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「フロティナと婚約したままでは他の女性と結婚できませんものね」
フロティナがそう言うと、わなわなと肩を震わせたバルカンが「おい!ふざけるなよ?なんでお前は俺に会いにこないのだ!」と顔を寄せた。
「え?もう関係ありませんし……それにバルカン様の居場所なんてわかりません」フロティナは目を潤ませた。
ここでなぜ涙がでそうになるのか……場違いな感情に彼女は戸惑う。
「関係ないだと?とんでもない女だ!職場に行っても受付にはそんな女はいないと言われるし、家には帰って来ないしなんなんだ!!別の男と結婚してしまったかと思ったんだぞ!」フロティナは鼻が付きそうな程に接近してくるバルカンからなんだか色んな物が飛んできそうだったので目を閉じた。
その衝撃でポロ……と涙が一粒落ちる。
「何をおっしゃってるのですか?バルカン様は想い人を探してらっしゃるのですよね?フロティナは関係ありません。もう……痣も消えてしまいました」フロティナはなんだか涙が次々と溢れ出しそうになったので、そっぽを向くとパチパチと瞬きをした。
「な、な、な、なんて鈍い女だ!…………おい?どうした……泣くな。すまん、怖いか?怒ってない……俺は」
バルカンは愕然とした顔でフロティナを見つめると……彼女の涙に気付き、手のひらでそれを拭う。
その動作はガサツだが、不器用な人が懸命に壊れ物を壊さないように気を付けているようでもあった。
「だって……フロティナはあんなに足が大きくありません」フロティナはじっとりとした視線でバルカンを見つめながら口先を尖らせた。「……どんな女にも合わないようにしたらあんなにデカくなった」バルカンは背中を丸めながらそう言う。
恐る恐るといった様子でバルカンはフロティナに顔を寄せる。
フロティナも特にそれを拒みはしなかった。
「世界中の女性を巻き込んで……最低ですね。それに……鱗が痛いです」
「ふん、お前が見つからなかったら人間界は終わっていたから仕方がない」
バルカンは人間の姿に戻ると、フロティナを優しく正面から抱き寄せ、頬に優しく触れる。
「…………想い人はどうなりましたか?」
「……ふん、今はお前が俺の想い人だ ティナ……。本当に、本当に悪かった……すまん、ティナ……お前も俺を好きになってくれ」
「拒否権はないということですか?」
「……すまん、俺はどうしてもお前を離すことができん」バルカンはそう言うとフロティナの唇に優しくキスをした。
会場が騒然となる中、二人は見つめ合う。
今竜王の結婚相手が決定した。
オーナーは顔を青ざめさせて、後ずさりをしているが……
「お前の全ての憂いを取り除いてやる。俺の国に来い」バルカンはフロティナの頬に優しく触れながらそう言った。
「バルカン様、フロティナはケガをしたモンスターを保護する施設で働いておりまして」
「……ふん、そうだな」
「その施設でもう少し働きたいです。まだやらなければならないことがありまして」バルカンは自分を見上げるフロティナの手をギュッと握りしめる。
「わかった」
バルカンがそうやって静かに了承してくれた時――――
「ちょ……ちょっとお待ちください!」
オーナーがバルカンの前に滑り込み土下座をしながら割り込んできた。
さすが商売人の御曹司……滑らかな土下座。
「無礼だな」
バルカンはそう言ってニヤ……と笑うと片膝を床についてしゃがむ。
「無礼は承知しておりますが……あの施設にはフロティナ様が必要でございまして!彼女が居なければ気の毒なモンスターたちが……」オーナーは土下座をしたまま涙声でそう言った。
「…………」
バルカンがその様子を見て、なにやら考え込んでいる間――フロティナがニッコリ笑う。
「その点はお任せくださいまし」
フロティナはやりたいことがあった。
そのためにはまだ施設を離れるわけにはいかないのだ。
「オーナー、モンスターたちは必ず救います。これ以上気の毒なモンスターが生まれませんように」
フロティナはオーナーの顔を上げさせるとそう言って優しく微笑んだ。
「……しかしな!いいか?お前はヘラヘラヘラヘラ……男との距離が近すぎる!いいか?男というのはなあ、すぐに勘違いするもんなんだ「バルカン様こちらにご滞在予定ですか?」
会場から戻り、フロティナの自室から出て行かないバルカンにフロティナは思わず言った。
小言がうるさい。
「……当たり前だろ。竜は番とずっと一緒だ」
バルカンはフロティナの頬に触れて目を見つめた。
「番?」
「運命の相手だ」
バルカンはそう言って顔を傾けると彼女の唇を食む。
フロティナは――自分は本当にバルカンの番なんだろうか、とぼんやり思ったけれど彼の差し込んだ舌が粘膜を刺激して背筋が震えると何も考えられなくなった。
「……ふん、人間界の調査だとお祖母様には言っておくか。どれ位かかる」
「どれ位……それはわからないのです」
フロティナはしばし考え込むとそう答える。
「…………」
「先に国に戻られても大丈夫ですよ」フロティナはバルカンにベッドに押し倒されながらそう言った。彼は非常に不服そうな顔をしている。
「フロティナにはやらなきゃならないことがあります」
「…………ふん、まあお前が何をするか眺めるのもまた一興だ」バルカンは彼女の真っすぐな瞳を見て――――そう諦めたように呟くとまた、キスをした。
フロティナがそう言うと、わなわなと肩を震わせたバルカンが「おい!ふざけるなよ?なんでお前は俺に会いにこないのだ!」と顔を寄せた。
「え?もう関係ありませんし……それにバルカン様の居場所なんてわかりません」フロティナは目を潤ませた。
ここでなぜ涙がでそうになるのか……場違いな感情に彼女は戸惑う。
「関係ないだと?とんでもない女だ!職場に行っても受付にはそんな女はいないと言われるし、家には帰って来ないしなんなんだ!!別の男と結婚してしまったかと思ったんだぞ!」フロティナは鼻が付きそうな程に接近してくるバルカンからなんだか色んな物が飛んできそうだったので目を閉じた。
その衝撃でポロ……と涙が一粒落ちる。
「何をおっしゃってるのですか?バルカン様は想い人を探してらっしゃるのですよね?フロティナは関係ありません。もう……痣も消えてしまいました」フロティナはなんだか涙が次々と溢れ出しそうになったので、そっぽを向くとパチパチと瞬きをした。
「な、な、な、なんて鈍い女だ!…………おい?どうした……泣くな。すまん、怖いか?怒ってない……俺は」
バルカンは愕然とした顔でフロティナを見つめると……彼女の涙に気付き、手のひらでそれを拭う。
その動作はガサツだが、不器用な人が懸命に壊れ物を壊さないように気を付けているようでもあった。
「だって……フロティナはあんなに足が大きくありません」フロティナはじっとりとした視線でバルカンを見つめながら口先を尖らせた。「……どんな女にも合わないようにしたらあんなにデカくなった」バルカンは背中を丸めながらそう言う。
恐る恐るといった様子でバルカンはフロティナに顔を寄せる。
フロティナも特にそれを拒みはしなかった。
「世界中の女性を巻き込んで……最低ですね。それに……鱗が痛いです」
「ふん、お前が見つからなかったら人間界は終わっていたから仕方がない」
バルカンは人間の姿に戻ると、フロティナを優しく正面から抱き寄せ、頬に優しく触れる。
「…………想い人はどうなりましたか?」
「……ふん、今はお前が俺の想い人だ ティナ……。本当に、本当に悪かった……すまん、ティナ……お前も俺を好きになってくれ」
「拒否権はないということですか?」
「……すまん、俺はどうしてもお前を離すことができん」バルカンはそう言うとフロティナの唇に優しくキスをした。
会場が騒然となる中、二人は見つめ合う。
今竜王の結婚相手が決定した。
オーナーは顔を青ざめさせて、後ずさりをしているが……
「お前の全ての憂いを取り除いてやる。俺の国に来い」バルカンはフロティナの頬に優しく触れながらそう言った。
「バルカン様、フロティナはケガをしたモンスターを保護する施設で働いておりまして」
「……ふん、そうだな」
「その施設でもう少し働きたいです。まだやらなければならないことがありまして」バルカンは自分を見上げるフロティナの手をギュッと握りしめる。
「わかった」
バルカンがそうやって静かに了承してくれた時――――
「ちょ……ちょっとお待ちください!」
オーナーがバルカンの前に滑り込み土下座をしながら割り込んできた。
さすが商売人の御曹司……滑らかな土下座。
「無礼だな」
バルカンはそう言ってニヤ……と笑うと片膝を床についてしゃがむ。
「無礼は承知しておりますが……あの施設にはフロティナ様が必要でございまして!彼女が居なければ気の毒なモンスターたちが……」オーナーは土下座をしたまま涙声でそう言った。
「…………」
バルカンがその様子を見て、なにやら考え込んでいる間――フロティナがニッコリ笑う。
「その点はお任せくださいまし」
フロティナはやりたいことがあった。
そのためにはまだ施設を離れるわけにはいかないのだ。
「オーナー、モンスターたちは必ず救います。これ以上気の毒なモンスターが生まれませんように」
フロティナはオーナーの顔を上げさせるとそう言って優しく微笑んだ。
「……しかしな!いいか?お前はヘラヘラヘラヘラ……男との距離が近すぎる!いいか?男というのはなあ、すぐに勘違いするもんなんだ「バルカン様こちらにご滞在予定ですか?」
会場から戻り、フロティナの自室から出て行かないバルカンにフロティナは思わず言った。
小言がうるさい。
「……当たり前だろ。竜は番とずっと一緒だ」
バルカンはフロティナの頬に触れて目を見つめた。
「番?」
「運命の相手だ」
バルカンはそう言って顔を傾けると彼女の唇を食む。
フロティナは――自分は本当にバルカンの番なんだろうか、とぼんやり思ったけれど彼の差し込んだ舌が粘膜を刺激して背筋が震えると何も考えられなくなった。
「……ふん、人間界の調査だとお祖母様には言っておくか。どれ位かかる」
「どれ位……それはわからないのです」
フロティナはしばし考え込むとそう答える。
「…………」
「先に国に戻られても大丈夫ですよ」フロティナはバルカンにベッドに押し倒されながらそう言った。彼は非常に不服そうな顔をしている。
「フロティナにはやらなきゃならないことがあります」
「…………ふん、まあお前が何をするか眺めるのもまた一興だ」バルカンは彼女の真っすぐな瞳を見て――――そう諦めたように呟くとまた、キスをした。
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