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放たれし災
遺跡
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晴天を翔るクレイグ、レビエ、オスカー、ワズホ、リュッセ。
砂漠の遺跡へ向かう護法士達だ。
ワズホが目元に指を当て、術技を付与する。
【 猛禽類の目視 】
視力が高まり、ごく小さな羽虫やどんなに高速に動くもの、さらに数十キロも遠い場所にある目標物を確認できるようになった。
ミオランデ王国南部の街を視察する。
護法士の術技で無数の生屍人が捕縛されていた。
市民に被害は及んでいない。
だが不死身の魔物は近隣の街にも多発している。
災の禍根、魔術師サタナエルを討たない限り、奴等は生き続け、各地を侵略するだろう・・・。
空を飛翔する五人の護法士がミオランデの街から遠ざかる。
郊外の広い平原には田畑があり、青果や小麦が実っていた。
風景は絵画のように美しく、草花の赤や黄色で映え渡る。
平原を飛び続け、緑に覆われた山脈まで到達した。
さらに進んでゆくとある地点を境に豊かな森は枯れ、大小の粗い岩石が砂漠の地表に散在している。
連峰と砂漠の境界を越えた先に、巨大な岩山を掘削して造られた建造物が見えた。
古代の巌窟神殿だ。
二千年以上も前から建つと云われる古の遺跡。
入口まで届く参道の両側に高い石柱が並び、頑丈な岩の扉は来客の訪問を断るように固く口を閉ざしている。
地下に眠る宝物狙う盗賊が稀に侵入しようと企む。
しかし銃や砲弾を使っても扉は開かず、難攻不落の神殿として悪漢共はもとより、人々を遠ざけていた。
護法士達は空中から砂地に降りた。
「ここか・・・遺跡の深層から魔塊の邪気を感じる」
リュッセの言葉に四人が同意して頷く。
クレイグを先頭にサタナエルの根城へと踏み込んでいった。
ゴゴゴオオォォ!・・・
神殿の厚い扉が鈍重な音を鳴らして開き、数百体の生屍人が巌窟の中から奔走してきた。
主の命令に従い、到来した刺客を殺すために。
迫る怪物の群集。
五人は立ち止まり、クレイグ、オスカー、リュッセが腰に据えた鋼鞘から剣を抜き、敵に向けて振る。
刃の形を成した斬撃が飛んだ。
レビエは〈黎明の流星群〉を、ワズホは〈万迅雷〉を撃つ。
星と雷の強力な爆弾が生屍人を掃射する。
おぼろげな光を含んだ土砂が漂い、襲撃してきた魔物の群れは総じて砂漠に倒れた・・・。
屍の残骸を通り抜けて神殿に入場する。
内部の通路は薄暗く、経年劣化により各所で瓦解した石畳や壁。
床には砂が溜まっている。
豊穣を願う儀式の壁画が路の端まで描かれ、隅に沿って配置された幾つもの柱が天井を支えていた。
物静かな広間に着く。
正面の壁際に高さ十メートルもあろう赤茶色の武者石像が二体、隙間なく並び、その横に一つずつ戸口がある。
周辺を視察しながら場内の中央へ歩いた時、石像の横の戸口で騒がしい足音が聞こえ、五人は警戒した。
「!!・・・生屍人が来るぞ!」
地下墓地から魔物が這う。
広間へ出てくる寸前、クレイグは〈真炎球射弾〉を放つ。
右側の戸口に入って炎上し、着弾の影響で坑道は崩れた。
高く集積された瓦礫が路を塞ぐ。
魔物は行き場を失った。
レビエは左側の戸口に〈氷柱連破〉を発導する。
行列の手前にいた怪物を貫き、氷柱が重なって氷の壁が進路を阻んだ。
「出てくるのは生屍人だけ・・・。サタナエルは何処にいるのか・・・」
リュッセが隈なく周りを見た。
「おそらく、別の場所に繋がる扉か入口があるはずだ・・・」
クレイグはそう言うと遺跡を歩き回る。五人は敵の動向に細心の注意を払い、隠された秘密の扉を探す。
ワズホが二体の武者石像の間に微かな邪気を察した。傍に近寄る。
「!!?・・・」
突然、双方の石像の目に紅い光が灯り、意思を持ったように歩き始めた。
巨大な足を交互に前方へ下ろす。
護法士と岩石の武者が対峙した。
直後、床に散らばる大量の砂が真上に旋回する。
細かい砂は集合して、石像と同じ高さの槍と斧に変わり、武者石像はそれぞれ腕を動かして武器を掴んだ。
『我が名はソルネヘブ。主に忠誠を誓い、聖なる神殿を守備する者・・・』
『我が名はアメンヘブ。主に楯突く愚かな侵入者よ。この聖域から直ちに去るのだ・・・。
我らは非道な罪人であっても命を尊重し、共存を志している。
だが冷徹な野望を抱き、その策略を遂げようと悪しき目論みのために生き続けるならば、今ここでそなた等の罪を裁こう・・・』
赤茶色の守衛が護法士を牽制する。
ソルネヘブは侵入者が退く気が無いと悟った。
斧を掲げ、振り落とす。
地面を叩いて砂が撥ねる。
クレイグ、レビエ、オスカーは剣を手に三方向から石像へ肉薄した。
三つの刃がソルネヘブの腕や胴体を断つ。
斬られた破片は、きめ細かい砂粒に変化して空間に散った。
アメンヘブが槍を連続で突き出し、護法士を貫いてやろうと攻撃を繰り返す。
ワズホとリュッセは槍を躱し、敵に強烈な風の術技を撃つ。
石像の頭部と腕を削り、瞬く間に上半身は消えてゆく。
だか途端に壊れた部分へ、有り余るほど膨大な砂が密着する。
二体の石像は一片の違いもなく、元の姿に修復された。
『我らは何度でも甦る。主の加護がある限り・・・』
ソルネヘブとアメンヘブが巨体をゆらして前へ進む。
斧と槍の打撃を避け、術技を発導した。
石像は粉々に破壊されるが先ほどと同じく、欠けた部分を砂が埋め、岩石の鎧が原形に戻った。
護法士達は攻勢を緩めず果敢に挑む。
しかしその都度、武者石像の姿が再生する。
サタナエルの魔術で非常に強力な復元の性質が付与されているようだ。
「壊しても復活する・・・、どうしたら倒せるんだ・・・」
レビエが五人の戸惑いを代弁した。
『我らは何度でも甦る。主の加護が有る限り・・・』
ソルネヘブが武器を持ち上げる。
「主の加護・・・そうか。ワズホ、リュッセ、オスカー。敵の動きを止めてくれ」
クレイグは解決策をひらめいた。
迅速に敵の方へ駆けてゆく。
指示を受けた三人が〈鎮守の捕縛〉で石像の腕や足を結ぶ。
クレイグは呪いを解く術技〈療浄天手〉をソルネヘブに送る。
護法士の手から出現した光球が煌めく天使になり、背中の翼をはためかせ、武者石像へ悠然と舞い降りた。
岩石の肩にそっと手を置く。
邪悪な呪いが吸いとられ 、無害な物質へ浄化してゆく。
ソルネヘブから生じた禍々しい闇の気体は消滅した。姿勢が斜めに傾き、身柄が削れる。
やがて細かい砂粒に変わり、石像は崩れ落ちた。
クレイグはアメンヘブにも同じ術技を送る。
途端に頭部、腕、胴体、足の順に崩壊し、護法士の身長ほどもあろう砂塵の山が床に滞積した。
呪いが解かれた砂は、入口から吹く微風に流されていった・・・。
五人は正面の壁へ歩く。
ワズホが武者石像の間に邪気を察知した場所だ。
壁の上部に丸い枠。掌の模様が刻印されている。
調べてみるが何も起こらない。
だがその裏側から魔力の気配を感じる。サタナエルがいるのだろうか。
ワズホは雷の術技を放つ。
雷撃により壊れた壁の残骸が散らばる。
狭く長い秘密の通路が壁の後ろにあった。
行き先は分からない・・・。
クレイグが側壁の籠に掛かる煤けた木に火を灯す。
即席の照明を持ち、護法士達は闇へ闊歩してゆく。
暗い道を真っ直ぐに進み、角を幾度か曲がる。
通路の奥で見つけた地下へ向かう階段を、一ずつ慎重に降りた・・・。
砂漠の遺跡へ向かう護法士達だ。
ワズホが目元に指を当て、術技を付与する。
【 猛禽類の目視 】
視力が高まり、ごく小さな羽虫やどんなに高速に動くもの、さらに数十キロも遠い場所にある目標物を確認できるようになった。
ミオランデ王国南部の街を視察する。
護法士の術技で無数の生屍人が捕縛されていた。
市民に被害は及んでいない。
だが不死身の魔物は近隣の街にも多発している。
災の禍根、魔術師サタナエルを討たない限り、奴等は生き続け、各地を侵略するだろう・・・。
空を飛翔する五人の護法士がミオランデの街から遠ざかる。
郊外の広い平原には田畑があり、青果や小麦が実っていた。
風景は絵画のように美しく、草花の赤や黄色で映え渡る。
平原を飛び続け、緑に覆われた山脈まで到達した。
さらに進んでゆくとある地点を境に豊かな森は枯れ、大小の粗い岩石が砂漠の地表に散在している。
連峰と砂漠の境界を越えた先に、巨大な岩山を掘削して造られた建造物が見えた。
古代の巌窟神殿だ。
二千年以上も前から建つと云われる古の遺跡。
入口まで届く参道の両側に高い石柱が並び、頑丈な岩の扉は来客の訪問を断るように固く口を閉ざしている。
地下に眠る宝物狙う盗賊が稀に侵入しようと企む。
しかし銃や砲弾を使っても扉は開かず、難攻不落の神殿として悪漢共はもとより、人々を遠ざけていた。
護法士達は空中から砂地に降りた。
「ここか・・・遺跡の深層から魔塊の邪気を感じる」
リュッセの言葉に四人が同意して頷く。
クレイグを先頭にサタナエルの根城へと踏み込んでいった。
ゴゴゴオオォォ!・・・
神殿の厚い扉が鈍重な音を鳴らして開き、数百体の生屍人が巌窟の中から奔走してきた。
主の命令に従い、到来した刺客を殺すために。
迫る怪物の群集。
五人は立ち止まり、クレイグ、オスカー、リュッセが腰に据えた鋼鞘から剣を抜き、敵に向けて振る。
刃の形を成した斬撃が飛んだ。
レビエは〈黎明の流星群〉を、ワズホは〈万迅雷〉を撃つ。
星と雷の強力な爆弾が生屍人を掃射する。
おぼろげな光を含んだ土砂が漂い、襲撃してきた魔物の群れは総じて砂漠に倒れた・・・。
屍の残骸を通り抜けて神殿に入場する。
内部の通路は薄暗く、経年劣化により各所で瓦解した石畳や壁。
床には砂が溜まっている。
豊穣を願う儀式の壁画が路の端まで描かれ、隅に沿って配置された幾つもの柱が天井を支えていた。
物静かな広間に着く。
正面の壁際に高さ十メートルもあろう赤茶色の武者石像が二体、隙間なく並び、その横に一つずつ戸口がある。
周辺を視察しながら場内の中央へ歩いた時、石像の横の戸口で騒がしい足音が聞こえ、五人は警戒した。
「!!・・・生屍人が来るぞ!」
地下墓地から魔物が這う。
広間へ出てくる寸前、クレイグは〈真炎球射弾〉を放つ。
右側の戸口に入って炎上し、着弾の影響で坑道は崩れた。
高く集積された瓦礫が路を塞ぐ。
魔物は行き場を失った。
レビエは左側の戸口に〈氷柱連破〉を発導する。
行列の手前にいた怪物を貫き、氷柱が重なって氷の壁が進路を阻んだ。
「出てくるのは生屍人だけ・・・。サタナエルは何処にいるのか・・・」
リュッセが隈なく周りを見た。
「おそらく、別の場所に繋がる扉か入口があるはずだ・・・」
クレイグはそう言うと遺跡を歩き回る。五人は敵の動向に細心の注意を払い、隠された秘密の扉を探す。
ワズホが二体の武者石像の間に微かな邪気を察した。傍に近寄る。
「!!?・・・」
突然、双方の石像の目に紅い光が灯り、意思を持ったように歩き始めた。
巨大な足を交互に前方へ下ろす。
護法士と岩石の武者が対峙した。
直後、床に散らばる大量の砂が真上に旋回する。
細かい砂は集合して、石像と同じ高さの槍と斧に変わり、武者石像はそれぞれ腕を動かして武器を掴んだ。
『我が名はソルネヘブ。主に忠誠を誓い、聖なる神殿を守備する者・・・』
『我が名はアメンヘブ。主に楯突く愚かな侵入者よ。この聖域から直ちに去るのだ・・・。
我らは非道な罪人であっても命を尊重し、共存を志している。
だが冷徹な野望を抱き、その策略を遂げようと悪しき目論みのために生き続けるならば、今ここでそなた等の罪を裁こう・・・』
赤茶色の守衛が護法士を牽制する。

ソルネヘブは侵入者が退く気が無いと悟った。
斧を掲げ、振り落とす。
地面を叩いて砂が撥ねる。
クレイグ、レビエ、オスカーは剣を手に三方向から石像へ肉薄した。
三つの刃がソルネヘブの腕や胴体を断つ。
斬られた破片は、きめ細かい砂粒に変化して空間に散った。
アメンヘブが槍を連続で突き出し、護法士を貫いてやろうと攻撃を繰り返す。
ワズホとリュッセは槍を躱し、敵に強烈な風の術技を撃つ。
石像の頭部と腕を削り、瞬く間に上半身は消えてゆく。
だか途端に壊れた部分へ、有り余るほど膨大な砂が密着する。
二体の石像は一片の違いもなく、元の姿に修復された。
『我らは何度でも甦る。主の加護がある限り・・・』
ソルネヘブとアメンヘブが巨体をゆらして前へ進む。
斧と槍の打撃を避け、術技を発導した。
石像は粉々に破壊されるが先ほどと同じく、欠けた部分を砂が埋め、岩石の鎧が原形に戻った。
護法士達は攻勢を緩めず果敢に挑む。
しかしその都度、武者石像の姿が再生する。
サタナエルの魔術で非常に強力な復元の性質が付与されているようだ。
「壊しても復活する・・・、どうしたら倒せるんだ・・・」
レビエが五人の戸惑いを代弁した。
『我らは何度でも甦る。主の加護が有る限り・・・』
ソルネヘブが武器を持ち上げる。
「主の加護・・・そうか。ワズホ、リュッセ、オスカー。敵の動きを止めてくれ」
クレイグは解決策をひらめいた。
迅速に敵の方へ駆けてゆく。
指示を受けた三人が〈鎮守の捕縛〉で石像の腕や足を結ぶ。
クレイグは呪いを解く術技〈療浄天手〉をソルネヘブに送る。
護法士の手から出現した光球が煌めく天使になり、背中の翼をはためかせ、武者石像へ悠然と舞い降りた。
岩石の肩にそっと手を置く。
邪悪な呪いが吸いとられ 、無害な物質へ浄化してゆく。
ソルネヘブから生じた禍々しい闇の気体は消滅した。姿勢が斜めに傾き、身柄が削れる。
やがて細かい砂粒に変わり、石像は崩れ落ちた。
クレイグはアメンヘブにも同じ術技を送る。
途端に頭部、腕、胴体、足の順に崩壊し、護法士の身長ほどもあろう砂塵の山が床に滞積した。
呪いが解かれた砂は、入口から吹く微風に流されていった・・・。
五人は正面の壁へ歩く。
ワズホが武者石像の間に邪気を察知した場所だ。
壁の上部に丸い枠。掌の模様が刻印されている。
調べてみるが何も起こらない。
だがその裏側から魔力の気配を感じる。サタナエルがいるのだろうか。
ワズホは雷の術技を放つ。
雷撃により壊れた壁の残骸が散らばる。
狭く長い秘密の通路が壁の後ろにあった。
行き先は分からない・・・。
クレイグが側壁の籠に掛かる煤けた木に火を灯す。
即席の照明を持ち、護法士達は闇へ闊歩してゆく。
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