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放たれし災
死の宴
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『我が声明に背き、抗争を望むか・・・良かろう。
だが勝利など虚しい幻想。陽の届かぬ砂漠の深層に葬り去ってやる・・・』
サタナエルは微弱な音さえ起こさず、大理石の椅子から立ち上がった。
肩や胴体に漆黒の瘴気が溢れ出す。
全身を包み、直立する影に化けた。
影は空気と混ざって姿が消える。
クレイグの真後ろで掠れた声が囁く。
『貴様共は我が身に触れる事さえできぬだろう・・・』
サタナエルの姿が消えた途端、クレイグの背後に転移していた。
振り返ると剣を迅速に薙ぐ。
骸の塊体を断ち斬る間際、再び影になり、刃は空転した。
護法士達は警戒心を高める。
少しでも油断すれば命を奪われるような危機感。
『どうした・・・黙って何もせず、剣を構えているだけか?・・・』
オスカーの後方に骸卿が現れた。
体を廻しながら剣を強振する。
またしても刃は黒い幻影を扇ぐだけだった。
直後、斜め上空で影が滲む。
濃度を増してサタナエルの容姿に変わる。
傾けた右腕から白く濁った閃光を放ち、護法士はそれぞれ違う方向へ逃れた。
波動が床を爆破し、岩石の砕屑物が漂流する・・・。
レビエが〈太陽儀玉〉を、クレイグは〈闇払う清廉の威閃〉を撃つ。
灼熱の球体と雷の槍が押し寄せる。
左腕を翳すサタナエル。
【 骸形化 】
炎と雷は骸の手に触れると、争うことなく消失した。
「太陽儀玉が一瞬で無くなった・・・」
戸惑うレビエ。
隣でリュッセ、オスカー、ワズホが〈黎明の流星群〉を唱える。
天井に光の渦が集まり、夥しい量の流星が降り注ぐ。
サタナエルは再び左腕を掲げる。
無数の光弾が骸の手に触れ、輝きを失ってゆく。
迫撃や打撃は属性に関わらず、魔術で消化されてしまう・・・。
「黎明の流星群は光属性の術技。歴史学者のヤンゼン氏はサタナエルが光に脆いと話していたが・・・」
「おそらく我々の魔法力と比べ、奴の邪気が遥かに勝っているんだ・・・」
敵を見据えたままオスカーとワズホが言った。
呆然とする護法士にサタナエルが距離を詰める。
人型の影となり、剣を振ったリュッセの正面を幻がすり抜けた。
『勇ましい騎士よ。さぁ、我が肢体に一撃を加えてみろ・・・』
リュッセはすぐに半転すると、悪霊を討つべく接近した。
「待て!挑発に応じてはならない、迂闊に攻めかかるのは危険だ!」
クレイグが強く制止する。
しかしリュッセは剣を鋭く薙いで攻撃を繰り返す。
鬼気迫る魔法力が腕から剣に伝い、刃が柔らかな青に光る。
サタナエルは狙いすまして拳を真横に払った。
護法士の武器は木端微塵に破壊され、鋼の欠片が宙を踊る。
魔塊の手がリュッセの首筋を捕らえた。
「ぐああぁぁぁ!!・・・」
全身に噴煙が燻り、肌は濃い土色に染まる。
着用している衣装やマントが綻び、細かく剥がれた。
肉体は急激にミイラのような醜態に痩せ、まもなく骨以外の細胞が空間へ逸した・・・。
リュッセの骸骨が落下する。
バラァァァ・・・カラン、カラン・・・。
数十本の骨は乾いた音を響かせて周囲に散乱した。
悪霊は身を屈め、頭蓋骨を片手で掬い上げる。
四人の護法士に見せつけた。
『戦いとは死の宴。恐怖と抱き合い、狂った乱舞に陶酔する。その戯れの果てには破滅が待つのみ・・・』
サタナエルは頭蓋骨を白い砂に変容させ、まるで亡者の魂を潰すように指を閉じる。
白い砂が指の間から散った・・・。
護法士達は仲間の壮絶な死に動揺していた。
今までよりも剣を強く握り締めるクレイグ。
「オスカー、ワズホ、レビエ。我らが個々に攻撃しては、あの悪霊を滅ぼせない。
魔法力を私の剣に集めてくれ。より強大な術技を奴に撃つ!」
リュッセの体が消失する凄惨な場面が、三人の脳内を独占していた。
だがクレイグの芯の通った声を聞いて、戦意と冷静さを取り戻す。
三つの手がクレイグの剣を囲み、魔法力で満ちた波が流れる。
刀身が眩く輝いた。
サタナエルは次の標的を定め、再び護法士に攻め込む。
クレイグが剣を振る。
青白い光の斬撃が水平に自転しながら敵へ向かって飛び、サタナエルは掻き消そうと左手を伸ばす。
斬撃の只ならぬ威力を察知した。
すでに回避できる間合いではなく、光の刃が骸の胴体を襲う。
爆発が起き、目を焦がすほどの閃きで広間が照らされる。
魔塊を滅ぼした・・・と安堵するのは尚早。
床に低い姿勢で腰を落とすサタナエル。
徐に立ち上がり、激昂した形相で護法士を睨む。
左腕は少なからず崩壊しているが致命傷とまでは至っていない。
クレイグの斬撃は、ぶつかる寸前に弾かれていたのだ。
光の刃が後方へ飛び、天井付近に当たったのだろう、大きな切れ目と深い皹が生じている。
クレイグが持つ光芒の剣は魔法力が劇的に向上していたものの、悪霊を灰塵に変え、恐怖の影を末梢することは叶わぬようだ。
「全員の力を併せ、術技の威力を高めても、体表を些か汚しただけか・・・」
クレイグが悔しげに語る。
サタナエルは迅速に疾走してオスカーの首元を掴んだ。
骸の手に捕らえられた体が喘ぎ、宙に浮く。
「ぐああぁぁぁ!・・・」
レビエとワズホは仲間を救おうと走る。
サタナエルの右腕から白濁した波動が射撃され、二人を襲った。
レビエ達に敵意が注がれた隙に、オスカーは首元に絡んだ指を強引に解く。
悪霊が獲物を逃がすまいと追う。
その時、クレイグが敵の側面から剣を薙いだ。
硬い岩盤を打ちつけたような異音。
サタナエルの腕と剣が交わる。
今度こそ多大なダメージを与えたと期待したが、逆にクレイグは遠く撥ね返され、床を横切って転倒した。
即座に姿勢を戻す。
サタナエルの淀んだ身柄が空気と混ざり合う・・・。
「また消えた・・・何処に現れるか、見当がつかない」
しきりに顔を左右に振るレビエが本音を呟く。
闇と沈黙が支配した戦場では、どれほど鍛えた精神力でさえ、僅かな恐怖が心に生ずる。
護法士も例外ではなかった。
全員がサタナエルの行方を見つけようと捜索している。
だが視覚や聴覚では敵の動向を把握するのは難しい。
クレイが目を閉じた。
極めて微細な糸の末端を探るように闇の気配の痕跡を辿った。
長く尾を引いた影が広間の空中を八の字に泳いでいる。
しばらく浮かんだままの影が急降下。
レビエの背後で闇が沸き、悪霊に輪郭を変える。
クレイグは敵の奇襲が仲間を害する前にサタナエルとの距離を縮めた。
煌めく剣を振り抜く。
骸卿は太刀筋を躱し、跳び上がった。
クレイグも同じ方向へ跳ぶ。
腕を大きく引いたあと、正面に突き出す。
光と風の術技〈制覇嵐〉を発導した。
剣から鮮やかな閃光の竜巻が撃たれ、魔塊を貫く
しかしそれは幻影だった。
闇を素通りした嵐は空間を進み、天井の先ほどと同じ位置に衝突する。
刻まれていた壁の亀裂は深さを増した。
クレイグの後方に殺意をばら撒くサタナエルの気配。
差し伸びる手は人生の終焉を告げる死神の手だ。
醜い骨の指が肩に絡む。
魔術で侵されたクレイグは黒煙を噴き、全身が溶け始めた。
渇きと寒気に呑まれる護法士。
自らを破滅に導く呪いと、敵を倒さんとする気高き意志が体内で争う。
だが勇敢な抵抗は虚しく、一切の挙動が封じられていた。
遠のく意識。
消えかかった命の灯。
ピキッ・・・ガラララァァ
ァ!!・・・。
突然、天井の隅に生じていた亀裂が音を鳴らす。
クレイグの斬撃が衝突した部分だ。
岩壁は崩れ落ち、歪んだ穴が開く。
その開口部から入る太陽の日射しが、一直線にサタナエルの頭部を照らした。
『グオオオォォ!!・・・』
重い悲鳴が響き渡る。
悪霊はクレイグに掛けた指を離し、両手で己の顔を包む。
天日で焦がされた頭部に濃密な煙が発散している。
クレイグは失いかけた朦朧とする意識の中で、あの助言を思い出した。
〈サタナエルは光に脆いとの文献があります・・・〉
創世の時代より地上の外側から流れ来る熱き光明。
これが敵の最大の弱点であり、今こそ千載一遇の好機。
力をふり絞り、剣を垂直に掲げた。
太陽と刃が重なる。
直視できぬほど黄金に輝き、揺れ動く魔法力が滾る。
クレイグは剣を薙いだ。
長い光の太刀筋がサタナエルの胸部を断つ。
裂傷の軌跡は内部が明朗に煌めいた。
まるで枯れた大地に豪雨が降ったかのように、閃光が悪霊を潤してゆく。
サタナエルは手足に広がる光を払おうともがく。
両腕でジタバタと胴体を叩き、広間の上空で迷走する。
制御を失って墜落した。
瓦礫が散らばる床に膝まづき、左右の腕を真横に開く。
装束とマントが黒い煤に変じ、肉体は剥がれて欠け、痩せた骨身は忽ち白い砂粒と化す。
巌窟神殿に漂う遺灰・・・。
魔塊の邪気と影は消え、臨終の余韻が天井の開口部から吹きこむ温かい風に淘汰されていった・・・。
サタナエルが滅んだことで生屍人も主と同じく砂となり、ミオランデ王国の各都市を襲撃している不死身の怪物は全てが根絶した。
気力も体力も尽き果てたクレイグ。その場で倒れるように腰を下ろす。
レビエ、オスカー、ワズホが疲れた足取りで傍に歩み寄った
激闘が記憶を駆け巡る。
護法士達は無言のまま、仲間の死を弔うと共に、勝利の感嘆を胸中で大きく叫んだ・・・。
だが勝利など虚しい幻想。陽の届かぬ砂漠の深層に葬り去ってやる・・・』
サタナエルは微弱な音さえ起こさず、大理石の椅子から立ち上がった。
肩や胴体に漆黒の瘴気が溢れ出す。
全身を包み、直立する影に化けた。
影は空気と混ざって姿が消える。
クレイグの真後ろで掠れた声が囁く。
『貴様共は我が身に触れる事さえできぬだろう・・・』
サタナエルの姿が消えた途端、クレイグの背後に転移していた。
振り返ると剣を迅速に薙ぐ。
骸の塊体を断ち斬る間際、再び影になり、刃は空転した。
護法士達は警戒心を高める。
少しでも油断すれば命を奪われるような危機感。
『どうした・・・黙って何もせず、剣を構えているだけか?・・・』
オスカーの後方に骸卿が現れた。
体を廻しながら剣を強振する。
またしても刃は黒い幻影を扇ぐだけだった。
直後、斜め上空で影が滲む。
濃度を増してサタナエルの容姿に変わる。
傾けた右腕から白く濁った閃光を放ち、護法士はそれぞれ違う方向へ逃れた。
波動が床を爆破し、岩石の砕屑物が漂流する・・・。
レビエが〈太陽儀玉〉を、クレイグは〈闇払う清廉の威閃〉を撃つ。
灼熱の球体と雷の槍が押し寄せる。
左腕を翳すサタナエル。
【 骸形化 】
炎と雷は骸の手に触れると、争うことなく消失した。
「太陽儀玉が一瞬で無くなった・・・」
戸惑うレビエ。
隣でリュッセ、オスカー、ワズホが〈黎明の流星群〉を唱える。
天井に光の渦が集まり、夥しい量の流星が降り注ぐ。
サタナエルは再び左腕を掲げる。
無数の光弾が骸の手に触れ、輝きを失ってゆく。
迫撃や打撃は属性に関わらず、魔術で消化されてしまう・・・。
「黎明の流星群は光属性の術技。歴史学者のヤンゼン氏はサタナエルが光に脆いと話していたが・・・」
「おそらく我々の魔法力と比べ、奴の邪気が遥かに勝っているんだ・・・」
敵を見据えたままオスカーとワズホが言った。
呆然とする護法士にサタナエルが距離を詰める。
人型の影となり、剣を振ったリュッセの正面を幻がすり抜けた。
『勇ましい騎士よ。さぁ、我が肢体に一撃を加えてみろ・・・』
リュッセはすぐに半転すると、悪霊を討つべく接近した。
「待て!挑発に応じてはならない、迂闊に攻めかかるのは危険だ!」
クレイグが強く制止する。
しかしリュッセは剣を鋭く薙いで攻撃を繰り返す。
鬼気迫る魔法力が腕から剣に伝い、刃が柔らかな青に光る。
サタナエルは狙いすまして拳を真横に払った。
護法士の武器は木端微塵に破壊され、鋼の欠片が宙を踊る。
魔塊の手がリュッセの首筋を捕らえた。
「ぐああぁぁぁ!!・・・」
全身に噴煙が燻り、肌は濃い土色に染まる。
着用している衣装やマントが綻び、細かく剥がれた。
肉体は急激にミイラのような醜態に痩せ、まもなく骨以外の細胞が空間へ逸した・・・。
リュッセの骸骨が落下する。
バラァァァ・・・カラン、カラン・・・。
数十本の骨は乾いた音を響かせて周囲に散乱した。
悪霊は身を屈め、頭蓋骨を片手で掬い上げる。
四人の護法士に見せつけた。
『戦いとは死の宴。恐怖と抱き合い、狂った乱舞に陶酔する。その戯れの果てには破滅が待つのみ・・・』
サタナエルは頭蓋骨を白い砂に変容させ、まるで亡者の魂を潰すように指を閉じる。
白い砂が指の間から散った・・・。
護法士達は仲間の壮絶な死に動揺していた。
今までよりも剣を強く握り締めるクレイグ。
「オスカー、ワズホ、レビエ。我らが個々に攻撃しては、あの悪霊を滅ぼせない。
魔法力を私の剣に集めてくれ。より強大な術技を奴に撃つ!」
リュッセの体が消失する凄惨な場面が、三人の脳内を独占していた。
だがクレイグの芯の通った声を聞いて、戦意と冷静さを取り戻す。
三つの手がクレイグの剣を囲み、魔法力で満ちた波が流れる。
刀身が眩く輝いた。
サタナエルは次の標的を定め、再び護法士に攻め込む。
クレイグが剣を振る。
青白い光の斬撃が水平に自転しながら敵へ向かって飛び、サタナエルは掻き消そうと左手を伸ばす。
斬撃の只ならぬ威力を察知した。
すでに回避できる間合いではなく、光の刃が骸の胴体を襲う。
爆発が起き、目を焦がすほどの閃きで広間が照らされる。
魔塊を滅ぼした・・・と安堵するのは尚早。
床に低い姿勢で腰を落とすサタナエル。
徐に立ち上がり、激昂した形相で護法士を睨む。
左腕は少なからず崩壊しているが致命傷とまでは至っていない。
クレイグの斬撃は、ぶつかる寸前に弾かれていたのだ。
光の刃が後方へ飛び、天井付近に当たったのだろう、大きな切れ目と深い皹が生じている。
クレイグが持つ光芒の剣は魔法力が劇的に向上していたものの、悪霊を灰塵に変え、恐怖の影を末梢することは叶わぬようだ。
「全員の力を併せ、術技の威力を高めても、体表を些か汚しただけか・・・」
クレイグが悔しげに語る。
サタナエルは迅速に疾走してオスカーの首元を掴んだ。
骸の手に捕らえられた体が喘ぎ、宙に浮く。
「ぐああぁぁぁ!・・・」
レビエとワズホは仲間を救おうと走る。
サタナエルの右腕から白濁した波動が射撃され、二人を襲った。
レビエ達に敵意が注がれた隙に、オスカーは首元に絡んだ指を強引に解く。
悪霊が獲物を逃がすまいと追う。
その時、クレイグが敵の側面から剣を薙いだ。
硬い岩盤を打ちつけたような異音。
サタナエルの腕と剣が交わる。
今度こそ多大なダメージを与えたと期待したが、逆にクレイグは遠く撥ね返され、床を横切って転倒した。
即座に姿勢を戻す。
サタナエルの淀んだ身柄が空気と混ざり合う・・・。
「また消えた・・・何処に現れるか、見当がつかない」
しきりに顔を左右に振るレビエが本音を呟く。
闇と沈黙が支配した戦場では、どれほど鍛えた精神力でさえ、僅かな恐怖が心に生ずる。
護法士も例外ではなかった。
全員がサタナエルの行方を見つけようと捜索している。
だが視覚や聴覚では敵の動向を把握するのは難しい。
クレイが目を閉じた。
極めて微細な糸の末端を探るように闇の気配の痕跡を辿った。
長く尾を引いた影が広間の空中を八の字に泳いでいる。
しばらく浮かんだままの影が急降下。
レビエの背後で闇が沸き、悪霊に輪郭を変える。
クレイグは敵の奇襲が仲間を害する前にサタナエルとの距離を縮めた。
煌めく剣を振り抜く。
骸卿は太刀筋を躱し、跳び上がった。
クレイグも同じ方向へ跳ぶ。
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しかしそれは幻影だった。
闇を素通りした嵐は空間を進み、天井の先ほどと同じ位置に衝突する。
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自らを破滅に導く呪いと、敵を倒さんとする気高き意志が体内で争う。
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『グオオオォォ!!・・・』
重い悲鳴が響き渡る。
悪霊はクレイグに掛けた指を離し、両手で己の顔を包む。
天日で焦がされた頭部に濃密な煙が発散している。
クレイグは失いかけた朦朧とする意識の中で、あの助言を思い出した。
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これが敵の最大の弱点であり、今こそ千載一遇の好機。
力をふり絞り、剣を垂直に掲げた。
太陽と刃が重なる。
直視できぬほど黄金に輝き、揺れ動く魔法力が滾る。
クレイグは剣を薙いだ。
長い光の太刀筋がサタナエルの胸部を断つ。
裂傷の軌跡は内部が明朗に煌めいた。
まるで枯れた大地に豪雨が降ったかのように、閃光が悪霊を潤してゆく。
サタナエルは手足に広がる光を払おうともがく。
両腕でジタバタと胴体を叩き、広間の上空で迷走する。
制御を失って墜落した。
瓦礫が散らばる床に膝まづき、左右の腕を真横に開く。
装束とマントが黒い煤に変じ、肉体は剥がれて欠け、痩せた骨身は忽ち白い砂粒と化す。
巌窟神殿に漂う遺灰・・・。
魔塊の邪気と影は消え、臨終の余韻が天井の開口部から吹きこむ温かい風に淘汰されていった・・・。
サタナエルが滅んだことで生屍人も主と同じく砂となり、ミオランデ王国の各都市を襲撃している不死身の怪物は全てが根絶した。
気力も体力も尽き果てたクレイグ。その場で倒れるように腰を下ろす。
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