前世を思い出したら超絶ドアマットヒロインになっていたんですが。

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これ以上動いたら叫ばれるだろうか?それとも殴りかかってくる?そんなことを考えて動けないでいると、少年が急に顔を歪めて、鼻と口を押さえていた私の腕を引っ張り、先程まで少年が寝ていた場所へと無理やり寝かされる。

「えっ、ちょっと」
「待ってて…絶対に動かないで」

こちらの返事も待たずに少年は小屋を飛び出していく。

「え、ええ…?」

慌てて追いかけ、外に出ると既に少年の姿は見えなくなっていた。

え、足…早過ぎじゃない?

街に繋がる一本道の開けた通路沿いに出てみてもその背中すら見当たらない。

子供の頃から身体能力が半端ないってこと…?

いや、小説の中で幼少期は誰よりも弱くて泣き虫でヘタレで意気地無しだったってレイヴン自身が言っていた
そういえば、ヒロインに「小さい頃はまだ母が生きてたんだけど病気だったから…僕が働くしかなかったんだよね」とも言っていた。だけどそれは手紙の配達を手伝う子供を見て「懐かしいなぁ」っていう前置きがあったからで決して危ないことではない。

ストーリーを思い出しながら、湖で顔を洗う。

裏稼業に染まるのは母親が亡くなってからだし、それこそこの世界に来て知ったけど、お貴族様みたいに家庭教師を付けたり、親がその道の専門分野っていう特殊な環境でもないと無理だ。
普通の平民の子供は12歳にならないと魔法の勉強や身体を鍛える訓練を受けられる施設は利用できないはずなのに……まぁ私は勝手に使ってるけど…

服を脱ぎ、小屋に置いていた暖かい外套を羽織って血液で汚れた服を湖に沈める。強く揉み込むと、湖が赤く染って…それをぼんやりと眺める。

……でも、隣国出身だよね?なんでこっちにいるんだろう?それに、お母さんは?
ヒロインとレイヴンは同じ学年だったし…裏設定で年齢詐称してたとか?いや、それはない、現在12歳だったら私と変わらない身長なはずはないだろうし……え?どういうこと?

混乱する頭を横に振り、乾かした服を被る。ちょうど木漏れ日が降り注ぐところに生えるキノコを見つけて、お昼ご飯にどうか、と物色していると外套を引っ張られて尻もちをつく。
そのまま見上げれば、息を切らしてこちらを睨む少年がいた。

あー…帰ってきたんだ…めっちゃ怒ってる…そういえば動かないでって言ってたなぁ

何も言えないで寝転がっている私の腕を少年は無言のまま掴み、小屋の中まで引っ張っていく。
ちょっと乱暴で無愛想だが、少年が帰ってきてくれたのは素直に嬉しい。それに、体調とかお母さんのことも気になる。
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