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「殿下、大丈夫ですか?」
顔合わせから帰る道すがら、仲介人が言いにくそうに声を掛けて来た。
「……なにがだ」
「ご婚約者様、あまり素行が良くないようでございますが……」
仲介人は申し訳なさそうにそう言っている。
「…………」
「あの、淫乱フロティナと呼ばれているそうで」
仲介人は額の汗を拭うような動作を繰り返した。
バルカンは二ヤリと笑いながら「そうか」とだけ答える。
だからあんな事を平気でしたのだ、とバルカンは思った。
そしてあの仲介人の男――――あれは豪商の会長だ。
(思い通りにはさせんぞ……まさかあの男、俺の正体に気付いていたのか?)
バルカンは思った。そうして刺客にフロティナを送ったのでは?と――あの男は竜族の掟を知っているのかもしれない。
もしそうならば、まんまとそれに引っかかった。
痣があることは今のところ誰にも気づかれてはいないが――――
「殿下、この婚約なかったことにしてもよろしいのではありませんか?」
痣の事を知らない仲介人は呑気にそんな事をいっている。
(…………それが出来ればこんなに悩まんのだ!)
バルカンは大きな声で叫び出したい気分になったがそれを飲み込み――
「ふん、今のところは問題ない」と言った。
問題しかない。
もしあの豪商の男の策略ならば、あの女と子どもを作るのも危険だ。
「殿下、くれぐれも決定前に親密になりすぎませんようお気を付けを。痣が浮かんでしまいましたら、例え王女の許可で消失させることが出来ましても以降その女性以外と親密になることは出来なくなります」
仲介人の言葉にバルカンは頭を抱えた。
ある日、訓練の最中に受付に来客だと呼び出されて行くと、そこにはフロティナが立っていた。
彼女の立ち姿にバルカンは心臓の鼓動が早まるのを感じ(あの女……俺を陥れるために媚薬を放出しているのではないか?)と忌々しい気分になる。
なぜなら竜族が番以外にときめくなんてあり得ないからだ。
バルカンが顔を顰めて立っていると、こちらに気付いたフロティナが「という訳で婚約解消をしていただきたいのです」と言い出した。
何故だかその言葉に、息が詰まるような気がして「……無理だと言っているではありませんか」とバルカンは静かに言った。
自分だって出来る事ならそうしたい。
しかし、自分は次期王だ。
子を成さなければならないのだ。
「なぜです?私もあなたとの婚約は望んでいないのでございます!」
フロティナは更にバルカンに食い下がる。目が必死だ。
(なんだ……もしかしてこの女…………本当にただの淫乱で俺の下半身に触れたというのか?なんの企みもなく?ただの性欲だったというのか!?)
「……くっ……だから前も説明したように……」
バルカンはフロティナの必死な様子に思わずたじろいだ。
「そんなもの二人だけの秘密にいたしましょう?誰にも言わなければよいのです……!」
フロティナはじりじりとバルカンの距離を詰めてくる。
いい香りがバルカンの鼻腔をくすぐる……
(クソ!なんだこれは!淫乱か?淫乱効果によるものなのか?彼女のフェロモンが俺を惑わせているんだ!クソ!淫乱退散淫乱退散!)
「あなたも嫌なように私も嫌なのでございます……こんな見た目だけがいい、いじわるな男性と結婚するために今まで生きてきたわけじゃないのです……!お父様に申し訳ない!」
バルカンはとんでもない言いぐさに、もう黙っていられなくなる。
そもそもお前が見ず知らずの男の下半身を気軽に触るからこうなったんだろう、と!
「お、おい!貴様……無礼だぞ!いいか?お前などはそもそも俺とは普通に話すこともできんのだぞ!それにいじわるだと!?」
「じゃあ嫌な性格をしてらっしゃる男性で……ああ~自己肯定感と自意識が強いのも本当に無理でございます……バルカン様ただの騎士見習いじゃありませんか……それなのにそんな偉そうなことを……愚か……愚かで嫌な性格をした男性……」
フロティナは顔を手で覆うとしくしく泣きだした。
それを受付でやっているものだから――――次々と入ってくる来客や隊員たちの視線がバルカンに突き刺さる。
「もう最低でございますぅ……しかも婚約早々愛さない宣言……!本当ゴミのような男性!ゴミカス!なんでこんな男性と結婚しなきゃならないのでしょうか?お願いしますお願いします……どうか婚約を解消か破棄してくださいませえ……」
バルカンが動揺している間に、フロティナはペラペラと更なる悪口を重ね、ついに土下座を始めたではないか!
「お、おい!やめろ!」
「やめません……バルカン様が私と婚約を止めるというまでこうしていますう」
バルカンはもう意味がわからなかった。
(なんだこの女は!)
それと同時に……なんだか少し心が躍るような気分にバルカンは混乱した。
コロコロ変わる彼女の表情に、バルカンは好感を寄せてしまっている。
彼女とのやり取りに「楽しい」と感じてしまっていた。
(馬鹿な、そんなはずはない!コイツは ヴェルティナじゃないんだ)
バルカンは自分を誤魔化すように声を荒げると、フロティナを引きずるように部屋に連れていく。
顔合わせから帰る道すがら、仲介人が言いにくそうに声を掛けて来た。
「……なにがだ」
「ご婚約者様、あまり素行が良くないようでございますが……」
仲介人は申し訳なさそうにそう言っている。
「…………」
「あの、淫乱フロティナと呼ばれているそうで」
仲介人は額の汗を拭うような動作を繰り返した。
バルカンは二ヤリと笑いながら「そうか」とだけ答える。
だからあんな事を平気でしたのだ、とバルカンは思った。
そしてあの仲介人の男――――あれは豪商の会長だ。
(思い通りにはさせんぞ……まさかあの男、俺の正体に気付いていたのか?)
バルカンは思った。そうして刺客にフロティナを送ったのでは?と――あの男は竜族の掟を知っているのかもしれない。
もしそうならば、まんまとそれに引っかかった。
痣があることは今のところ誰にも気づかれてはいないが――――
「殿下、この婚約なかったことにしてもよろしいのではありませんか?」
痣の事を知らない仲介人は呑気にそんな事をいっている。
(…………それが出来ればこんなに悩まんのだ!)
バルカンは大きな声で叫び出したい気分になったがそれを飲み込み――
「ふん、今のところは問題ない」と言った。
問題しかない。
もしあの豪商の男の策略ならば、あの女と子どもを作るのも危険だ。
「殿下、くれぐれも決定前に親密になりすぎませんようお気を付けを。痣が浮かんでしまいましたら、例え王女の許可で消失させることが出来ましても以降その女性以外と親密になることは出来なくなります」
仲介人の言葉にバルカンは頭を抱えた。
ある日、訓練の最中に受付に来客だと呼び出されて行くと、そこにはフロティナが立っていた。
彼女の立ち姿にバルカンは心臓の鼓動が早まるのを感じ(あの女……俺を陥れるために媚薬を放出しているのではないか?)と忌々しい気分になる。
なぜなら竜族が番以外にときめくなんてあり得ないからだ。
バルカンが顔を顰めて立っていると、こちらに気付いたフロティナが「という訳で婚約解消をしていただきたいのです」と言い出した。
何故だかその言葉に、息が詰まるような気がして「……無理だと言っているではありませんか」とバルカンは静かに言った。
自分だって出来る事ならそうしたい。
しかし、自分は次期王だ。
子を成さなければならないのだ。
「なぜです?私もあなたとの婚約は望んでいないのでございます!」
フロティナは更にバルカンに食い下がる。目が必死だ。
(なんだ……もしかしてこの女…………本当にただの淫乱で俺の下半身に触れたというのか?なんの企みもなく?ただの性欲だったというのか!?)
「……くっ……だから前も説明したように……」
バルカンはフロティナの必死な様子に思わずたじろいだ。
「そんなもの二人だけの秘密にいたしましょう?誰にも言わなければよいのです……!」
フロティナはじりじりとバルカンの距離を詰めてくる。
いい香りがバルカンの鼻腔をくすぐる……
(クソ!なんだこれは!淫乱か?淫乱効果によるものなのか?彼女のフェロモンが俺を惑わせているんだ!クソ!淫乱退散淫乱退散!)
「あなたも嫌なように私も嫌なのでございます……こんな見た目だけがいい、いじわるな男性と結婚するために今まで生きてきたわけじゃないのです……!お父様に申し訳ない!」
バルカンはとんでもない言いぐさに、もう黙っていられなくなる。
そもそもお前が見ず知らずの男の下半身を気軽に触るからこうなったんだろう、と!
「お、おい!貴様……無礼だぞ!いいか?お前などはそもそも俺とは普通に話すこともできんのだぞ!それにいじわるだと!?」
「じゃあ嫌な性格をしてらっしゃる男性で……ああ~自己肯定感と自意識が強いのも本当に無理でございます……バルカン様ただの騎士見習いじゃありませんか……それなのにそんな偉そうなことを……愚か……愚かで嫌な性格をした男性……」
フロティナは顔を手で覆うとしくしく泣きだした。
それを受付でやっているものだから――――次々と入ってくる来客や隊員たちの視線がバルカンに突き刺さる。
「もう最低でございますぅ……しかも婚約早々愛さない宣言……!本当ゴミのような男性!ゴミカス!なんでこんな男性と結婚しなきゃならないのでしょうか?お願いしますお願いします……どうか婚約を解消か破棄してくださいませえ……」
バルカンが動揺している間に、フロティナはペラペラと更なる悪口を重ね、ついに土下座を始めたではないか!
「お、おい!やめろ!」
「やめません……バルカン様が私と婚約を止めるというまでこうしていますう」
バルカンはもう意味がわからなかった。
(なんだこの女は!)
それと同時に……なんだか少し心が躍るような気分にバルカンは混乱した。
コロコロ変わる彼女の表情に、バルカンは好感を寄せてしまっている。
彼女とのやり取りに「楽しい」と感じてしまっていた。
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