前世を思い出したら超絶ドアマットヒロインになっていたんですが。

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『一緒に幸せになろうね』
「あ…」

まだ声変わりの来ていない弱々しい声は子供そのもので、希うように震えたその声が少女の声と重なって聞こえた。

「君が言ったんだよ」

少し背の伸びたレイヴンが苦しそうな顔で見下ろし、ユフィの涙を優しく拭う。

「君が言ったんだ」

迫る青の瞳に後退した背中はレイヴンの腕と大木によって逃げることを阻まれる。
紅葉色で埋め尽くされた空の下。それを覆い隠すその青さはやっぱり綺麗だ、と思った。

レイヴンの伸びた髪が頬を擽り、額と鼻先から体温を感じたことで、青い瞳に魅了されていた意識がはっきりとする。唇が当たりそうになってユフィはすぐに下を向いた。

「あー、また、おでこ…」
「ひ、人がいっぱいいるのに」
「それは大じょう……ふふっ」

相変わらず下を向いているユフィを見て、レイヴンは突然笑い出す。

「離してっ」

解放してくれないことに怒るユフィの額にもう一度口付けを落とすと、その額をゆっくりと親指で拭った。

レイヴンとの急な再会と積極的すぎる触れ合いに、もやもやと膨れ上がった不安が一気に消え去っていく。変わりに訪れたのは羞恥心だった。

「顔赤すぎない?」
「だっ、だれのせいで……少し歩き疲れただけ」
「ふーん?」

言い返そうとレイヴンの胸を押し、もたれかかった大木から頭を離した。すると纏めていた髪が解けて落ち、ユフィは慌てて髪束を押さえる。

「……ない」
「どうしたの?」

自身の頭を何度も撫でてみるも、指先は何処にも引っかからずにするりと落ちる。辺りを見渡しても落葉の赤や橙色で埋め尽くされているばかりだ。

「髪飾りがないの」
「僕の髪留め使う?」
「違うっ!これは贈り物で…」

しゃがんで落葉をひっくり返すけど、どこにも見当たらない。

大事に使わせてもらってパーティが終わったらアレックスに返そう、妹さんが12歳になったら使ってもらうのがいい、きっと高価な物だから。

そう思っていたのに…

落葉を掻き分け、土で汚れる指先にも気づかないほど、ユフィは必死に探した。

「緑色の葉っぱの髪飾りだよね?その飾り、どこに売ってるか僕知ってるよ」
「え?」

髪飾りを探し続けるユフィを、つまらなそうに見ていたレイヴンはユフィの前でしゃがむとその手に触れた。

「後で買いに行こ?だから、今は僕の髪飾り付けて」
「でもっ…」
「僕の髪飾りは…いや?」
「……っ」


レイヴンのこの泣きそうな顔を見ると言葉に詰まる。思えば、この顔に反抗できた覚えが1度もない気がする。

「分かった…でも一度ここのメイドさんに報告して、後で探して、それでもなかったらお願いするね」
「うんっ、決まりっ!ねぇ、僕が付けてあげるから後ろ向いて?」

纏められる髪がきゅっと締め付けられる。痛くは無いけれど、ひんやりと地肌に触れてしっかりと差し込まれている髪飾りの存在を感じた。

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