前世を思い出したら超絶ドアマットヒロインになっていたんですが。

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レイヴンが持ってきた黒地に白いセーラーカラーの可愛らしいワンピースはサイズもピッタリで着心地が良かった。
シワにならないようにレイヴンのコートをベッドの上に置く。

これはまた監禁?というかヴィは瞬間移動の魔法使えるんだ…教わりたいかも…

ファンタジー恋愛小説と言っても、ヒロインが戦うのは心理戦とかキャットファイト的な意味で、実戦的なシーンはほとんどない。あるのは浄化や治癒だとかで貧民街や森に出向き、そこで出会った野盗や魔獣をヒーロー達が魔法や剣で倒していたのを傍で見ていたくらい。ちなみにレイヴンは音もなく木の上から現れたり、女装時にカラビナナイフを太ももに隠してるのを見せつけられたりはしていたが、戦っているようなシーンはなかった。

というか、ここはどこなの?それに小説でレイヴンに叔父がいるなんて設定はなかった、お母さんもここにいるの?…訳の分からないことばっかりなんですけど…

複雑な内鍵を観察しながら考え込んでいたユフィは、諦めて部屋の中を見渡した。

その部屋は先程の部屋と変わらず、真っ黒なカーテンで閉め切られ、大きなベッドがポツンと置いてある。小さなテーブルなどはあるもののまさに寝るためだけにある部屋のようだった。

瞳の色を確認するために鏡がないかと部屋の奥まで進むも、外への興味が勝って窓際に寄りかかり、カーテンから外を覗く。

2階にある部屋の外には辺り一面に森が広がっていて、人の居る気配はない。
森の奥は暗くなっているのに知っている場所のような気がして、何故か、あの奥に行かないといけないような気持ちになる。

自然と窓に手をかけて開けようとすると、不意にその手を掴まれた。

「逃げるの?」
「えっ」

掴まれた手は痛くはないのに、その問いかけは責めているようで、自分でもどうして外に出ようとしていたのか分からなくて心臓はバクバクと音を立てるように騒がしく動いた。

「ちがくて…」
「何が違うの?」

レイヴンは後頭部に顔を埋め、腰に手を回してからユフィの肩に顎を乗せる。

「えっと…」
「怖い?」

掴まれた手を離し、振り向けば抑えていたカーテンが閉じる。部屋の中には暗闇が再び訪れた。
レイヴンの顔から表情を上手く読み取れなくて、近くに感じる頬に手を這わせればそれに擦り寄り、手に手を重ねてくる。ふと、レイヴンの悲しそうな顔が思い浮かんだ。

「怖くないよ」

ユフィがそう言えば、唇に柔らかな感触が襲った。軽く押した肩はビクともしない。レイヴンの背中を何度も叩くと、唇はやっと離れた。

「ぷはっ」

レイヴンがカーテンを開けると部屋の中に眩しい陽の光が入り込んで真っ赤になったユフィの顔が顕になる。

「僕のこと嫌いになった?怒った?」
「な…らないよ、でも誰にでもこんなことしちゃだめ…」
「フィにしかしない、フィが僕を意識してくれるならなんだってする、怒られてもいい…だけど僕から離れようとするなら」
「離れていっちゃうのはいつもヴィの方でしょ?」

あ、私は何を言ってるんだろう…レイヴンにはレイヴンのやることがあって、それにまだ人との距離感を掴めていないだけなのに
初めて優しくしたのがたまたま私だったから…ひとりぼっちなことを知っていて受け入れた私だったから離れるのが怖くなっただけ。
そうだ…分離不安に陥ってキスをしただけ
これは愛ではない、寂しさを埋め合う関係だ。それを私も分かっていたから深く踏み込まないようにしていたのに…つい欲が出た

「あ…えっと、一緒に長旅する仲間なのに知らない場所で置いていかれたら…怖いなぁって、前も言ったよねほら一緒に旅をするなら隠し事はしないようにしよ…う、って」

焦って早口になるユフィの視線はいつまでも下を向いていた。レイヴンの顔を見ることが出来なかった。

「フィ、僕を見て?」
「……」
「お願い」
「もう…もうこんなことしちゃだめだよ」
「どうして?」

私が欲張ってしまうから。ヴィは将来爵位を貰って高貴な身分になる。それなのに平民のままでいたい私が寂しさ以上の感情を抱けばお互いに辛いだけだ

「どうしても…あはは、私達は大人じゃないから」
「わかった」

言えない。私は思ったよりもレイヴンに依存していたみたい、今それに気づけただけでもよかったのかもしれない

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