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「バルカン様、掟を一番初めに決めた方は一体誰なのでしょうか」
「……何?そんなものは……」
「物事には大体解決方法があるものです。それを知るためには……まず初心に戻らなければ、もしかしたらその方が解決法を何かにしたためてらっしゃるかも」
そう言ってニッコリ笑うフロティナを見て、顔が熱くなった気がしたバルカンはそっぽを向いた。
(確かに……おばあ様に会えば痣は消える)
しかしフロティナ以外と交わる術もなくなってしまったバルカンには簡単に決められることではない。
痣を消すことは、自身の血を残せないということだ。
バルカンは葛藤した。
フロティナの人生を潰し、自分の責務を全うしヴェルティナを手に入れるか。
それとも全てを放棄してフロティナを解放し、ヴェルティナとプラトニックな人生を過ごすのか――――
フロティナはそんなバルカンの悩みは当然の如く知らぬまま、機嫌が良さそうにベッドに地図を広げている。
「バルカン様はどこの出身でらっしゃいますか?私明日から長期休みなので……行ってみようかしら」
「……いや、その地図には載っていない」
バルカンはそう言った。
それと同時に――もしかすると彼女はただ純粋に自分を助けたいのかもしれない、と思った。
彼女は確実にこの問題を解決しようとしてくれている気がしたのだ。
「……解決できそうな者に会えばいいか」バルカンは決めた。
なんなら王位継承権は放棄すればいい、と。
自分は退き第二継承権を持つ、いとこに譲ればいいのだ。
自分はひっそりと余生をヴェルティナと過ごせばよい――――そう思った時、あの庭での快感がバルカンの背筋をゾクゾクさせた。
(落ち着け、欲など性行為以外でも解決できるではないか!)バルカンはフロティナも被害者なのだ、と思う。
なんの策略も関係もないのならば……この女性はただの被害者だ。
(申し訳ない……俺は俺のことばかりだ…………)
バルカンは心を決めた。
痣を消そう――――と。
「はい、出来ます?ご存じですか?」
「……ああ、確かに会えばどうにかなるかもしれん」バルカンは小さな声でそう言うと、思い出したように着衣を整える。
「会いに行ってくるよ」
(しかし次々と一体何だというのだ!)
今度はフロティナと離れられなくなってしまったからだ。
「バルカン様ってあまり職場に必要とされてないんですね」
ガタガタと乗り合い馬車に揺られながらフロティナにそう言われて……バルカンは顔が赤くなっていくのを感じていた。
フロティナは自身の口元に人差し指を当てニッコリ笑う姿を見て股間がみるみる硬くなっていく…………
(クソ!この女といるとおかしくなっていく……)
バルカンは唸り声を上げながらさりげなく猫背になった。
バルカンは早くフロティナと離れたくて堪らなかった。
自分はヴェルティナ以外に欲情するなどありえない。関係の持てそうな女性が傍に居れば欲情するなんて……まるで野蛮人のようではないか!
「ぐぐぐぐぐぐぐぐ」バルカンは理性と性欲の狭間で人知れず戦っていた――――
「でもそのおかげでどうにかなりそうですね♡ありがとうございます」
(か……かわいいはかわいい!そうだ、視界から得る情報なのだからな!当然だ!砂糖を舐めて「甘い」と感じるようなものだこれは!)
フロティナはこの後もバルカンを翻弄した。
「なんだか悪いことをしているみたいで楽しいですね!」
「……ッチ……クソなんで俺がこんなことを……」
バルカンは地面にスコップを突き立てながら、チラリとフロティナを見た。
薄っすらと月夜が照らす彼女はまるで女神の(ように見えるかもしれないが!それはあくまでも視覚的情報それのみなんだぞ!そりゃあ女神っぽい女を見たら女神だなぁと思うもんなんだ!)
バルカンは黙々と地面だけを見つめ、掘り進めていく。
「バルカン様、フロティナは肩まで浸かりたいです」
「ぐぐぐぐぐぐぐぐ……」
そんなバルカンの気も知らず……フロティナは呑気に笑っている。
(はい、かわいいかわいい!クソ!それが一体何だというのか!)
フロティナはとても魅力的な女性だった。
でもそれは痣のせいだ、とバルカンは自分に言い聞かせる。
ニッコリ笑う顔が可愛らしいのも、少し澄ました様子でおかしなことを言う所がキュートだと思っても……(痣のせいだ!痣の!)
バルカンは自分の中に沸き上がる気持ちに抵抗しようとすればするほど彼女に惹かれていった。
(待て……俺の番はヴェルティナだけだ)
バルカンは混乱してしまう。
竜は一途だ――――一度決めた番は変わらない。
(それなのになぜ……この女に惹かれるんだ俺は)
バルカンは絶望に旅の途中何度も何度も頭を抱えた。きっと痣が消えればこんな感情は消える、バルカンはスヤスヤと無防備に隣で寝息を立てるフロティナを見て――――なんだか胸が苦しくなった。
彼女がゴロリと寝返りを打ったその時……はだけた背中が少し見えてバルカンは慌てて目を逸らそうと(ん…………?)
……チラリと見えた肩甲骨の上あたりに光を失った鱗が張り付いているように見えた。
バルカンはそれが気のせいだとは思えず、手を伸ばしたが――フロティナがまた再び寝返りを打ったのでそれは隠れてしまった。
バルカンは暫くその場で動けなかった。
(……まさかお前は……?)バルカンは彼女の妙に強い力を思い出す。人間では通常あのパワーはあり得ない。
しかし、竜の鱗を持っているのなら――――――
バルカンは寝息に合わせて震えるフロティナのまつ毛を眺める。
(……お前は…………)
バルカンは頭を抱えてしまった。
果たしてこれは自分の鱗なのか?と――――もしかすると他の竜に唾をつけられている可能性はある。しかし、それを確認するにはバルカンがフロティナに触れる必要があるのだが…………
(なんで光を失っている?)
第一にして、なぜこの鱗は死んでいるのか。
竜が鱗を分けるのは自分の物だと主張する時だ。
光を失っている鱗に、目印としてのその意味はあまりない。
(お前はなんなんだフロティナ――――――)
「……何?そんなものは……」
「物事には大体解決方法があるものです。それを知るためには……まず初心に戻らなければ、もしかしたらその方が解決法を何かにしたためてらっしゃるかも」
そう言ってニッコリ笑うフロティナを見て、顔が熱くなった気がしたバルカンはそっぽを向いた。
(確かに……おばあ様に会えば痣は消える)
しかしフロティナ以外と交わる術もなくなってしまったバルカンには簡単に決められることではない。
痣を消すことは、自身の血を残せないということだ。
バルカンは葛藤した。
フロティナの人生を潰し、自分の責務を全うしヴェルティナを手に入れるか。
それとも全てを放棄してフロティナを解放し、ヴェルティナとプラトニックな人生を過ごすのか――――
フロティナはそんなバルカンの悩みは当然の如く知らぬまま、機嫌が良さそうにベッドに地図を広げている。
「バルカン様はどこの出身でらっしゃいますか?私明日から長期休みなので……行ってみようかしら」
「……いや、その地図には載っていない」
バルカンはそう言った。
それと同時に――もしかすると彼女はただ純粋に自分を助けたいのかもしれない、と思った。
彼女は確実にこの問題を解決しようとしてくれている気がしたのだ。
「……解決できそうな者に会えばいいか」バルカンは決めた。
なんなら王位継承権は放棄すればいい、と。
自分は退き第二継承権を持つ、いとこに譲ればいいのだ。
自分はひっそりと余生をヴェルティナと過ごせばよい――――そう思った時、あの庭での快感がバルカンの背筋をゾクゾクさせた。
(落ち着け、欲など性行為以外でも解決できるではないか!)バルカンはフロティナも被害者なのだ、と思う。
なんの策略も関係もないのならば……この女性はただの被害者だ。
(申し訳ない……俺は俺のことばかりだ…………)
バルカンは心を決めた。
痣を消そう――――と。
「はい、出来ます?ご存じですか?」
「……ああ、確かに会えばどうにかなるかもしれん」バルカンは小さな声でそう言うと、思い出したように着衣を整える。
「会いに行ってくるよ」
(しかし次々と一体何だというのだ!)
今度はフロティナと離れられなくなってしまったからだ。
「バルカン様ってあまり職場に必要とされてないんですね」
ガタガタと乗り合い馬車に揺られながらフロティナにそう言われて……バルカンは顔が赤くなっていくのを感じていた。
フロティナは自身の口元に人差し指を当てニッコリ笑う姿を見て股間がみるみる硬くなっていく…………
(クソ!この女といるとおかしくなっていく……)
バルカンは唸り声を上げながらさりげなく猫背になった。
バルカンは早くフロティナと離れたくて堪らなかった。
自分はヴェルティナ以外に欲情するなどありえない。関係の持てそうな女性が傍に居れば欲情するなんて……まるで野蛮人のようではないか!
「ぐぐぐぐぐぐぐぐ」バルカンは理性と性欲の狭間で人知れず戦っていた――――
「でもそのおかげでどうにかなりそうですね♡ありがとうございます」
(か……かわいいはかわいい!そうだ、視界から得る情報なのだからな!当然だ!砂糖を舐めて「甘い」と感じるようなものだこれは!)
フロティナはこの後もバルカンを翻弄した。
「なんだか悪いことをしているみたいで楽しいですね!」
「……ッチ……クソなんで俺がこんなことを……」
バルカンは地面にスコップを突き立てながら、チラリとフロティナを見た。
薄っすらと月夜が照らす彼女はまるで女神の(ように見えるかもしれないが!それはあくまでも視覚的情報それのみなんだぞ!そりゃあ女神っぽい女を見たら女神だなぁと思うもんなんだ!)
バルカンは黙々と地面だけを見つめ、掘り進めていく。
「バルカン様、フロティナは肩まで浸かりたいです」
「ぐぐぐぐぐぐぐぐ……」
そんなバルカンの気も知らず……フロティナは呑気に笑っている。
(はい、かわいいかわいい!クソ!それが一体何だというのか!)
フロティナはとても魅力的な女性だった。
でもそれは痣のせいだ、とバルカンは自分に言い聞かせる。
ニッコリ笑う顔が可愛らしいのも、少し澄ました様子でおかしなことを言う所がキュートだと思っても……(痣のせいだ!痣の!)
バルカンは自分の中に沸き上がる気持ちに抵抗しようとすればするほど彼女に惹かれていった。
(待て……俺の番はヴェルティナだけだ)
バルカンは混乱してしまう。
竜は一途だ――――一度決めた番は変わらない。
(それなのになぜ……この女に惹かれるんだ俺は)
バルカンは絶望に旅の途中何度も何度も頭を抱えた。きっと痣が消えればこんな感情は消える、バルカンはスヤスヤと無防備に隣で寝息を立てるフロティナを見て――――なんだか胸が苦しくなった。
彼女がゴロリと寝返りを打ったその時……はだけた背中が少し見えてバルカンは慌てて目を逸らそうと(ん…………?)
……チラリと見えた肩甲骨の上あたりに光を失った鱗が張り付いているように見えた。
バルカンはそれが気のせいだとは思えず、手を伸ばしたが――フロティナがまた再び寝返りを打ったのでそれは隠れてしまった。
バルカンは暫くその場で動けなかった。
(……まさかお前は……?)バルカンは彼女の妙に強い力を思い出す。人間では通常あのパワーはあり得ない。
しかし、竜の鱗を持っているのなら――――――
バルカンは寝息に合わせて震えるフロティナのまつ毛を眺める。
(……お前は…………)
バルカンは頭を抱えてしまった。
果たしてこれは自分の鱗なのか?と――――もしかすると他の竜に唾をつけられている可能性はある。しかし、それを確認するにはバルカンがフロティナに触れる必要があるのだが…………
(なんで光を失っている?)
第一にして、なぜこの鱗は死んでいるのか。
竜が鱗を分けるのは自分の物だと主張する時だ。
光を失っている鱗に、目印としてのその意味はあまりない。
(お前はなんなんだフロティナ――――――)
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