DEAD HEAT ~破魔の護法士~

デジタル・ピテクス

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放たれし災

甦る畏怖 2

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 コルノス荒野でエレファントゴブリンが吼える。
 
 ムンゾとロハリネの戦争は終結したものの、魔術師に煽動されたゴブリンや翼竜ドラゴンの闘争心は収まらず、進攻は依然として続いていた。
 
 数百体の魔物が防衛部隊へ猛進する。

 迎撃の陣形で荒野を守る部隊の先頭で、護法士の将閤イサリヤが術技を放つ。

 空へ伸ばした掌から丸い光源が舞った。

 目視できない距離まで昇ると分裂し、無数の流れ星がゴブリンの群衆に落ちてぜる。

 防衛部隊の兵士は長銃ライフルで魔物をして追撃した。

 生き残った獣が部隊に迫る。
 イサリヤはもう一度、術技を発導しようと構えた。

 その時、上空の一帯が発光して雷が地上を強く撃つ。
 周囲の地面が広く円状に削られた。

 砂礫が漂う円の中央に黒衣を纏う何者がいる。
 血染めの闇同盟レッド・ファミリアの幹部、魔術師ブラッドモアだ。

「あれは?・・・」
 謎の人物をイサリヤが見つめる。

 しかしエレファントゴブリンのわずらわしい咆哮を聞き、すぐに注意が地上の獣に向き直った。

 ブラッドモアが悪しき呪文を唱えた。
「 魔体武装 」

 巻き起こった輝く旋風が魔術師を覆い、身体の形が変容してゆく。

 強力な邪気の気配を嗅ぎ取り、ゴブリン達が熟視する。

 現れた奇抜な魔塊。

 頭部に角と長い紐のような触角、背中には紫の翼、胴体と関節は透明な物質で組成され、内在するコアが脈打っている・・・。


 ブラッドモアは片腕を翳す。
 拳に滴る闇。

 湾曲した赤い鉤爪かぎづめが指の間に三本生え、後方に腕を引く。

 エレファントゴブリンに向けて振り回す。
 鉤爪から魔力を帯びた半円の波が飛び、象の巨体を無慈悲に断つ。

 刃は空間を周回して獣の群れを連続で襲う。
 雪崩なだれのように次々と倒れた。

 ゴブリン達は新たな敵を睨む。
 同胞があやめられたことに怒り、攻撃の対象を防衛部隊からブラッドモアに変えた。

 仇を討つべく血眼ちまなこで突進する。

 闇の魔塊は途轍もない速さで右へ左へと移り、腕を幾度もぐ。

 荒野にいる全ての巨象を鉤爪の刃で斬撃した。

 騒乱の戦場に獣の肉片が舞う。

 死をもたらす刃に斬られた断面は黒く壊死えしして、泥にまみれたゴブリンの身柄を染める。

 やがて巨象は燃え殻のような灰となった・・・。

 その光景に唖然とする兵士達。
 ブラッドモアが次の標的に掌を向けた。

【 玉砕鬼穿ギャラン・ドング 】
 邪気のあわが手を包む。

 数えきれぬほど細かく分かれ、鋭利な闇の牙に転化した。

 ロハリネの兵士へ浴びせかけられる絶え間ない牙の迫撃。

 護法士は〈防御障壁〉で魔術を防ぐ。
 だが次第に壁の強度が低下してゆく・・・。

 荒野の上空。
 何かが驚異的な速度で接近してきた。

 それは肌が桜色で顔に独眼。
 肩に纏う毛皮を乱暴になびかせ、猛烈な勢いでブラッドモアに激突した。

 数十メートル後方に弾かれたが、体勢を整えて着地する。飛んできた謎の物体を睨んだ。

『強イ奴、見ツケタ、喰ウ。ゲーゲゲケケケ━━━━━━!!』

『お前は・・・セプトゥー。自我を失い、我らが同盟であることを忘却したか・・・』

 桃色の魔塊は笑ったまま目を輝かせ、跳躍した。

 独眼で群青ぐんじょうの光線を撃つ。
 対するブラッドモアは腕を翳す。

【 死閃光ディザスター 】

 黒い波動が大瀑布だいばくふのように掌から流れ、セプトゥーが放った光線と紛糾した。

 双方のわざによる震動が大地を伝う。

 護法士と兵士達は姿勢を屈め、なんとかその場に踏み留まる。
 魔塊同士の争いに固唾かたずを呑んで傍観するしかない・・・。

 ブラッドモアが空中にいるセプトゥーに攻めかかった。

 桃色の魔塊は打撃を受け止め、相手の肩を掴む。背中越しに放り投げた。

 ブラッドモアは地表に激しく打ちつけられたが、すぐさま立ち上がる。
 魔術を唱えた。

【 地獄から湛える死滅の滝ヘル・ザ・フォール 】
 セプトゥーの真下に影の円が生じ、黒い柱が天高く噴出した。

 桜魔おうまを粗く削る。

 絶えない死滅の滝。
 横方向に逃れた。ブラッドモアも空へ転移する。

 固く握られた拳がセプトゥーを突く。
 焦土に転がり、先が見えないほど厚い砂塵を近辺に撒き散らした。

 宙に浮かぶブラッドモアは敵の動向を窺う・・・。

 セプトゥーが不機嫌そうに起きた。
 相変わらず歯を剥き出して笑っているが、心情は憎悪と復讐に燃え、ひたいや首元に太い筋が出ていた。

『ゲエェェェ!!ケケケケッ━━━━━!・・・』
 情緒が錯乱した怒号を発し、両手を天に掲げる。

【 暗黒の満月ダーク・フルムーン 】
 発現した闇の球体。
 邪気が引き付けた雨雲が荒野の空に流れる。

 血走った独眼を最大まで開き、豪快に腕を振った。

 たぎ魔弾まだんが宿敵へ飛んでゆく。

 ブラッドモアは左右の手で防ぎ止めた。
 互いの間で押し合う。

 雷鳴に似た異音が轟き、満月はセプトゥーに弾き返された。

 強烈な爆発が起きて、紅い肢体を破壊する。

 周辺一帯が余波に圧され、防衛部隊の兵士達は荒野の隅まで退いた。

 戦場の砕けた大地にブラッドモアが降り立つ。
 眼前には上半身だけが辛うじて残るセプトゥー。

 独眼の瞳は消え、耳障みみざわりな笑い声は聞こえない・・・。
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