DEAD HEAT ~破魔の護法士~

デジタル・ピテクス

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放たれし災

魔塊

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 ミオランデ王国の議会堂。
 クレイグ、セロナ、各国の大使、歴史学者ヤンゼン、他に九人の護法士がいる。

 卓上の大きな水晶に映像が投影された。
 メルクリオ公国の防衛部隊と巨大な緑色の魔物の群れが見える。

 部隊の兵士は銃や大砲で何度も攻撃を加える。
 しかし敵が倒れるほどの外傷ダメージを与えられず、悪戦苦闘していた。

 さらに魔物は進む。止まる気配は無い。

 皮質が樹木のような長い腕を振り回す。兵士達を殴りつけた。
 同時に拳で地面が叩かれ、鈍重な地鳴りと苦痛の叫びが重なった。

 映像はミオランデ南部の街に切り替わる。

 古びた布で体を包む灰色の怪物達が、肩を揺らしてうごめく。
 背中は丸く屈め、喉の奥から言葉にならぬ醜い声を発する。

「正体不明の怪物が各地を襲撃しています。緑色の怪物はウッドソルジャー、次に映っていたのは生屍人アンデッドという仮名を付けました」
 メルクリオの公官が述べる。

「なぜ怪物が現れたのでしょう・・・」
 セロナが推察した。

「おそらく、怒りと悔恨の邪気よる動乱です」
 ヤンゼンが語り始める。

「人間は有史以前から争い、時に残酷な暴力で大勢の他者を殺めてきた。
 罪無き死者の怒りと悔恨が及ぼす怨念は、永い輪廻の果てに集まり、やがて邪気と成る。
 現在いま、世界中を襲撃しているのは、邪気が肉体を得た〈魔塊まかい〉と呼ばれる怪物です・・・」

「邪気、魔塊・・・」
 議会堂に満ちた沈黙。

「古文書によれば、過去に狡猾な魔術師達が邪気の悪用を試みたようです。
 しかし邪気は強大なゆえ、意のままに扱うことが出来ず、災封具さいほうぐという封印の箱に閉じ込めました。
 その後、誰の手にも届かぬ場所に隠したのです・・・」

「その場所とは何処だ?」
 クレイグが聞く。

「ムンゾの宮殿やメルクリオの聖拝堂せいはいどう、ロハリネのにも秘蔵ひぞうされていると書に記されています。
 何者かが収められた場所を知り、奪い取ったのでしょう・・・」

「災封具などという物が存在するとは知らなかった・・・」
 セロナが悔しさを示した。

「計り知れない危険性ゆえ、災封具の事実は秘匿されたのです。
 魔性の災いは人々の記憶から消え、恐ろしい現実から気にも留めない過去の逸話や伝説に変容しました・・・」

「ムンゾとの戦争が終結したのに、再び危機が・・・」
 ロハリネの大使が嘆く。
  
 周囲に座る大使達は黙ってうつむいた。
 もう一度、ヤンゼンが話し出す。

「ウッドソルジャーはノースキャトル公国の東部に広がる樹海から出現しており、邪気を持つ者が森に潜んでいると考えられます。
 生屍人アンデッドはミオランデ王国の砂漠に建つ古代遺跡に現れました。
 遺跡にも邪気を持つ者がいると想定できます」

 クレイグが立ち上がった。

「我々の力を存分に発揮すれば、魔塊を打破できるはずだ。
 すでにアーツが部隊を率いてハーバに赴き、魔塊と戦っている。
 私はレビエ、オスカー、ワズホ、リュッセと砂漠の遺跡に行く。
 セロナはキヨヅキ、ヘンドリー、エマ、ストウィスと樹海に向かってくれ」

 クレイグの提案を全員が了承し、護法士達は議会堂の隅にある扉からバルコニーへ出る。

賢正けんせい。サタナエルは光属性の技に脆いとの文献があります。少ない情報ですが参考にして下さい」
 ヤンゼンの助言にクレイグがうなずく。

 護法士達は〈飛空〉の術技で旋風に覆われ、風の翼が背中に付いた。
  颯爽さっそうと高く跳び上がり、敵が待ち受ける修羅場へと飛翔していった。



 議会堂に慌てた様子の事務官が駆けてきた。
「どうされましたか?」
 ミオランデの大使が尋ねる。

書報しょほうに連絡が届きまして、魔塊との戦闘でロハリネのアーツ賢正が・・・・じゅんじたと」
「!!?」
 その報せに声を呑んで驚く。
「ま、まさか、アーツ氏が・・・」
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