前世を思い出したら超絶ドアマットヒロインになっていたんですが。

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レイヴン3

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溢れ出す自身の魔力は、真っ暗闇の中に溶けていく。

「……無理か」

陰の中を移動できるなら、と思ってやってみたけど転移魔法は思ったよりも複雑らしく、ただただ無駄に魔力を消費していくだけだ。


「どぉ?」
「うるさい」
「あはは、この魔法陣はただの訓練場所というか、暗闇に慣れるためにしか使ってないからね、正直君にはもう必要ないと思うよー」

いつの間にか実験室に戻っていて、魔法陣の上で目を閉じる僕を叔父が覗き込んでいる。その距離に不快感を覚えて押し退けた。

諦めきれなくて、部屋を出るときに、この魔法陣は集中できるからこれからも続けて欲しいとお願いをする。叔父はにこにこ頷くだけだった。

訓練も実験も、たまに行われる街での犯罪者達への尋問も手を抜くくらいに飽き飽きしてきた頃、コンドラー公爵に呼び出された。

正確には、叔父が呼び出されたのだが
「本人に聞きなよ」と公爵邸の前に着いてから叔父に言われて、逃げられなかった。

公爵邸はあのひ弱だった頃から背が伸びた今でもその大きさに圧倒される。
表情ひとつ変わらない執事やメイドに誰ひとり乱れることないお辞儀で出迎えられて気味が悪い。

父に会うことはなく
「ちょっと魔導具の点検行ってくるね」
「あっ、そうだ!ここの坊ちゃん見かけても近づかないよーにねー」
邸内でも調子の変わらない叔父はそう言って僕を客間に残して執事らと共に奥に消えていった。

黒のカーテンに黒曜石のテーブルや置物。黒を基調とした室内だが、シャンデリアがあり、布地に金の刺繍が施されていたり、新鮮な生花が花瓶に添えられてあることで明るい印象を持たせる。

僕たちの屋敷とは全然違う…所詮、醜聞にならないように隠された私生児にはこれで満足だと思われてるんだろうな…

森の奥のレイヴンが居る屋敷は木造建てで、最近老朽化が激しい。それに叔父の実験室が勝手に作られているのも気に入らない。

輝く床に反射する自分の顔を見ないように踏み付ける。


「きみはだれ?」

背後に人が近寄っていたことに気が付かず、レイヴンの肩がびくりと跳ねる。
おそるおそる背後を振り返ると、僕と同じ青い瞳をした金髪の少年がいた。

少年は片手にぬいぐるみを引き摺って、レイヴンよりも幼く見える。

「ここの坊ちゃんを見かけたら近づかないように」

それはこの子のことだろうか。立ち上がり、ゆっくりと後退するレイヴンは横目で叔父の消えた廊下と出口の扉を確認する。

「むし…するの?」
「……知りたいなら君が先に名乗ってくれない?」
「ぼく?えへへ、ぼくはリヒトだよ」

リヒトと名乗る少年は照れたように自己紹介をするとレイヴンの方へと近づいてくる。裸足の足がヒタヒタと音を立てる。

「こないでっ」
「……うう、ぼくおなまえ、おしえたよ?」
「坊ちゃんっ!だめだよー!!」

対峙する少年を見た叔父が慌てて廊下から駆け寄り、レイヴンの腰を掴み距離をとった。
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