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ダストシティ
□
しおりを挟むエレベーターを降り、ロビーに出る。自分がどうやって歩き、ここまでやってきたのか、まるで分からない。感覚が死んでいるみたいだった。
先程の出来事が、まだ頭の中でぐるぐると回っている。
巨大な男、ゴードン、その掌に握り潰され、透明な液体を撒き散らせたサラ。
虚な心のまま、外に出て、長い階段の先にある都市を見下ろす。灰色の石造りの街は、まだそこに揺るぎなく存在していた。
と、階段の方に気配がし、見ると、宿屋の婆……ラーフの姿があった。どうやら自分の足でここまで登ってきたらしい。
息を切らして、流石に杖を使って登ってきたラーフは、私の側まで来ると、立ち止まって、息を整えつつ言った。
「まあ、中で何があったのかは想像がつくがね。一つ聞いてもいいかね。サラはどうなった?」
私は彼女から目を背けながら、虚な心のまま答えた。
「……死にました」
私がそう言うと、ラーフは一度大きく目を開いただけで、やがて頷き、歩き始める。
「そうか。……まあ、そうなるだろうとは思っていたがね。ヴェロニカさんよ。あんたも気をつけなさいよ。この世界は、人間にも、機械にも優しく出来てはおらんらしいからな。
……じゃあな、達者で」
私はラーフの方を見ないままで、答えた。
「達者で」
ーーーー
結局使わなかったエネルギー缶を、再び荷台に仕舞い込みながら、私は部屋の隅に、サラの気配を感じていた。
『もっと、お話、聞かせて?』
彼女はもうそこにはいない。いない事は頭では分かってはいるのに、頭ではない、胸の奥の方、もっともっと深くの場所で、私は叫びたがっていた。
分かっている。分かっているから。今は黙っていてほしいんだ。
私は乱れた心を荷物をしまう事で紛らわせるようにしながら、時間を潰した。
鉛のように重く感じられる体を懸命に動かし、独り、人気のない宿の中を機体と共に進んでいく。
用が無くなった以上、ここにいる意味はなかった。
私は、出る前に、カウンターの上にある小さなお菓子の入った器を目にし、少し考えてから、その中の一つを手にし、懐に入れた。
勘定をカウンターの陰に置き、宿を出て行った。
埃が口の中に入り、唾液と混ぜて吐く。ヘルメットを被り、機体に跨る。
詰所の人間は事務的に、速やかに対応し、私は誰に邪魔されるでもなく、街を出ることが出来た。
埃を含まない冷たい風が、深い藍色に染まった地平線から、打ち付けるように吹いてくる。
液晶タブが細かく震え、小さな音が鳴っているのを知っていながら、私は気付かないふりをして、地面を蹴った。
振り返らなかった。
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