備忘世界の運搬屋

星兎

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見捨てられた備忘録

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 最初の記憶は、頬を打つ雨雫の冷たさ。

 間断なく降り頻る雨に、世界の残酷さを知る。背中に触れる硬さで、世界の冷徹さを知る。

 抱き抱えられ、握られる細い小さな感触で、世界の優しさを知る。

 大きな音がして、煙の匂いがして、世界の煩雑さを知る。

 柔らかい何かに包まれ、生きた肉体の匂いを嗅ぐ。

 世界が温かさの一様を持っていることを知る。

 私は一度、この世に目覚め、そしてもう一度、その時、生まれたのだった。

 この荒れ果てた世界の内側で。もがき苦しみ、生きる理由を探し、そんな理由など存在しないのだという、世界の言葉にされない理の壁に阻まれながらも、必死で。

 世界はどこまでも続く空のように残酷で、同時に、暖かな包み込むような光に満ちてもいる。

 私は世界を旅する中で、その両方を、あるいはその両方の間にある無数の種類の属性をーー知ることになるのだった。

 私が生きる理由は、別に世界が用意してくれている訳ではない。

 それは自分の中で生み出す、自分の中でしか起こり得ない、唯一無二の現象だった。

 私がその事実に気付くのは、もう少し後の話になる。

 どこまでも冷徹で、温もりを持った世界の内側で。

 私達は、生きていかなければならない。

 荒れ果てた世界の内側にある、固有のどこまでも美しく、暖かな景色を、見つける為に。



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