前世を思い出したら超絶ドアマットヒロインになっていたんですが。

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レイヴン父

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惚気話に相槌を打ち、光魔法や魔力について簡単なことを質問していると、喋り疲れたのか眠ってしまった女性をメイドに預け、部屋を出た。

父上は何故、俺に任せようとするのか…

彼女から聞く優しい〝クレインさま〟を想像出来なかった。考えながら廊下を歩いていると肖像画がクレインの目に留まる。

誰も笑わず、ただ並んでいるだけの家族

母と笑い合うことや…自分達の頭を撫でる父など、人生で一度も見たことがない

そんなに家系が、光魔法が大事なのか?
女性の想いも、俺の気持ちも…自分自身の気持ちまでも無視してまで叶えたいものなのか?

初対面の俺でさえ、彼女の好意に気付くほどだと言うのに父上が察せていないわけがない…


「はぁ……」
もう一度話し合いが必要だ、と溜息を吐き出してたどり着いた先の扉を叩いた。

「入っていいかい?」

ゲストルームからの返事はない。

「メア?入るよ?」

開けた扉の先に机に向かうメアを見つけ、後ろから抱きしめる。ほのかに香る花の香りに朝から緊張していたクレインの身体が解ける。

「何してるの?」
「ん……?うん、古代文字をね…」

歯切れの悪い返事をするメア。紙に当てているペンは1文字も進んでいない。

「少し休もう、朝から頑張りすぎだ」

心配になったクレインはメアの手に自身の手を添えてペンを置かせる。
隣に座り、引き寄せて自分の膝の上にメアを乗せる。メアは俯いたままこちらを見ようとしない。

「メア?どこか具合でも悪い?」
「ううん…大丈夫」

頬に手を当てるが熱はないようだ。そのまま顔を上に向かせると、不安そうな顔をしたメアと目が合う。

「どうしたの?教えて?」

そう言ってクレインは、メアの額に額を合わせた。

「クレイン?好きだよ…?」
「うん、俺も…愛してるよ」

いつもはクレインが言ってからじゃないと返って来ない言葉に、理性をなんとか保ちつつ、普段よりも長いキスをする。唇が離れると赤くなったメアがいつものように笑っていた。

「そうだ…メア!今日は来週の為に作っていたドレスが届いたんだよ」
「ほんとに?」
「あぁ、着てみないか?どうせなら化粧もして…あっ、折角なら俺も用意したスーツを着てさ、一緒に並んでみようか!合わないものがあればその後、街に行って髪飾りとか装飾品とか」
「もう…クレイン、張り切りすぎよ…ふふ」
「……楽しみなのは俺だけ?」
「ちょっと緊張するけど、私も楽しみだよ」



「メア…今すぐ神殿に行こう」
「え?」
「今すぐ結婚式挙げよう」
「あっ…崩れちゃうから触らないでっ」

ドレスに着替えたメアを見たクレインは顔を真っ赤にし見惚れていた。

レース生地を重ね、白を基調としたAラインドレスには、胸元と裾に黒と青の花柄刺繍が施されて大人っぽいデザインになっていた。

クレインの衣装は黒を基調とし、シャツの襟やネクタイ、ベストには白と銀で花柄刺繍が細かく施されている。

「似合ってるかな?」
「うん…すごく…見せびらかしたいけど誰にも見せたくないくらい」
「よく分からないけど…褒めてくれてるんだよね?」

お触り禁止を食らったクレインは、デザイナーが連れてきた着付け師に髪を結われれいるメアを黙って見つめていた。

「結婚したいな」
「まだ言ってる…ティタニア様も来てくれるんだよね?」
「つれないなぁ…あぁ、ユリウスが連れてくるだろう、メアの贈呈式も含めてるからね」
「贈呈式…やっぱり緊張するなぁ」
「感謝の言葉をもらうだけだから大丈夫だよ、それに人々の前で褒めてもらわないと…ね」
「そうだねっ!がんばるよっ!」

メアの笑顔に、クレインは胸が詰まった。
メアに無理をさせたくは無いが、人々に功績を知ってもらう為には、こういう場が増えていくだろう。結婚を無理強いさせてないか、とは最悪な結果ばかりが思い浮かんで怖くて聞けなかった。
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