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「おはようございます!先輩会いたかったんですよ!聞きたいことが山ほどあるんですから!」
フロティナは朝出勤すると、いつもと違う受付の女性に挨拶をされ戸惑っているところに、更にマリエルから口撃を受けた。
「あら~おはよう、マリエルさん」
フロティナがにこやかに挨拶をすると、マリエルは額に手を当てて目を硬くつぶる。
「かあ~このご機嫌な感じがいいのでしょうねえ」いつもと様子の変わらないフロティナ
を見て――――マリエルは玉の輿に必要な人間の余裕というものを学んでいた。
「どうしたの?」
フロティナはコーヒーをポットから注ぎながら不思議そうにマリエルを見る。
そんな彼女とは昼休みに話す約束をして、フロティナは飼育棟へと向かった。
「……来たんだ。もう来ないかと思ってた」
扉を開けると、静かにそんな声がした。
フェアリーだ。
「約束したじゃない」フロティナは少し小走りで彼女の檻の前に急ぐ。
「竜王のお嫁さんになるんだって?」
「ふふふ、そう」腕を組みながら、少し冷ややかな視線をこちらに送るフェアリーとは対照的にフロティナは浮かれた様子でそう言った。
「…………竜の国に行かなくていいの?彼らは結婚したら一緒に暮らすのが鉄則よ」
「ふふ、まだ結婚してないの。だってあなたに恩返しをしなきゃね。そのつもりで……私に話したのでしょう?あの実のことを」
「…………ふふ、やはりあなたは優しいわ。逃げたっていいのに。馬鹿ね」フェアリーはそうやって笑うと柵をギュッと握りしめた。
「馬鹿?よく言われるけど私意外と賢いのですよ」フロティナはそう言って彼女の檻に近づく。
「ねえ?私竜王と結婚するのよ」
「知ってるってば……」フェアリーはフロティナの言葉に少しうんざりしたような顔をしている。
「なんでも憂いを取り除いてくれるって……ねえ、私あなたが悩んだままだと……憂いてしまうわ」フロティナはじっとフェアリーを見た。
「?…………ははーん、なるほど」
「バルカン様♡」
フロティナは職場から出ると「奇遇だな」とこちらに声を掛けてきたバルカンの腕にピッタリとくっつき名前を呼んだ。
「ふ、ふ、ふ、ふしだらな女だ!こんな所でくっつくな!」バルカンは顔を真っ赤にして怒っている。
「あ、すみません」フロティナはどうやらこれは逆効果になりそうだ、と慌てて身を離した。
「……ど、どうした。別にそんなに離れんでもいいぞ」
「……別にくっつきたい訳ではなかったので……あの、頼み事がございまして、バルカン様に色仕掛けをしたかっただけなんです。でもどうやら逆効果みたいなんで止めました」
フロティナはジリジリと距離を詰めてくるバルカンから一定の距離を保つために、後ずさりながら彼をウルウルと見つめた。
「言ってみろ。どうした?手を繋ぎたいのか?」
「いいえ、手は大丈夫です」フロティナはニッコリ笑いながら胸ポケットから資料を取り出す。
オーナーには内密に持ってきたので、厳密に言えばフロティナは第三者に情報を漏洩させていることになるが……
(オーナーにバレるわけにはいかないわ)「このモンスターがフロティナの担当モンスターなんです……彼らを嫁ぐ際に帯同させることは可能ですか?この二人以外はもうかなり回復していて野生に戻せそうなのですが……」
「……ひとつ目獣と、フェアリーもいるではないか。フェアリーはまだしも、ひとつ目獣は人間にとっては危ないモンスターだろ」
バルカンはざっと資料に目を通した後――資料から顔を上げそう言った。
「いいえ、彼はとてもお利口さんで……フロティナの大切な友人です。いつも顔を舐めてくれます」
「顔を?……なるほどな……そうか、そうだなお前なら」
バルカンはフロティナの言葉になんだか納得した様子を見せる。
「瀕死の状態で施設に来たので……看病したフロティナを慕ってくれています。適正な距離を保てば問題ありません。彼らは回復後自然に戻してあげたいのです…」
「ふむ……」
「もしそれが不可能なら大型獣とフェアリーのケガが治るまでは結婚を待ってもらえます?」フロティナはケロリとそう言った。
「そんな、急に困ります」
「我が国で保護対象になる予定のモンスターだ。ここで飼育しているといずれ違法になるぞ?他はもう自然に戻せるほど回復しているではないか」
翌日バルカンは通された客室でオーナーの前で腕を組むと、威圧的にそう言った。
オーナーは竜王の急な申し出に戸惑っている。
要は、一つ目の大型獣とフェアリーが特別モンスター枠に来年度から指定される可能性があるので竜国に移送するとの申し送りだ。
特別モンスター枠に指定されたモンスターは保護目的であっても竜国以外で基本的に飼育することが出来なくなるのだ。
「来年度までまだ時間が……」
「……なぜそんなに抵抗する?保護には金も手間も掛かる。ボランティアとして功績を上げたいのならばもう十分では?こちらでも御社の名前を大々的に出す。宣伝にもなろう」
バルカンはゆっくりと足を組むとオーナーを一瞥する。
白い肌にサラサラとした艶やかな髪……彼の見た目を好ましく感じる女性は多いだろう。
そんなオーナーはバルカンのセリフに言葉を詰まらせる。
「他になにかあるのならその憂いも取り除こう、なにがある?言ってみろ」
バルカンはオーナーの隣に座る中年の男性にも目をやる。彼はこの施設の母体の会長――オーナーの父親だ。
「……かしこまりました」
オーナーは会長の言葉にギョッとしたような視線を一瞬送る……が、また俯いてただ静かに時が過ぎるのを待っているようだった。
「私どもの会社名を竜王様から出していただけるなんて……まことにありがたいことでございます」会長がそう言ってニカっと人好きのする笑顔を作ったが彼の瞳の奥は、全く笑ってはいなかった。
バルカンはその瞳を見つめ、ニヤリと笑う。
フロティナは朝出勤すると、いつもと違う受付の女性に挨拶をされ戸惑っているところに、更にマリエルから口撃を受けた。
「あら~おはよう、マリエルさん」
フロティナがにこやかに挨拶をすると、マリエルは額に手を当てて目を硬くつぶる。
「かあ~このご機嫌な感じがいいのでしょうねえ」いつもと様子の変わらないフロティナ
を見て――――マリエルは玉の輿に必要な人間の余裕というものを学んでいた。
「どうしたの?」
フロティナはコーヒーをポットから注ぎながら不思議そうにマリエルを見る。
そんな彼女とは昼休みに話す約束をして、フロティナは飼育棟へと向かった。
「……来たんだ。もう来ないかと思ってた」
扉を開けると、静かにそんな声がした。
フェアリーだ。
「約束したじゃない」フロティナは少し小走りで彼女の檻の前に急ぐ。
「竜王のお嫁さんになるんだって?」
「ふふふ、そう」腕を組みながら、少し冷ややかな視線をこちらに送るフェアリーとは対照的にフロティナは浮かれた様子でそう言った。
「…………竜の国に行かなくていいの?彼らは結婚したら一緒に暮らすのが鉄則よ」
「ふふ、まだ結婚してないの。だってあなたに恩返しをしなきゃね。そのつもりで……私に話したのでしょう?あの実のことを」
「…………ふふ、やはりあなたは優しいわ。逃げたっていいのに。馬鹿ね」フェアリーはそうやって笑うと柵をギュッと握りしめた。
「馬鹿?よく言われるけど私意外と賢いのですよ」フロティナはそう言って彼女の檻に近づく。
「ねえ?私竜王と結婚するのよ」
「知ってるってば……」フェアリーはフロティナの言葉に少しうんざりしたような顔をしている。
「なんでも憂いを取り除いてくれるって……ねえ、私あなたが悩んだままだと……憂いてしまうわ」フロティナはじっとフェアリーを見た。
「?…………ははーん、なるほど」
「バルカン様♡」
フロティナは職場から出ると「奇遇だな」とこちらに声を掛けてきたバルカンの腕にピッタリとくっつき名前を呼んだ。
「ふ、ふ、ふ、ふしだらな女だ!こんな所でくっつくな!」バルカンは顔を真っ赤にして怒っている。
「あ、すみません」フロティナはどうやらこれは逆効果になりそうだ、と慌てて身を離した。
「……ど、どうした。別にそんなに離れんでもいいぞ」
「……別にくっつきたい訳ではなかったので……あの、頼み事がございまして、バルカン様に色仕掛けをしたかっただけなんです。でもどうやら逆効果みたいなんで止めました」
フロティナはジリジリと距離を詰めてくるバルカンから一定の距離を保つために、後ずさりながら彼をウルウルと見つめた。
「言ってみろ。どうした?手を繋ぎたいのか?」
「いいえ、手は大丈夫です」フロティナはニッコリ笑いながら胸ポケットから資料を取り出す。
オーナーには内密に持ってきたので、厳密に言えばフロティナは第三者に情報を漏洩させていることになるが……
(オーナーにバレるわけにはいかないわ)「このモンスターがフロティナの担当モンスターなんです……彼らを嫁ぐ際に帯同させることは可能ですか?この二人以外はもうかなり回復していて野生に戻せそうなのですが……」
「……ひとつ目獣と、フェアリーもいるではないか。フェアリーはまだしも、ひとつ目獣は人間にとっては危ないモンスターだろ」
バルカンはざっと資料に目を通した後――資料から顔を上げそう言った。
「いいえ、彼はとてもお利口さんで……フロティナの大切な友人です。いつも顔を舐めてくれます」
「顔を?……なるほどな……そうか、そうだなお前なら」
バルカンはフロティナの言葉になんだか納得した様子を見せる。
「瀕死の状態で施設に来たので……看病したフロティナを慕ってくれています。適正な距離を保てば問題ありません。彼らは回復後自然に戻してあげたいのです…」
「ふむ……」
「もしそれが不可能なら大型獣とフェアリーのケガが治るまでは結婚を待ってもらえます?」フロティナはケロリとそう言った。
「そんな、急に困ります」
「我が国で保護対象になる予定のモンスターだ。ここで飼育しているといずれ違法になるぞ?他はもう自然に戻せるほど回復しているではないか」
翌日バルカンは通された客室でオーナーの前で腕を組むと、威圧的にそう言った。
オーナーは竜王の急な申し出に戸惑っている。
要は、一つ目の大型獣とフェアリーが特別モンスター枠に来年度から指定される可能性があるので竜国に移送するとの申し送りだ。
特別モンスター枠に指定されたモンスターは保護目的であっても竜国以外で基本的に飼育することが出来なくなるのだ。
「来年度までまだ時間が……」
「……なぜそんなに抵抗する?保護には金も手間も掛かる。ボランティアとして功績を上げたいのならばもう十分では?こちらでも御社の名前を大々的に出す。宣伝にもなろう」
バルカンはゆっくりと足を組むとオーナーを一瞥する。
白い肌にサラサラとした艶やかな髪……彼の見た目を好ましく感じる女性は多いだろう。
そんなオーナーはバルカンのセリフに言葉を詰まらせる。
「他になにかあるのならその憂いも取り除こう、なにがある?言ってみろ」
バルカンはオーナーの隣に座る中年の男性にも目をやる。彼はこの施設の母体の会長――オーナーの父親だ。
「……かしこまりました」
オーナーは会長の言葉にギョッとしたような視線を一瞬送る……が、また俯いてただ静かに時が過ぎるのを待っているようだった。
「私どもの会社名を竜王様から出していただけるなんて……まことにありがたいことでございます」会長がそう言ってニカっと人好きのする笑顔を作ったが彼の瞳の奥は、全く笑ってはいなかった。
バルカンはその瞳を見つめ、ニヤリと笑う。
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