DEAD HEAT ~破魔の護法士~

デジタル・ピテクス

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放たれし災

訃報

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 魔塊を見つけたとの報せで護法士達が城塞に集結した。

 敷地や濠の付近を隅々まで捜す。
 だかセプトゥーは城の中へ移動しており、また姿を見失った。

 三つの班に分かれて城内に入る。
 異様な静寂・・・。

 廊下の古い柱時計は故障しているのだろう、過ぎ去った時刻で秒針を止めていた。

 各部屋には数種類の武器や盾、楔帷子くさびかたびら、鋼鉄の甲冑かっちゅう
 その他にも陶器や銀のスプーンなどの日用品がガラスの棚に並ぶ。

 くまなく捜索したあと、廊下に引き返そうと戸口へ向かう。

 急に背後でガラスの棚が割れた。
 甲冑が飛び出す。

 右手には錆びた剣。左手には傷が残る鋼の盾。
 
 剣で戸口の壁を打ち壊すと同時に、護法士をまとめて斬りつけ、崩れた壁の瓦礫が廊下に散らばった。

 鉄兜てつかぶとの眼帯が外れ、倒れた人間達を見下ろす青い独眼。
 セプトゥーだ。

 護法士は反撃する。
 雷の術技が甲冑に直撃して、鋼鉄の腕や胴体が壊れた。
 
 暴れる甲冑は防具を取り払い、床に投げ捨てる。
 
 桃色の手から噴いた魔性の閃光が護法士を爆撃した。
 廊下に漂う焦げ臭い灰煙・・・。

 セプトゥーは瓦礫と護法士を掃除機のように口へ吸い込む。

 体表は赤らみ、邪気が高まってゆく。
 束の間、体の芯から眩い輝きが放たれた。

 満足げな笑顔のまま垂直に跳ね、天井と屋根を壊して城外へ出る。

『ゲーゲゲゲケッ━━━━!!』
 自我を失った魔塊。瞳は蒼白となり、空中で周辺を見渡す。
 城塞に集まった護法士が十人ほどいた。
 
 桜魔おうまは独眼の中心から青い光線を放つ。
 激しい閃撃が大地に突き刺さった。
 
 尚も注がれる怒濤どとうの光。
 護法士を襲い続ける。

 アーツは敵の眼が横を向いた隙に空中へ跳び、固く閉じた拳に炎を灯す。

【 烈炎槍拳れっかそうけん 】
 
 セプトゥーが炎の拳を撥ね除けた。
 地上に落ちるアーツ。
 
 魔塊は凄まじい勢いで突進してゆく。
 激突する間際、後方へ素早く回避した。
 
 桃色の手が路面を叩き、瓦礫と土砂が周囲に飛散する・・・。

 セプトゥーが再び迫る。

 アーツもひるむことなく足を踏み出し、戦場にいる仲間と共に〈神託の光矢ハルバ・ミナリー〉を撃つ。

 数百のきらめく矢が、幾つもの方向から何度も標的に当たる。

 魔塊は術技を両手で払い、真上に跳んだ。
 縮めた体を広げ、熾烈な衝撃波を放出させる。
 
 その圧力に耐えきれず、護法士達は遠く後退した。

賢正けんせい。魔塊の力が先ほどと違い、大幅に上昇しているようです。術技の効果が減殺げんさいされています・・・」
 アーツの傍にいた護法士が告げる。

「そのようだな・・・」

『ゲゲゲケッ━━━━!!』
 セプトゥーは人間の困惑した顔を見ると、さげすんだ眼で笑った。

「総員、敵を包囲せよ。防御障壁の檻に閉じ込める」
 アーツの指示が実行された。

 護法士が宙に浮かぶセプトゥーの真下を円状に囲む。
 魔塊の方へ手を掲げた。

 セプトゥーが構える。
 数十枚の透明な光の板が発現した。
 それぞれが繋がれ、桃色の全身を覆い隠した。

 魔塊はしばらく黙ったままたたずんでいたが、自分が閉じ込められていると気付き、檻の外へ出ようともがき始めた。
 
 腕を振り降ろして光の監獄を殴る。外面が波打ち、前後にたわむ。

 護法士は壁の硬度と耐久性を強化した。
 しかしセプトゥーの拳が檻を少しずつ壊す。

 鋭くいだ手がついに独房を破った。
「!!・・・」
 
 風にさらわれて消える輝く残骸。

 魔塊は口を横に大きくニヤリと開き、魔術を唱えた。

【 暗黒の満月ダーク・フルムーン 】
 邪気が体の表層から滲む。
 
 セプトゥーは腕を掲げた。水滴に似た無数の黒い粒子が掌の上に集まる。
 

 一つ一つが融合して巨大な漆黒の球体に変わってゆく。

 掲げた腕がアーツを目掛けて強振され、闇の爆弾が落ちた。

 防御障壁で魔球に抗う。
 黒い満月と光の壁がぶつかり、乱れ吹く突風。

 月の侵食を必死に耐えるが次第に障壁は崩れ、邪悪な弾丸でアーツは包まれた。

 体が霧のように散逸し、輪郭が縮む。
 完全に姿がついえてしまった・・・。

賢正けんせい!━━━━━」

 戦場に失意と濃密な硝煙しょうえん
 護法士達はアーツの落命に動揺していた。
 
 心の底で僅かに保つ〈ハーバを護る〉という使命感だけが彼らをこの場に留まらせた。

 セプトゥーは突然、上空で浮いたまま、何かを察知して独眼を横に移す。
 
 目の前の敵に興味を失ったのだろうか、人々に背を向ける。
 
 視線の遠方を凝視しながら一直線に何処かへ移動していった・・・。



 難を逃れた惨禍の街。
 護法士は書報しょほうを取り出し、戦況を記す。

〈アーツ賢正、戦闘の末にじゅんずる。怪物はハーバから東へ飛翔・・・〉
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