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頭がズキズキと痛む。寝返りをうって瞼を開けても視界は布に覆われていて真っ暗だ。拘束されている様子はなく、身体は自由でふかふかした柔らかなものに包まれている。
そうだ、私、気絶したんだ…
ユフィは寝転んだまま、辺りを手探りで確認すると、どうやらベッドに寝かされているようだ。
「あの…誰かいますか?」
恐る恐る声をかけると、コツリと誰かの近付く足音が聞こえて、ユフィは思わず身構える。
「はい、聖女様。騎士が2名と私、王宮メイドのメイがお傍におります」
「聖女…じゃないんですが、あの、これとってもいいですか?」
「なりません…今お医者様をお呼びしますね」
程なくして医者と名乗る人が現れ、ユフィの頭や顔を触り、動かす。痛みはないか、と言われ、目が覚めるまではズキズキと痛んでいた頭や瞼の痛みも治まり、医師の声のする方へと頷いた。
「では、外しますね」
解かれていく包帯の隙間から眩い光が差し込んでくる。涙で前が霞んで、瞼を擦るとだんだんと目の前の視界がはっきりとしてくる。
目の前には驚愕し青ざめた医者とメイドと騎士がいた。部屋は、先程のままのようだ。
騎士が慌てたように出ていくと、目の前に居た医師が震える手で巻いていた包帯を差し出してくる。
「やはり、巻かれたままの方が…」
「え…いえ、見えないままの方が怖いので…ありがとうございます」
何故こんなに怖がられているのだろうか。
腫れてすごい顔面にでもなってるとか?お岩さん的な…?うわぁ怖そう…
辺りを見回せば、メイドにも目をそらされてしまった。ぺたぺた、と手で自分の顔を触ってみるも異常は感じられないように思う。どうしても気になったユフィはもう一度メイドの後ろにある鏡台へと視線を移す。
「あの…鏡を」
ユフィがメイドに声をかけようとして、その声は扉のノック音に阻まれた。
「失礼するよ」
開かれた扉から現れたのは、金髪碧眼の美少年。騎士やメイドが頭を下げている中、その美貌に一瞬見惚れてしまったユフィは慌てて頭を下げる。
うわあああ…本物の王子だ……ちょっと幼いけどヒロインと結ばれるだけあって迫力が全然違う……あんな美少年と面と向かって喋れる気がしないんだけど…寝たフリでもしてみる?
上半身を起こした状態でどうやって眠るか、を考え始めたユフィの横で医師と王子は小声で何かを話し合っていた。
あーでもないこーでもないと悩んでいたユフィはすっかり自分の世界へと入り込む。
気絶してみる?…そういえば挿絵の気絶したヒロインをお姫様抱っこする王子かっこよかったなぁ…こんな少年期から王子様特有のキラキラオーラが発揮されてたんだね…私はそのおかげで前世からのコミュ障を発揮してしまって緊張で胃が潰れそうだよ……このまま声掛けられずに出ていってくれたり…
「顔を上げてくれる?」
「へ?はいっ(しないよねぇ…)」
挙動不審に顔を上げたユフィの顔をじっと見つめる王子は真剣そのものだ。組んでいた腕を外し、顎に手を当てると「うん」とひとつ何かに納得して頷き、笑顔を作った。
何の頷きなの?怖い…
「顔色が悪そうだ。もう少し休んでから話をしよう」
「えっ…あ、あのもう大丈夫なのでうちに帰していただけませんか?」
王子様スマイル最強だ、と見惚れる前に瞼をぎゅっと閉じたユフィは要件だけを早口で伝える。
「んー、それは難しいお願いだね…」
「そんな…」
「聞きたいことがたくさんあるんだけど…君は聖水と聖女補佐達の治癒で回復したばかりなんだ、無理はさせられないよ」
「本当に元気なんですっ、大丈夫ですから…ほらっ」
ベッドの上で無駄に腕を伸ばしたりマッスルポーズしてみせるユフィに王子は笑顔を向ける。なのにその顔は笑っているようにはとても見えなかった。
「君を治癒した聖女補佐が3人も魔力切れで1ヶ月療養になってるんだ…どんなに危険なことが起きていたか…分かるよね?」
「あ、はい…すみません」
王子の圧を感じて、すぐに折れたユフィは人が居なくなるとベッドに潜った。
「こんなつもりじゃなかったのになぁ」
ユフィは点眼薬が何なのか知っていた。
小説内でユフィが聖女の儀式をする際に、それまで聖女候補一位だった令嬢がユフィを妬み、聖女の儀式で使う「黒竜の血」で王子が褒める「赤眼」を潰そうとするシーンがある。
だけど、ユフィは魔力お化けだから「黒竜の血」を浴びてもケロッとしていた。
だからあの金髪の女性が現れた時、ナイスタイミングだと思ったし、それを浴びて治癒魔法を使わなければ「聖女」になることもないだろうと思った。
あんなに悶えるほど痛いと思わなかったけど…目玉溶けちゃうかと思ったよ…
そこで気付いた。
「もしかして、私の目玉溶けちゃってる?」
ガバリとシーツを捲り、鏡台の前へ向かうと銀髪の美少女が映る。ただ一つ変わっていた部分があった。
「なにこれ…」
ルビーダイヤモンドのようだった赤い瞳が表面に青いフィルターでも貼られたような濃い紫色に変わっている。光が当たると、赤みが透けて神秘的にも見える。
*******
すみません。インフルエンザにかかってしまいました。
少し遅れてしまうかもしれませんm(_ _)m
お気に入りやしおり、励みになります。
お時間いただき、いつもありがとうございます。
そうだ、私、気絶したんだ…
ユフィは寝転んだまま、辺りを手探りで確認すると、どうやらベッドに寝かされているようだ。
「あの…誰かいますか?」
恐る恐る声をかけると、コツリと誰かの近付く足音が聞こえて、ユフィは思わず身構える。
「はい、聖女様。騎士が2名と私、王宮メイドのメイがお傍におります」
「聖女…じゃないんですが、あの、これとってもいいですか?」
「なりません…今お医者様をお呼びしますね」
程なくして医者と名乗る人が現れ、ユフィの頭や顔を触り、動かす。痛みはないか、と言われ、目が覚めるまではズキズキと痛んでいた頭や瞼の痛みも治まり、医師の声のする方へと頷いた。
「では、外しますね」
解かれていく包帯の隙間から眩い光が差し込んでくる。涙で前が霞んで、瞼を擦るとだんだんと目の前の視界がはっきりとしてくる。
目の前には驚愕し青ざめた医者とメイドと騎士がいた。部屋は、先程のままのようだ。
騎士が慌てたように出ていくと、目の前に居た医師が震える手で巻いていた包帯を差し出してくる。
「やはり、巻かれたままの方が…」
「え…いえ、見えないままの方が怖いので…ありがとうございます」
何故こんなに怖がられているのだろうか。
腫れてすごい顔面にでもなってるとか?お岩さん的な…?うわぁ怖そう…
辺りを見回せば、メイドにも目をそらされてしまった。ぺたぺた、と手で自分の顔を触ってみるも異常は感じられないように思う。どうしても気になったユフィはもう一度メイドの後ろにある鏡台へと視線を移す。
「あの…鏡を」
ユフィがメイドに声をかけようとして、その声は扉のノック音に阻まれた。
「失礼するよ」
開かれた扉から現れたのは、金髪碧眼の美少年。騎士やメイドが頭を下げている中、その美貌に一瞬見惚れてしまったユフィは慌てて頭を下げる。
うわあああ…本物の王子だ……ちょっと幼いけどヒロインと結ばれるだけあって迫力が全然違う……あんな美少年と面と向かって喋れる気がしないんだけど…寝たフリでもしてみる?
上半身を起こした状態でどうやって眠るか、を考え始めたユフィの横で医師と王子は小声で何かを話し合っていた。
あーでもないこーでもないと悩んでいたユフィはすっかり自分の世界へと入り込む。
気絶してみる?…そういえば挿絵の気絶したヒロインをお姫様抱っこする王子かっこよかったなぁ…こんな少年期から王子様特有のキラキラオーラが発揮されてたんだね…私はそのおかげで前世からのコミュ障を発揮してしまって緊張で胃が潰れそうだよ……このまま声掛けられずに出ていってくれたり…
「顔を上げてくれる?」
「へ?はいっ(しないよねぇ…)」
挙動不審に顔を上げたユフィの顔をじっと見つめる王子は真剣そのものだ。組んでいた腕を外し、顎に手を当てると「うん」とひとつ何かに納得して頷き、笑顔を作った。
何の頷きなの?怖い…
「顔色が悪そうだ。もう少し休んでから話をしよう」
「えっ…あ、あのもう大丈夫なのでうちに帰していただけませんか?」
王子様スマイル最強だ、と見惚れる前に瞼をぎゅっと閉じたユフィは要件だけを早口で伝える。
「んー、それは難しいお願いだね…」
「そんな…」
「聞きたいことがたくさんあるんだけど…君は聖水と聖女補佐達の治癒で回復したばかりなんだ、無理はさせられないよ」
「本当に元気なんですっ、大丈夫ですから…ほらっ」
ベッドの上で無駄に腕を伸ばしたりマッスルポーズしてみせるユフィに王子は笑顔を向ける。なのにその顔は笑っているようにはとても見えなかった。
「君を治癒した聖女補佐が3人も魔力切れで1ヶ月療養になってるんだ…どんなに危険なことが起きていたか…分かるよね?」
「あ、はい…すみません」
王子の圧を感じて、すぐに折れたユフィは人が居なくなるとベッドに潜った。
「こんなつもりじゃなかったのになぁ」
ユフィは点眼薬が何なのか知っていた。
小説内でユフィが聖女の儀式をする際に、それまで聖女候補一位だった令嬢がユフィを妬み、聖女の儀式で使う「黒竜の血」で王子が褒める「赤眼」を潰そうとするシーンがある。
だけど、ユフィは魔力お化けだから「黒竜の血」を浴びてもケロッとしていた。
だからあの金髪の女性が現れた時、ナイスタイミングだと思ったし、それを浴びて治癒魔法を使わなければ「聖女」になることもないだろうと思った。
あんなに悶えるほど痛いと思わなかったけど…目玉溶けちゃうかと思ったよ…
そこで気付いた。
「もしかして、私の目玉溶けちゃってる?」
ガバリとシーツを捲り、鏡台の前へ向かうと銀髪の美少女が映る。ただ一つ変わっていた部分があった。
「なにこれ…」
ルビーダイヤモンドのようだった赤い瞳が表面に青いフィルターでも貼られたような濃い紫色に変わっている。光が当たると、赤みが透けて神秘的にも見える。
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