前世を思い出したら超絶ドアマットヒロインになっていたんですが。

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レイヴン2

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レイヴンは紋章の入った指輪を取り出す。それを空中にかざすと、頬を血で汚した叔父の無垢な笑顔が浮かび上がった。

「はーい(ゔぅ…痛いっ……)ちょっと黙っててくれるー?(……バキンッ、ガハァッ)…もう帰ってくるのー?」
「まだ帰らない、ねぇ、聖王国の王子って殺してもいいの?」
「えーそれは困るなぁ、君の魔法は天才だけど、まだまだ甘い所があるからバレちゃったら帝国民が出入り禁止になるかもねぇ、それに他の国も光魔法使いが欲しいはずだから黙ってないと思うよー」
「……聖女がいなくなったらどうなるの?」
「噂は聞いてたけどー…見つかったの?」
「さあ?」
「ふーん、聖女はみーんなその国の王子と結婚してるから居なくなったことはないよー、居なくなったら血眼になって探すかもねぇ」
「そうなんだ、分かった…」
「もう…とんでもない話をしてくれたから殺さなきゃいけなくなっちゃったよー…面倒臭いなぁ、早く帰ってきてねー」

床に倒れる男を見せようとするケイルの通信を切り、レイヴンはベッドに倒れた。

あの男がフィの頬に触れた時、今すぐその手を切り落としてやりたかった。汚い大人達の不始末をフィの責任にするあの女の頭を床に叩きつけたくなった。

一日のうちに何度も危ない目に合ったフィをこの国に放っておけるわけがない。それに…無気力だったフィがあんなに頑なに「聖女」を拒んでいる。
どうしてあの女はフィがヘリオスと結婚するのが当たり前のように話していたんだ?

目を閉じても眠れる訳がなく、結局朝まで暗器の手入れをしていたレイヴンは日が昇ると、すぐに準備をした。

建国祭の準備で慌ただしい城内のメイド達は花火の音で更にその足を早める。

「随分と大胆なレディー達だ…」
「きゃっ……失礼しました…レイラ様っ!」
「ヘリオス殿下、おはようございます。ユフィは昨日と同じ部屋にいますか?」
「あぁ…え、あっ!ちょっと待て」

案内したメイドが扉を叩くとレイヴンはすぐにその扉を開けた。正装に着替えている途中だったヘリオスには構わず、ユフィの元へと向かう。


少しやつれて見えるユフィに胸が痛くなる。だけど、僕だけを写して、僕に染ったようなその青紫の瞳が、僕だけのフィのように思わせた。紫の瞳が忌み子の象徴で良かった。「聖女」として公表出来ないだろうから、このまま建国祭が終わったら二人でいろんな景色を見に行こう。そして誰にも邪魔されない場所で二人で幸せになるんだ

そう思っていたのに、フィの瞳はすぐに赤色に戻った。その時にした触れるだけの初めてのキスは虚しくて、胸の内からドロドロとしたものが溢れて抑えられなくなっていた。

いっその事、暗闇に閉じ込めてしまおうかな…

僕は無意識に転移陣を使っていた。結局叔父にはバレて、助けを願う形にはなったけど、公爵はきっと帝国を優先に考えるだろう。


それから急いで聖王国に置いてきたユフィの荷物を取り、私室に戻るとユフィが窓を開けようとしているのを見かけて、胸が冷える。

僕のことが怖くなったの?一人で旅をしようとしていたくらいだ、僕なんていらなくなった?家族がいないって嘘をついたから嫌いになったの?

僕はユフィしかいらないのに

やっぱりこのまま僕の暗闇に閉じ込めてしまおう、最初は慣れないだろうけどユフィならきっと分かってくれる

「怖くないよ」

ほら、ユフィはいつだって僕を受け止めてくれるから

虚しかった初めてのキスをやり直す。陽の光に晒されたユフィは戸惑ったような怒ったような顔をしていた。

そんな顔さえ愛おしいと思ってしまうのだから、逃げるなんて考えないでほしい
ユフィが居なくなれば僕はきっと壊れてしまうから

胸に膨らんで溢れる執着に塗れた気持ちが言葉になる。そんな言葉にもユフィは答えてくれる。


「離れていっちゃうのはいつもヴィの方でしょ?」

その言葉にユフィ自身が戸惑っているのが見えた。

思ったよりもユフィの心は僕で埋まっているのだと気づくと、胸が高鳴った。

お願いだから誤魔化さないでほしい…大人の基準は分からない、だけど時間をかけてユフィの心を僕で埋めるから…僕がユフィを手放せないように、ユフィが僕なしでは何も出来ないようにしてあげるから
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