DEAD HEAT ~破魔の護法士~

デジタル・ピテクス

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破魔の護法士

存亡

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 コルノス荒野で多発する爆煙と軋轢あつれき

 大地は広くえぐり取られ、陥没した中心からよどんだ砂塵の柱が立つ。

 うずくまるセプトゥー。
 桃色の泡に変わり、濃密な邪気を蒸かせている。
 その眼前でブラッドモアが片腕を伸ばした。

 セプトゥーは溶けた雪だるまのように蒸発を始め、ドロドロと塊体かいたいが縮む。

 絶え間なく排出される邪気。
 ブラッドモアは掌で奪い、両眼の明度が増す。
 背後を向いた。

 そこには国境の関所を守るロハリネの防衛部隊。
 ブラッドモアが空へ浮かび、腕を掲げる。

【 暗黒の満月ダーク・フルムーン 】
 体中から細かい水滴に似た無数の邪気がにじみ、巨大な魔球に成る。 

 ブラッドモアが暗黒の満月を振り落した。

 護法士達は将閤しょうこうイサリヤの号令と同時に〈防御障壁〉を発導させて、光の盾が耐えしのぐ。

 だが少しずつ壁は崩れた。
 黒い球体の推進力を抑えられず、輝く破片が空間に舞った。

 今の状態では障壁は崩壊する。そして全員が闇にまれてしまう・・・。
 何処どこかへ逃れようとも不可能だ。

将閤しょうこう!防ぎきれません。強度は限界まで達しています!・・・」
 護法士が叫ぶ。

 ゴオオオォォ!!・・・
 天空からずる炎。
 闇の満月を貫く。

 内部で一気に弾け、残滓ざんしと黒煙は荒野の冷ややかな風にかれていった。

 魔術を消滅させた人物が防衛部隊を背にして立つ。

 破魔はまの護法士アーツだ。

 全身でおこ金色こんじき陽炎かげろうが昇る。

 イサリヤは謎の使者が誰なのか分からなかった。
 しかし絶大な魔法力を有していると明確に感じた。

 ブラッドモアは新たな護法士の存在を無視するように、または敵が誰であろうと滅ぼすのみとうように、剛健な右手をかざす。

 指の間に三本の長い鉤爪かぎづめが生えた。

 腕を引いたあと強く振る。
 淡い紫紺の鉤爪から半円の邪気が撃たれ、地面と兵士を激しく斬りつけた。

 斬撃で負傷した数十人が荒れ地に横たわっている・・・。

 容赦なきブラッドモアの魔術は続く。

【 地獄から湛える死滅の滝ヘル・ザ・フォール 】
 人々の足下に幾つもの円い影。
 
 止めどない轟音をともない、濁った漆黒の滝が噴く。

「退避せよ!急いで荒野の隅まで移動するんだ!・・・」 
 イサリヤが告げる。

 防衛部隊は手負いの仲間を介助して、無慈悲な集中攻撃から逃れた。

 アーツが矢面やおもてに立ち、雷撃をふるう。

【 神将しんしょう怒号どごう 】
 ブラッドモアは諸手もろてで雷を横に払い、護法士へ突き進む。

 アーツも同じく前進する。

 一蹴いっしゅうされた魔塊。
 焦土しょうどに転んだが姿勢を直し、右腕を薙ぐ。

 鉤爪かぎづめは拳から離れて自転しながら飛ぶ。

 アーツの体が炎で揺らめき、瞬く間に消えた。
 爪は通り抜け、奥の岩山を切り分けて大破した。

 魔塊の背後で炎が燃え、アーツに変貌する。固く握った拳を打つ。

 ブラッドモアが逆襲しようとも、拳骨の鉄槌てっついは護法士の残像を撫でることしかできなかった。

 アーツは魔塊の背中に回り、二枚の翼を掴む。
 後ろへ放り投げた。

 地面に落ちて遠く退き、削られた土砂の粉塵が荒野を汚す・・・。

 ブラッドモアは即座に立ち、復讐の邪光じゃこうを射る。

 アーツは〈獅子武炎撃ししぶえんげき〉で対抗した。

 炎が闇を喰らい、魔塊の上半身があぶられ、紅く色づいた怪物は火を拭う。

 ブラッドモアが鬼気迫る態度で執拗に攻め続けた。
 破魔の護法士は幾度も弾き返す。

「あれは何者なんだ?・・・。魔塊と対等に闘っている・・・」
 荒野の隅でイサリヤが呟く。
 
 ブラッドモアは挙動を止めた。

 胴体や肩が小刻みに震え、透明な腹部の体液がグツグツと音を響かせて沸いた。
 まるで沸騰しているかのようだ。


『ガアアアアア!!・・・』
 威声と共に鼓動が増す。

 外殻はこわばり、関節と腹部が七色の模様に変わった。急上昇する魔力。

 肢体から生じた黒いけむりが大量に空へ舞う。

 真上の一帯を包む雲は闇で侵食された。
 暗雲が灰色の綿を吐き、荒野の奥まで退いた防衛部隊に降る。

 体に着くと衣服や鋼の鎧が泡を発して朽ち果てた。

「何だ、これは?うわああぁぁ!溶けていく!・・・」
「腕に付いた!ぐああぁ!感覚が・・・」
「避けろ!避けるんだ!・・・」

「護法士総員、直ちに防御障壁を展開せよ!」
 イサリヤの指示が実行された。

 部隊の全方位で煌めく天蓋ドームは、死の降灰を無害化して内側にいる兵士を守った・・・。
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