DEAD HEAT ~破魔の護法士~

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放たれし災

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『グオオオォォ!!・・・』
 
 角土竜つのもぐらいきどおる。
 獲物が抵抗したからだ。

 おびただしい数の触手が、銃の撃鉄げきてつを引くように真後ろへ移動する・・・。

 そして目にも止まらぬ速さで伸ばす。

 ゴブリンの肩や腰に巻き付き、口まで手繰たぐり寄せてゆく。丸呑まるのみにするのだ。

 鋭い牙が規律なく前後に揺れ、よだれを垂らして美味しい御馳走ごちそうを待ち構えていた。

 獲物が口に入る間際、体に絡む触手をキヨヅキの短剣が斬りてた。

 解放されたゴブリンは触手の欠片をともない、草原に転がる。

 またしても獲物を取り逃がした角土竜つのもぐらに、エマが〈戒めの棘雷レイブロス〉を放つ。
 雷の強烈な刺流しりゅう

 怪物は熱さと衝撃で悲鳴を上げ、後ろへ仰け反る。

 躍動していた触手が地面に伏し、角土竜は無意識の状態でゆっくりと巣穴に沈んでいった・・・。
 
 ゴブリンの一体が武器を置いて護法士に近づく。
 身ぶりを交え、覚束無おぼつかない言葉で喋る。

「角土竜、倒した、同族、助けた・・・。お前達、わし等、友?」

「安心してください。私達は皆さんの敵ではありません。
 魔塊がいる場所に向かって、森の中を行進しています」

 セロナは自分の言葉を信じてもらおうと、できるだけ分かりやすく丁寧に伝えた。
 
 その思いが通じたらしく、他のゴブリン達も武器を下ろす。

「マカイ?・・・恐ろしい、あの木?あれ、ジュガラ言う」

「人間、ジュガラ倒すか?」
 隣にいるゴブリンが聞く。

「ああ。そのために此処ここへ来た」
 ティルゲイルは語気を強めて言った。

 小柄な魔物達は、しばらく低い声で話し合ったあと仮面を外す。
 全員が草地に屈み、頭を下げた。

 ジュガラと戦う勇敢な護法士への敬意だ。

「巨大な木、突然、生えた・・・。虫、動物、怪物なった。怪物来る、わし等、争う・・・」

「同族、たくさん殺された・・・。敵、凶暴、わし等、負ける」

「そうでしたか・・・では魔塊の居所いどころを知っているのですね?」
 ヘンドリーが聞く。

「案内する。人間、わし等、追う。こっち」

 ゴブリンの集団はきびすを返し、森の通り慣れた道をすいすいと進んでいった。
 護法士達も案内人の後ろに続く。

「本当に彼等を信用していいのでしょうか?大人しい性格のようですがゴブリンも魔物です・・・」

「危険はないでしょう。感情の抑揚よくようは低下しており、私達への敵意や疑心は消えています」
 セロナがストウィスに答えた。

 目的を共有する人間と魔物の稀有けうな同盟は、倒木や岩石を避けて歩き、透明に澄んだ池に架かる橋を渡った。

 護法士の緊張感を甘く香る花々が癒す。
 ゴブリンは時折、木の実や果実を枝からもぎ取り、腰の袋に入れた。

 雑草が生い茂る蛇行した小道を抜けると、目の前に木で作られた低い門が見えた。

 上部に虎と牛をあわせたような形の石像が飾られ、顔の部分に悪いものを睨みつける鋭い目。
 魔除けの置物だろうか。

 門を通過する。
 脇道の畑に小麦やタマネギ、トマトなどの野菜が栽培され、隣の土地では四方を囲んだ柵の中で十羽ほどの鶏が、せわしなく走ったり餌をついばんだりしている。

 畑の先に洞窟の入口があった。

 奥に進むと歪な岩の階段が地下の広い空間まで伸び、側壁に掘られた数ヵ所の穴は食糧庫や台所、衣服や武器を作る工房などに繋がる。

「ここ、私ら家。ずっと昔、先祖作る」

「穴、いろいろ土地、行く。ジュガラある、こっち」
 壁の穴から大地の下層へ降りてゆく。

 階段を下った場所に清らかな地下水脈の川が流れていた。

 岸に木製の小舟が二隻。ゴブリン達が協力して舟を着水させた。

 船頭役のゴブリンとセロナ、ヘンドリー、ストウィスが乗る。
 もう一隻にキヨヅキ、エマ、ティルゲイルが乗った。

 ゴブリンは火打ち石を削いで火花をランプの油に注ぐ。

 灯した明かりを舳先へさきに取り付け、乗船者達がを漕ぎ始めた。

 真っ直ぐな川が二隻の舟を運び、そのあと小さく曲がる。

 次第に川幅は狭くなり、船体が岩壁に何度も当たった。護法士は手を伸ばして壁と舟の距離を整える。

 狭い水路を過ぎた先で川が三つに分かれていた。
 ゴブリンはを右側に漕ぐ。

 流れが蛇行する難所を越え、岩壁が大きく窪んだ岸に接岸した。

 一団は舟から降りて、岩場の奥の地下道を通る。
 分岐した道を左へ進み、隅まで歩くと行き止まりだった。

 真上の空洞から太陽の薄い木漏れ日が差し込んでいる。

 壁に掛けられた縄梯子なわはしごをゴブリンが軽快に昇ってゆく。
 護法士達は風の術技〈飛空ひくう〉で浮かび、垂直のトンネルを出た。

 
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