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23話 アストラ視点
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崩壊したディグランス王城。
その中でも辛うじて形を保てた部屋で、王太子アストラは一人、頭を抱えていた。
「くそっ。状況が悪すぎる! いったい何から手を付けたら良いんだ!」
先の地震でディグランス王国王都は壊滅的被害を受けた。
大地が裂け、あらゆる建物が倒壊し、ついに王城までが破壊された。
不幸中の幸いと言うべきか、震源地が海ではなかったため水害こそなかったものの、火災なども多数発生し多くの人々が命を落とした。
当然ながら商売などやっている余裕があるはずもなく、王都の経済はほぼ完全にストップ。
民は食料と物資の調達が困難な状況に追い込まれている。
さらに、
「ぐ……くそ、まだ痛むな」
アストラ自身も地震による王城崩壊に巻き込まれた結果、片腕を失ってしまった。
本来ならば彼も安静にしていなければならないのだが、そうもいっていられない状況になってしまったため、魔法による治療を受けながらも強引に机に向かっている。
と言うのも、本来ならばこの異常事態の対応策を指示すべき人間――父たるディグランス王国現国王が命を落としてしまったため、アストラが王族のトップとして行動しなければならなくなったのだ。
その上地震発生時に王城で重要な会議をしていた所謂上層部と呼ばれる高位の貴族も多くが亡くなってしまい、現在指揮系統は乱れに乱れ、半ばパニックに陥っている。
出来ることなら自分一人だけでも遠くの国に避難したい。
そんな衝動に駆られながらも、必死にこの事態をどう対処するかについて考えていると、不意にドアがノックされた。
「騎士団か。入れ!」
「はっ。失礼いたします」
アストラが許可を出すと、ドアが開いて三人の騎士が中へと入ってきた。
彼らはアストラ直属の部下であり、今回の地震による被害の確認と情報収集を任せていた。
「報告しろ」
「はい。まずは本件における被害状況ですが、死者は現在分かっているだけでも1000人を軽く超え、行方不明者も未だ多数存在します。現在騎士団が救出作業に当たっておりますが、人手が足りないと言わざるを得ません」
「各地に派遣している騎士も可能な限り王都に集めて対応に当たれ。それでも足りない場合は動ける国民を動員して騎士団の指示のもと救出作業に当たらせろ。反対する者がいた場合、私の名を出して命令してもかまわん。ただし国民はこの手の作業において素人な者が多い。危険な作業は可能な限り騎士にやらせるように」
「承知いたしました。すぐに対応に当たります」
この際使える人間は誰でも使う。
騎士だけで足りないのであれば国民にも協力してもらうしかない。
それでもなお人手不足になるのは目に見えているので、アストラは友好関係のある他国にも救援を要請している。
「次だ」
「はっ。続いて医療現場について報告致します。現在王立病院を始めとした各病院及び個人の回復術師の協力も得つつ怪我をした国民の治療に当たっておりますが、対応が間に合っておりません。その上いち早く治療を要求する者とその家族が病院に押しかけ、暴動が起きかけています。特に貴族の方々が自らを優先するよう強く主張しておりまして……」
「ちっ、こんな時に平民も貴族も関係ないだろうが……仕方ない。重症者最優先で比較的軽傷の者は強引に追い出せ。避難所の他に大人数を収容できそうな建物はいくつか確保してある。そいつらは一時的にそこへ集め、応急処置を行わせろ」
「承知いたしました」
「それから王城に貯蔵してある各種ポーションと魔導具を各病院へ届けろ。宝物庫を開けても構わん。回復術師たちには悪いが、無理をさせてでも治療に当たらせてくれ」
回復術師たちには魔力を回復させる効果のあるマジックポーションを飲ませて一人でも多くの国民の治療に当たってもらう。
また、ディグランス王家が所有している魔導具の中には集団を一気に深い眠りに陥らせるものや持っているだけで自己治癒能力を高めるような秘宝もある。
こうなってしまってはそれらも駆使して事の対応に当たらせる必要性があるだろう。
王族貴族の権威を何よりも大事にするアストラの父、亡きディグランス国王だったらその判断はできなかったかもしれない。
罰当たりではあるが、上層部を含めて自身の邪魔をしてくる人間がいないのは返って好都合かもしれないと密かに思った。
「次!」
「はっ。食糧問題についてご報告いたします! 現在避難所などに蓄えられた非常食を国民に配っておりますが、その数は十分とは言えません。地震が多発する我が国では国民各自にも非常時の備えをすることを推奨しておりましたが、残念ながらそれを実行している者は少なく、家が破壊されて取りにいけない者もおり……」
「王家が所有する食料を可能な限り国民に回せ。我ら王家の食料も必要最低限で良い。そのうち強引に他者から食料を奪おうとする者も現れるだろうが、そのような者は即刻牢へぶち込むよう伝えておけ」
「承知いたしました。また、食糧・医療不足におけるストレスと度重なる余震で国民の不安は頂点に達しております。アストラ殿下から国民へのお言葉をいただければ国民の士気も高まるかと思いますが……」
「分かった。近いうちに行おう」
「ありがとうございます。それでは失礼いたします」
そう言って最後の騎士が部屋を後にした。
アストラは椅子にもたれかかり、深くため息を吐く。
様々な指示を出したが、アストラの仕事は勿論これだけではない。
次期国王として民を護るため、ゆっくりと休んでいる暇などないのだ。
「……少し、風に当たりに行くか」
包帯を巻かれた腕を軽く撫でてから、アストラはゆっくりと歩きだす。
片腕がないと上手くバランスが取れず歩きにくいな、嘆きながらも、失ったモノは仕方がないと自分に言い聞かせ歩く。
未だに王城は崩れて通れない道が多く、一人で歩くのは危険だったが、アストラは敢えて誰にも手伝わせようとはしなかった。
「……あぁ、なんと酷い光景だ」
高所から見下ろした王都の姿はまさに地獄の如し。
至る所から煙が上がり、各地から国民の悲鳴が聞こえてくるような気分だ。
そして激しい地割れによって生まれた巨大な崖。
果たしてディグランスが基の形に戻るのはいつになるのか。
あるいはもう、元のようには復興できないのではないか。
そんな絶望すら頭に浮かんでしまう自分が嫌になる。
「くくく。美しい光景ではないか。忌まわしき人間どもの怨嗟の声が心地よいぞ」
「誰だ!?」
突如として聞こえてきた謎の声。
慌ててその方角へ振り向くと、そこには小さな黒い球体が浮かんでいた。
「な、何だこれは……?」
「クク、我は今とても気分が良い。貴様の不敬を許そう。我はこの大地を統べる神――エメシュヴェレス。人間どもの王よ。貴様にその名を語ることを許す」
「大地を統べる神――エメシュヴェレスだと!?」
アストラは困惑する。
それはあの手記に書かれていた大地の神の名前と同じ。
普段の冷静な自分であれば、そんな戯言など信じるものかと無視していただろう。
しかし今のアストラには気づいてしまった。理解してしまった。
それが人知の及ばぬ存在であることを。
こうして隣に在るにも関わらず、触れることすら叶わない。
そんな異次元の存在であることを。
「まさか、この大地震を引き起こしたのも――」
「当然だ。最も、あんなものはただの序曲。我に完全なる力が戻りし時、この地は深い奈落へと堕ちることだろう」
ああ、なんてことだ。
初代の要の巫女は大地の神の怒りを鎮めたのではなく、強引に封印していたのか。
そして恐らく何らかの手段でランドロール家がこの地にある限り、その復活を阻止する仕掛けが施されていた。
しかしランドロール家がこの地を後にしてしまった瞬間、大地震及び大地の神の復活がなされてしまった。
これでは当時の愚王の行いとなんら変わらないではないか!
「だが、愚かなる人間に一つ希望を与えよう」
「希望、だと……?」
「巫女を差し出せ。そして我の前でその血を捧げよ」
「なっ――」
「さすればこの地の全てを破壊することは無いと約束しよう。我を封印せしあの忌まわしき巫女……感じる――感じるぞ! まだ巫女は生きている! 許し難し!」
黒い球体から激しい憎悪が漏れ出ているのを感じる。
今にも暴れだして全てを破壊してしまいそうだ。
「……貴様に時間をやろう。今日よりあと一月後までに巫女の首が用意できなければこの地を消す。我はかの地にて待つ。期待しているぞ、人間どもの王よ」
急に冷静になったかと思えば、そんな言葉を残して黒い球体は消えてしまった。
その瞬間、アストラの身を押し潰さんとしていた重圧が消え、体が軽くなる。
「リシア……私は……」
アストラは未だに受け入れがたい現実を飲み込みながら、かつての婚約者の顔を思い浮かべた。
その中でも辛うじて形を保てた部屋で、王太子アストラは一人、頭を抱えていた。
「くそっ。状況が悪すぎる! いったい何から手を付けたら良いんだ!」
先の地震でディグランス王国王都は壊滅的被害を受けた。
大地が裂け、あらゆる建物が倒壊し、ついに王城までが破壊された。
不幸中の幸いと言うべきか、震源地が海ではなかったため水害こそなかったものの、火災なども多数発生し多くの人々が命を落とした。
当然ながら商売などやっている余裕があるはずもなく、王都の経済はほぼ完全にストップ。
民は食料と物資の調達が困難な状況に追い込まれている。
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「ぐ……くそ、まだ痛むな」
アストラ自身も地震による王城崩壊に巻き込まれた結果、片腕を失ってしまった。
本来ならば彼も安静にしていなければならないのだが、そうもいっていられない状況になってしまったため、魔法による治療を受けながらも強引に机に向かっている。
と言うのも、本来ならばこの異常事態の対応策を指示すべき人間――父たるディグランス王国現国王が命を落としてしまったため、アストラが王族のトップとして行動しなければならなくなったのだ。
その上地震発生時に王城で重要な会議をしていた所謂上層部と呼ばれる高位の貴族も多くが亡くなってしまい、現在指揮系統は乱れに乱れ、半ばパニックに陥っている。
出来ることなら自分一人だけでも遠くの国に避難したい。
そんな衝動に駆られながらも、必死にこの事態をどう対処するかについて考えていると、不意にドアがノックされた。
「騎士団か。入れ!」
「はっ。失礼いたします」
アストラが許可を出すと、ドアが開いて三人の騎士が中へと入ってきた。
彼らはアストラ直属の部下であり、今回の地震による被害の確認と情報収集を任せていた。
「報告しろ」
「はい。まずは本件における被害状況ですが、死者は現在分かっているだけでも1000人を軽く超え、行方不明者も未だ多数存在します。現在騎士団が救出作業に当たっておりますが、人手が足りないと言わざるを得ません」
「各地に派遣している騎士も可能な限り王都に集めて対応に当たれ。それでも足りない場合は動ける国民を動員して騎士団の指示のもと救出作業に当たらせろ。反対する者がいた場合、私の名を出して命令してもかまわん。ただし国民はこの手の作業において素人な者が多い。危険な作業は可能な限り騎士にやらせるように」
「承知いたしました。すぐに対応に当たります」
この際使える人間は誰でも使う。
騎士だけで足りないのであれば国民にも協力してもらうしかない。
それでもなお人手不足になるのは目に見えているので、アストラは友好関係のある他国にも救援を要請している。
「次だ」
「はっ。続いて医療現場について報告致します。現在王立病院を始めとした各病院及び個人の回復術師の協力も得つつ怪我をした国民の治療に当たっておりますが、対応が間に合っておりません。その上いち早く治療を要求する者とその家族が病院に押しかけ、暴動が起きかけています。特に貴族の方々が自らを優先するよう強く主張しておりまして……」
「ちっ、こんな時に平民も貴族も関係ないだろうが……仕方ない。重症者最優先で比較的軽傷の者は強引に追い出せ。避難所の他に大人数を収容できそうな建物はいくつか確保してある。そいつらは一時的にそこへ集め、応急処置を行わせろ」
「承知いたしました」
「それから王城に貯蔵してある各種ポーションと魔導具を各病院へ届けろ。宝物庫を開けても構わん。回復術師たちには悪いが、無理をさせてでも治療に当たらせてくれ」
回復術師たちには魔力を回復させる効果のあるマジックポーションを飲ませて一人でも多くの国民の治療に当たってもらう。
また、ディグランス王家が所有している魔導具の中には集団を一気に深い眠りに陥らせるものや持っているだけで自己治癒能力を高めるような秘宝もある。
こうなってしまってはそれらも駆使して事の対応に当たらせる必要性があるだろう。
王族貴族の権威を何よりも大事にするアストラの父、亡きディグランス国王だったらその判断はできなかったかもしれない。
罰当たりではあるが、上層部を含めて自身の邪魔をしてくる人間がいないのは返って好都合かもしれないと密かに思った。
「次!」
「はっ。食糧問題についてご報告いたします! 現在避難所などに蓄えられた非常食を国民に配っておりますが、その数は十分とは言えません。地震が多発する我が国では国民各自にも非常時の備えをすることを推奨しておりましたが、残念ながらそれを実行している者は少なく、家が破壊されて取りにいけない者もおり……」
「王家が所有する食料を可能な限り国民に回せ。我ら王家の食料も必要最低限で良い。そのうち強引に他者から食料を奪おうとする者も現れるだろうが、そのような者は即刻牢へぶち込むよう伝えておけ」
「承知いたしました。また、食糧・医療不足におけるストレスと度重なる余震で国民の不安は頂点に達しております。アストラ殿下から国民へのお言葉をいただければ国民の士気も高まるかと思いますが……」
「分かった。近いうちに行おう」
「ありがとうございます。それでは失礼いたします」
そう言って最後の騎士が部屋を後にした。
アストラは椅子にもたれかかり、深くため息を吐く。
様々な指示を出したが、アストラの仕事は勿論これだけではない。
次期国王として民を護るため、ゆっくりと休んでいる暇などないのだ。
「……少し、風に当たりに行くか」
包帯を巻かれた腕を軽く撫でてから、アストラはゆっくりと歩きだす。
片腕がないと上手くバランスが取れず歩きにくいな、嘆きながらも、失ったモノは仕方がないと自分に言い聞かせ歩く。
未だに王城は崩れて通れない道が多く、一人で歩くのは危険だったが、アストラは敢えて誰にも手伝わせようとはしなかった。
「……あぁ、なんと酷い光景だ」
高所から見下ろした王都の姿はまさに地獄の如し。
至る所から煙が上がり、各地から国民の悲鳴が聞こえてくるような気分だ。
そして激しい地割れによって生まれた巨大な崖。
果たしてディグランスが基の形に戻るのはいつになるのか。
あるいはもう、元のようには復興できないのではないか。
そんな絶望すら頭に浮かんでしまう自分が嫌になる。
「くくく。美しい光景ではないか。忌まわしき人間どもの怨嗟の声が心地よいぞ」
「誰だ!?」
突如として聞こえてきた謎の声。
慌ててその方角へ振り向くと、そこには小さな黒い球体が浮かんでいた。
「な、何だこれは……?」
「クク、我は今とても気分が良い。貴様の不敬を許そう。我はこの大地を統べる神――エメシュヴェレス。人間どもの王よ。貴様にその名を語ることを許す」
「大地を統べる神――エメシュヴェレスだと!?」
アストラは困惑する。
それはあの手記に書かれていた大地の神の名前と同じ。
普段の冷静な自分であれば、そんな戯言など信じるものかと無視していただろう。
しかし今のアストラには気づいてしまった。理解してしまった。
それが人知の及ばぬ存在であることを。
こうして隣に在るにも関わらず、触れることすら叶わない。
そんな異次元の存在であることを。
「まさか、この大地震を引き起こしたのも――」
「当然だ。最も、あんなものはただの序曲。我に完全なる力が戻りし時、この地は深い奈落へと堕ちることだろう」
ああ、なんてことだ。
初代の要の巫女は大地の神の怒りを鎮めたのではなく、強引に封印していたのか。
そして恐らく何らかの手段でランドロール家がこの地にある限り、その復活を阻止する仕掛けが施されていた。
しかしランドロール家がこの地を後にしてしまった瞬間、大地震及び大地の神の復活がなされてしまった。
これでは当時の愚王の行いとなんら変わらないではないか!
「だが、愚かなる人間に一つ希望を与えよう」
「希望、だと……?」
「巫女を差し出せ。そして我の前でその血を捧げよ」
「なっ――」
「さすればこの地の全てを破壊することは無いと約束しよう。我を封印せしあの忌まわしき巫女……感じる――感じるぞ! まだ巫女は生きている! 許し難し!」
黒い球体から激しい憎悪が漏れ出ているのを感じる。
今にも暴れだして全てを破壊してしまいそうだ。
「……貴様に時間をやろう。今日よりあと一月後までに巫女の首が用意できなければこの地を消す。我はかの地にて待つ。期待しているぞ、人間どもの王よ」
急に冷静になったかと思えば、そんな言葉を残して黒い球体は消えてしまった。
その瞬間、アストラの身を押し潰さんとしていた重圧が消え、体が軽くなる。
「リシア……私は……」
アストラは未だに受け入れがたい現実を飲み込みながら、かつての婚約者の顔を思い浮かべた。
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