていた気分になる。
そしてそれは今彼女にとってはとても正しいことなのだ。
「バルカン様……」
「どうした?キスか?」
「はい、フロティナにキスをしてくださいまし」
バルカンはフロティナを抱き寄せながら彼女の唇にキスをする。それはドンドン深さを増して、恐らく興奮したであろうバルカンはフロティナの背中を撫でる。
ゾクゾクと湧き上がる快感を撫でさすられて……フロティナの下着が濡れていくような気さえした。
「……バルカン様、私……赤ちゃんが欲しい」
お互いの舌先からトロ……と糸を垂らしながら、フロティナは上目遣いでバルカンを見た。
「……俺もお前との子が欲しい、今すぐ結婚するか」ゴクリと喉を上下させたバルカンがフロティナを見つめて言う。
「……嘘、バルカン様は私と結婚できません。こんなにバッキバキにさせても……」
フロティナはそう言ってバルカンに縋るように抱きつくと我に返る。
「危ないわ!…………ストレッチの快感でも正気を失うなんて……注意が必要ね」フロティナはバルカンから離れると身支度を整える。
「どうした?俺のマイスイートティナ」
「フロティナは昨日食べた果実の話を酒屋さんにお伺いしたいのです……でもバルカン様がこの調子じゃあ……困ったわ」フロティナはうーん……と考えていると、カタリ――と部屋の隅から音がした。
「え?」
そこからシュッと影が動いたので(大きさ的にねずみかしら?)とフロティナが思っていると「おい!ねずみがいるではないか!!」とバルカンが正気に戻って大声を上げている。
「え?そんな果実はここでは仕入れていませんか?」
「……そうですねぇ……初めて見るな……。わるいね、うちの店では出せないなぁ。他の店をあたってもらえるかい?」店内の清掃をしていた酒屋の店主にフロティナは自分で描いた果実の絵を見せて尋ねた結果……そんな答えをもらう。
「……手に鱗のタトゥーが入ったスタッフはいらっしゃいます?……」フロティナはダメ元で聞く。この様子なら……恐らくそんな従業員はいないだろう。
「タトゥー?雇ってないねぇ、ごめんよまだ仕込みがあるからそろそろお暇してもいいかい?」店主が申し訳なさそうにそう言ったのでフロティナは非礼を詫びて店を出た。
「……鱗のタトゥーだと……?」
「食のプロも見たことがない……なかなか珍しい食べ物のようですね」フロティナは特徴的な果実の形状を思い浮かべながら呟いた。
「酔ってるからと言ってなんでも食うな!」
バルカンはフロティナの荷物を引ったくるとプンプン怒りながら先を歩く。「だってお店のサービスだと思ったんです」フロティナはその後ろからチョコチョコついていくと、木々の隙間から見える空に(随分近い)とぼんやり思った。
「クソ、体調は悪くないか?ゆっくり行くぞ」高度が高くなって来たからか、若干息が切れやすいような気はするが……「今のところ大丈夫です」フロティナはバルカンの背中にそう答えると、昔の事を思い出していた。
フロティナにはもともと……モンスターの駆除を生業とする父がいた。物心ついた頃から二人っきりの親子で、父は言葉数は少ないがとても優しい男性だったような記憶がある。
こうしてよく……山道を父の背中を眺めながら追った。
広い背中だった――――小さな自分には。
「まだ着きませんか?」
「高度が急変するからな……ゆっくり時間を掛けて登らないと気分が悪くなるぞ」バルカンはそう言って岩に腰を下ろすと自身の上着を脱いで隣の岩に掛けた。
「フロティナの席ですか?バルカン様って紳士的ですよね」フロティナはバルカンが差し出す水筒を受け取りながらニッコリ笑う。
たしかに彼女が言う通り粗暴な言葉つきとは裏腹にバルカンの行動は紳士然としていた。
「……下らん事を言うな」
バルカンは蓋を開けるのに手間取っていたフロティナの水筒を開けると、そう言いながら空を見上げている。
空がかなり近い、随分と上に上がって来たようだ。
「そんなに登った気はしておりませんでしたが……随分と高い所まできましたね」
フロティナは純粋にそう思った。
こんなに高く感じる程登っただろうか?少ししんどいピクニック程度の気分だった。
「……特別なルートで進んでるからな」
「そうなんですか」
「お前が二度と来られないように、気軽に俺の地元に来られては困る」
バルカンはどんな顔をして言ったのであろうか、空を見上げるバルカンの顔は逆光でよく……見えなかった。
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