7 / 40
闇深き動乱
魔動兵器カムオブ
しおりを挟む門を警備する衛兵が重い鉄格子の扉を開く。
錆びた蝶番が金属を引っ掻いたように軋んだ。
敷地へ入る一台の車両。
路側帯に並木が立つ直線道路を進み、建物の前で停止した。
壁面の看板に〈ムンゾ皇国軍事研究所〉と表記されている。
白衣を着た所員や背広姿の臣下達が玄関で待機しており、車両のドアを開けた。
後部座席に座っていた黒い衣装を纏う壮年の人物がゆっくりと姿を見せる。
ムンゾ皇国の君主ベルトーメだ。
その場にいる民衆が頭を下げた。
「眩しい・・・傘を差してくれ」
弱く枯すれた国皇の声。
車から降りた運転手が急いで日傘を掲げる。
しかし空模様は晴れ間のない曇天。
眩しいと感じているのはベルトーメだけであった。
整列した所員と臣下達の間を鈍足で歩く。
研究所の入口で軍部局長のシモンと魔術師ネオマリーが出迎えた。
ネオマリーは紫の長衣を纏い、片手に銀製の杖。
シモンは軍服のボタンを首元まで閉じ、威厳に満ちた鋭い眼が太い眉の下から真っ直ぐに君主を捉えている。
「お待ちしておりました、陛下」
魔術師が胸に手を当て、一礼した。
「待っていたのは私の方だ、ネオマリー卿・・・」
二人は研究所の廊下を進む。
すぐ後ろにシモンと大勢の臣下が続いた。
「四日ほど前、鎧歩兵とエレファントゴブリンを増員して各地に送ったが、まだ数が不十分だ。さらに強力な兵器が要る・・・」
ベルトーメの声は耳を澄ましてもなんとか聞き取れるほど弱いが、その声には濃厚な怒りが含まれていると誰もが気付いた。
「ご心配は無用です。完成した新たな兵器は、どんな敵も恐れるに足りません」
「研究に費やした莫大な費用と労力に応じた成果を期待する・・・」
廊下の行き止まりで昇降機に乗り、三階の研究室に到着した。
天井から吊るされた裸電球が薄暗い室内を灯す。
換気扇の回転するスクリューによって新鮮な空気が循環していた。
部屋の左側には高い棚が並び、魔物の角や内臓、目玉や牙、色とりどりの鉱石、獣の標本などが保存されている。
棚の前に長い机があり、古書や実験の内容を記した資料が置かれ、隣り合う机ではビーカーの中で沸騰する謎の溶液がグツグツと濃い湯気を上げていた。
右側の壁は全体を黒い幕が覆う。
研究室の中央に円柱形の台座。
それぞれの真上に付いた水晶の内部で、濁った煙が小さな稲妻を起こしながら不気味に揺らめく。
台座の両側から伸びる数十本の赤や青の配線が床を通じて、離れた所に立つガラス筒と繋がっていた。
筒の大きさはおよそ二メートル。その中に黄土色の物体。
「これが・・・新たな兵器なのか?」
国皇が問う。
「はい。人間の骨格を基礎に造られた機械〈魔導兵器カムオブ〉でございます」
「カムオブ・・・、こんな物が兵として使用できるのか?」
「ええ、勿論です。体長は百六十センチと小柄ですが鋼鉄と翼竜の鱗を合成した甲装は強固で、腹部に組み込まれた魔石により総合的な能力は歩兵の六十倍ほど有ります」
「ほう・・・」
「さらに空を飛ぶことも可能です。頭部に移植した人工頭脳により、自ら思考して敵を効率よく掃討します」
ネオマリーが机にある透明な箱を開け、数種類の鉱石から赤い石を選んだ。
台座の中心部の小口の扉を開く。
中に石を置いた。扉を閉じて鍵を掛ける。
鉱石が浮かび、台座の先端に付いた水晶の内部で混ざり合う煙と重なった。
極めて強い電気が生じ、直視できぬほどの光沢を放つ。
赤い石はあらゆる角度から表面が削られ、美しい黄金の球体に変化してゆく。
研究室を隅々まで照らした。
「おおぉ・・・途方もない魔力を感じる」
ベルトーメは光を両手で遮った。
高圧力の電熱が配線を通り、ガラス筒へ流入する。配線は乱暴な生き物のように暴れた。
計測装置の値を示す針が限度まで傾き、異常を報せるランプに光が点く。
スピーカーは音を出して何度も「危険だ!」と告げる。
特殊な磁場の影響で照明が不規則に点滅していた。
「この強力なエネルギーを魔導兵器に装填します」
起動スイッチを押した。
筒の上部から雷が落ち、カムオブを照射する。
機体が宙に浮いた・・・。
0
あなたにおすすめの小説
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
悪役皇子、ざまぁされたので反省する ~ 馬鹿は死ななきゃ治らないって… 一度、死んだからな、同じ轍(てつ)は踏まんよ ~
shiba
ファンタジー
魂だけの存在となり、邯鄲(かんたん)の夢にて
無名の英雄
愛を知らぬ商人
気狂いの賢者など
様々な英霊達の人生を追体験した凡愚な皇子は自身の無能さを痛感する。
それゆえに悪徳貴族の嫡男に生まれ変わった後、謎の強迫観念に背中を押されるまま
幼い頃から努力を積み上げていた彼は、図らずも超越者への道を歩み出す。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
豚公子の逆襲蘇生
ヤネコ
ファンタジー
肥満体の公爵令息ポルコは婚約者の裏切りを目撃し、憤死で生涯を終えるはずだった。だが、憤怒の中に燃え尽きたはずのポルコの魂は、社内政争に敗れ命を落とした男武藤の魂と混じり合う。
アニメ化も決定した超人気ロマンスファンタジー『婚約者の豚公子に虐げられていましたが隣国皇子様から溺愛されています』を舞台に、『舞台装置』と『負け犬』落伍者達の魂は、徹底した自己管理と泥塗れの知略で再点火する。
※主人公の『原作知識』は断片的(広告バナーで見た一部分のみ)なものとなります。
己の努力と知略を武器に戦う、ハーレム・チート・聖人化無しの復讐ファンタジーです。
準備を重ねて牙を剥く、じっくり型主人公をお楽しみください。
【お知らせ】
第8話「復讐はロゴマークに寄せて」は2026/02/11 08:00公開予定です。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
