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闇深き動乱
出撃
しおりを挟む雷の放出が止む。
耳を澄ますと心拍音に似た脈動が聞こえる。
魔導兵器は両腕を外側に広げ、床へ着地した。
カムオブの機体には内部で生じた余分な熱を逃がすため、一センチほどの排気孔が肩や脇腹にある。
排気孔から濃い蒸気が勢いよく噴いた。
ガラス筒の扉が開き、カムオブは足下の階段を降りてゆく。
ベルトーメ達の前で停まった。
『我ラノ、敵ヲ殲滅シ、ムンゾ皇国ニ、名誉ト栄光ヲ・・・』
抑揚も感情もない声で話した。
「陛下、こちらをご覧ください。魔導兵器の能力を披露いたします」
ネオマリーが指を差した方向を見る。
研究室の右側を隠していた黒い幕が外れた。
壁に大きな窓。
そこから観察できる隣の室内にエレファントゴブリンとカムオブが一体ずつ立っている。
「バオオオォォォ!!」
ゴブリンの雄叫びがどよめく。
友好的な意思は無い。怒りと敵対心に満ちていた。
見上げるほどの巨体を揺らし、カムオブに突き進む。
『ターゲット解析・・・確認。象型魔物。攻撃対象ト認識。
戦闘モード=アタック、パワー指数=8。敵ノ掃討ヲ開始スル・・・』
カムオブは左腕を獣に翳す。
手の中心で小さな円形のクリスタルが光る。
魔力を宿す光線がエレファントゴブリンの胸部に命中した。
上半身が煌めきながら燃えている。
ゴブリンは絶命する直前に断末魔の呻き声を叫んだ。
前後に巨体が揺れ、背中を向けて後ろへ倒れる。
焼け焦げた胴体。頭部や長い鼻、牙、腕が灰となって消えた。
「おおぉ・・・。一撃でゴブリンを滅ぼしたか。まさにこれこそ、私が求めていたもの・・・」
ベルトーメの機嫌が高ぶる。
「カムオブは目的のみを完璧に遂行するのです」
「素晴らしい・・・。では早速、可能な限り大量に用意したまえ」
「はい。陛下がそのように申されると思い、すでに百五十体が完成しております。
現在も造り続けているのですが素材調達の都合上、二百体が限界かと・・・」
「二百では少ない・・・軍費を拡大する。倍の四百体に数を増やすのだ」
「かしこまりました・・・」
ネオマリーはベルトーメを研究室の隅に導き、扉を開ける。
そこには屋根のない外側に張り出した空間があった。
周囲に設置された柵の傍まで歩く。
真下を見る。
試験場に魔導兵器が縦に五十、横に三十体ずつ、製造番号の順番に整列していた。
猟犬のような眼差しで主を窺い、与えられる指示を待つ。
「カムオブは人工頭脳のプログラムにより、陛下の言葉に従います。どうぞ御采配を・・・」
ベルトーメは僅かに足を踏み出し、忠実な僕達に命ずる。
「攻撃目標は三つ・・・。
ロハリネとの国境を隔てるコルノス荒野。
北部の港街タテハマ。
東部の広大なサウスフェリー平原。
戦地へ出撃せよ・・・。さぁ行け、敵を全て掃討するのだ」
『指令者ノ声ヲ認識。コレヨリ実行ニ移ス。
1~50号機=コルノス荒野ヘ。
51~100号機=タテハマへ。
101~150号機=サウスフェリー平原ヘ・・・』
群集の先頭に立つ機体が発声した。
試験場のカムオブ達が全機同時に排気孔から蒸気を噴く。
頭を斜め上に向け、次々と高く浮かぶ。三つの群集は目的地へ飛翔していった。
「ネオマリー卿、魔導兵器の製造を続けたまえ・・・、私は宮廷に帰る」
「はい。仰せのとおりに・・・」
ベルトーメは研究所の入口まで戻ると車に搭乗して足早に去った。
遠退いてゆく姿を見送り、軍部局長のシモンがネオマリーに話す。
「計画は順調だが、気に掛かることがある。陛下の様子がおかしいのだ・・・」
「様子とは?」
「あの日を境に少しずつ衰え、今では別人のように窶れた。
終日、大広間の椅子に座ったまま、理解できぬ独り言を呟いている。
その異常な行動は宮廷内で噂になり、このままでは国皇としての資質がないと見なされ、ダン皇子が新たな国皇になるだろう。
彼はロハリネとの戦争に反対している・・・」
「たとえベルトーメが皇位を退いても問題はありません。
ムンゾの軍勢は各地に進行し、さらにカムオブが出撃した。もはや誰にも、この戦争を止めることはできないのです。
ようやく我々の野望を果たせるでしょう。フフフッ」
ネオマリーは怪しく微笑んだ・・・。
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