DEAD HEAT ~破魔の護法士~

デジタル・ピテクス

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闇深き動乱

魔動兵器カムオブ

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 門を警備する衛兵が重い鉄格子てつごうしの扉を開く。
 錆びた蝶番ちょうつがいが金属を引っいたようにきしんだ。

 敷地へ入る一台の車両。
 路側帯ろそくたいに並木が立つ直線道路を進み、建物の前で停止した。
 
 壁面の看板に〈ムンゾ皇国おうこく軍事研究所〉と表記されている。

 白衣を着た所員や背広姿せびろすがた臣下しんか達が玄関で待機しており、車両のドアを開けた。

 後部座席に座っていた黒い衣装をまとう壮年の人物がゆっくりと姿を見せる。

 ムンゾ皇国の君主ベルトーメだ。
 その場にいる民衆が頭を下げた。

「眩しい・・・傘を差してくれ」
 弱く枯すれた国皇の声。
 車から降りた運転手が急いで日傘を掲げる。
 
 しかし空模様は晴れ間のない曇天どんてん。   
 眩しいと感じているのはベルトーメだけであった。

 整列した所員と臣下達の間を鈍足どんそくで歩く。

 研究所の入口で軍部局長のシモンと魔術師ネオマリーが出迎えた。

 ネオマリーは紫の長衣ローブを纏い、片手に銀製の杖。

 シモンは軍服のボタンを首元まで閉じ、威厳に満ちた鋭い眼が太い眉の下から真っ直ぐに君主を捉えている。

「お待ちしておりました、陛下」
 魔術師が胸に手を当て、一礼した。

「待っていたのは私の方だ、ネオマリー卿・・・」
 二人は研究所の廊下を進む。
 すぐ後ろにシモンと大勢の臣下が続いた。

「四日ほど前、鎧歩兵よろいほへいとエレファントゴブリンを増員して各地に送ったが、まだ数が不十分だ。さらに強力な兵器が要る・・・」

 ベルトーメの声は耳を澄ましても聞き取れるほど弱いが、その声には濃厚な怒りが含まれていると誰もが気付いた。

「ご心配は無用です。完成した新たな兵器は、どんな敵も恐れるに足りません」

「研究に費やした莫大な費用と労力に応じた成果を期待する・・・」

 廊下の行き止まりで昇降機エレベーターに乗り、三階の研究室に到着した。

 天井から吊るされた裸電球が薄暗い室内を灯す。
 換気扇の回転するスクリューによって新鮮な空気が循環していた。

 部屋の左側には高い棚が並び、魔物のつのや内臓、目玉や牙、色とりどりの鉱石、獣の標本などが保存されている。

 棚の前に長い机があり、古書や実験の内容を記した資料が置かれ、隣り合う机ではビーカーの中で沸騰する謎の溶液がグツグツと濃い湯気を上げていた。
 
 右側の壁は全体を黒いまくが覆う。

 研究室の中央に円柱形の台座。
 それぞれの真上に付いた水晶の内部で、濁った煙が小さな稲妻いなずまを起こしながら不気味に揺らめく。

 台座の両側から伸びる数十本の赤や青の配線が床を通じて、離れた所に立つガラスとうと繋がっていた。

 つつの大きさはおよそ二メートル。その中に黄土色おうどいろの物体。

「これが・・・新たな兵器なのか?」
 国皇が問う。

「はい。人間の骨格を基礎に造られた機械〈魔導兵器まどうへいきカムオブ〉でございます」

「カムオブ・・・、こんな物が兵として使用できるのか?」

「ええ、勿論もちろんです。体長は百六十センチと小柄ですが鋼鉄と翼竜ドラゴンの鱗を合成した甲装は強固で、腹部に組み込まれた魔石により総合的な能力は歩兵の六十倍ほど有ります」

「ほう・・・」

「さらに空を飛ぶことも可能です。頭部に移植した人工頭脳により、自ら思考して敵を効率よく掃討します」

 ネオマリーが机にある透明な箱を開け、数種類の鉱石から赤い石を選んだ。
 
 台座の中心部の小口こぐちの扉を開く。
 中に石を置いた。扉を閉じて鍵を掛ける。

 鉱石が浮かび、台座の先端に付いた水晶の内部で混ざり合う煙と重なった。
 
 極めて強い電気が生じ、直視できぬほどの光沢を放つ。

 赤い石はあらゆる角度から表面が削られ、美しい黄金おうごんの球体に変化してゆく。
 研究室を隅々まで照らした。

「おおぉ・・・途方もない魔力を感じる」
 ベルトーメは光を両手でさえぎった。

 高圧力の電熱が配線を通り、ガラスとうへ流入する。配線は乱暴な生き物のように暴れた。

 計測装置のあたいを示す針が限度まで傾き、異常を報せるランプに光が点く。
 スピーカーは音を出して何度も「危険だ!」と告げる。

 特殊な磁場の影響で照明が不規則に点滅していた。

「この強力なエネルギーを魔導兵器に装填そうてんします」
 起動スイッチを押した。

 つつの上部から雷が落ち、カムオブを照射する。
 機体が宙に浮いた・・・。

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