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第一章
第9話 閑話休題
しおりを挟むぼそっとエミリーに会いたいと言ったら、本当に会わせてくれるとは。バックグラウンドは知らなかったけれど、彼女とは本当に姉妹のように育ってきたらしい。
私は実家から城に戻る馬車の中で、さっきまでのことを思い出していた。
エミリーもエミリーで学校のことが気になって仕方なかったらしく、会った途端寝間着のまま、わあわあと泣き出した。
殿下が私のお世話係に彼女をつけようか、と提案してくれて、私は本当はそうしたかったけれど、その前にエミリーが「いいえ」と断った。
「きっと今後もお辛いことが沢山あるでしょう。けれど、私は旦那様や奥様と一緒で、フリージア様を送り出す場所でありたいのです。今のフリージア様には、帰るべき場所と、愛すべき殿下がいますから」
これは殿下と、私に釘を刺したことにもなる。
彼のもとでは、正しくは、あのお城では安心できないと逃げ帰ったようなものだからだ。殿下はもちろん、マチルダをはじめ御付きの人たち、それを雇っている国王様まで貶すことになる。
気を利かせて二人きりにしようとしていた殿下も、バツが悪そうにしながら同じ部屋でその話を聞いていた。
いきなり実家に帰ると言ったから、両親も二人とも驚いて待っていてくれた。こんな夜更けにも拘らず。
それを考えると、私は、フリージアは、なんだかんだ頑張っていけそうな気になったのだ。
うっすら空が明るくなっていて、ここは夜明けも早いのねと思うと同時に眠気が襲ってきた。
隣で眠っている殿下を起こさないように、反対側にもたれかかる。
ガンッ!
「……っ!」
そういえば、馬車ってものすごく揺れるんだった。
ぶつけた頭をさすっていると、眠っていたはずの殿下が笑ってこっちを見ている。彼は自分の肩をぽんぽん、と叩いて、「どうぞ」と言った。
「……」
「嫌ならかまいませんよ」
「いえ! お借りします!」
自分から彼にこうするのは初めてだわ、と思いながら、横にもたれかけた。
◇◆◇◆◇
翌日以降も、学校での私に対する評判はかなり悪くなっていった。ヴィオレッタに喧嘩を売って、買われ、そして負けたという噂はもう校内の誰もが知っているだろう。
殿下は気にすることないと言ってくれたが、さすがに彼の顔に泥を塗りまくってる現状はまずい。
「何かできないものかしら…」
数日前にオルハンたちが作ってくれた広報紙を眺める。ポラト家のお店はこの週末かなり繁盛したらしく、またいつでも協力してくれるとのことだった。
かと言ってこの前と同じ方法を貴族たちにとるわけにはいかない。この前は平民相手だからこそできたことだし(貴族は守銭奴が多いけれど、見た感じクーポンを使うにはまだプライドが邪魔している感じがする)、何より貴族は同じ商品を使うのを避けたがる。
彼らは量より質、それもとっておきの「貴方だけに」というものに価値を見出す。
しかし、何度もオルハンに協力を仰ぐのは違っている、と思った。彼に迷惑がかかるのはもちろんだが、なによりわたしには特に旨みがない。
ふと、ジェニたちがまとめた投票結果が目に入る。ヴィオレッタの投票理由には、彼女のビジュアルに関するものが多い。この世界にも当然モデルのような人はいて、ちょうどオルハンの店のフライヤーでもそうだった。
「……うーん。まあ、やってみましょうか」
まずはジェニたちの許可を取った。広報紙の右下でいいから、好きな記事を書かせてほしいと。彼はもちろんと快諾した。
次に、ターナーにカメラマンを依頼した。ネガとかの仕組みが全くわからないので、こういうものは知っている人に頼むに限る。
そして、残るはヴィオレッタだ。
「フナカセツカイショウ…」
初めて聞いた言葉というように彼女は復唱した。賄賂代わりのお菓子を彼女に手渡して、頷く。
「噂では私とヴィオレッタは仲が悪いの。その話を少しでも和らげられるかなと思ったんだけど…」
「ですが、この計画だと私のことだけが書かれていて、読んでいる人はわからないのではないですか?」
「そうね。それでいいのよ」
「?」
「私がこの記事を書いていると声高々に言ってしまっては、わざとらしすぎるもの。ヴィオレッタに関する記事を連載して、少し話題になった頃に匂わせるくらいでいいのよ」
「匂わせる…」
噂好きな人たちは、材料さえあれば好きに調理して勝手に食べてくれる。貴族はプライドが高いと考えている人が多いから、私がヴィオレッタの記事を書くなんて何か裏があるに違いないと注目も集まるだろう。
きっと数ヶ月単位で掛かりはするが、これもいずれ話題にならなくなっていく。時間がかかっても、噂を否定するには確実な方法だと思った。
「それで。受けてくれるかしら?」
「……ええと…」
ヴィオレッタは困惑している。当たり前だ。急に自分に関するコラム(写真付き)が載るなんて、戸惑って当然。しかも毎週だし。
「…やっぱり、困るわよね。ヴィオレッタに迷惑をかけちゃうし…」
いくら自分が困っているからと言って、ヴィオレッタにも負担をかけるのは流石にまずいか……。
「……あの、一つご提案なんですけど」
「なあに?」
「もし、私がこれを引き受けたら……フリージア様も私からのお願いを聞いてくださいますか?」
ヴィオレッタが胸に手を当ててこちらを見ている。
殿下とはとっとと別れろ、なのか。
この学校を辞めろ、とかだったらちょっと難しいけど。
そのお願いがなんなのか、本当ならばあらかじめ聞いておきたい。………だけど。
「ええ。もちろんよ!」
私は胸をドンと叩いた。ここは気前よく見せるべきだ。ヴィオレッタは目をキラキラさせ、胸の前で両手を握りしめて喜んでいる。
「本当ですか!」
今更ながら不安になってきた。めちゃくちゃお金を請求されたらどうしよう。でも、さすがに口約束では家に関わることなんて無理よね……。
「それでしたら、喜んでお受けしますわ。それでは殿下と婚約破棄していただいて──」
「わーー!?!?」
私は彼女の口を手で押さえた。周りをきょろきょろ見回す。ターナーたちのほかに、周りには誰もいない…はず。確認したところで彼女から手を離した。
ぷはっ、と息を吐いて、苦しい思いをさせたのか顔が真っ赤になっていた。
「ごめんなさい、大丈夫?」
「は、はい。…」
ヴィオレッタはやたらとうるうるした目でこちらを見る。いきなり口を塞ぐなんて暴漢まがいなことをしてしまったかもしれない。
「でも、不用意が過ぎるわよ。周りに記者がいたらどうするの? それに私は、…一応殿下の婚約者なんだから、この世界に不敬罪なんてあったら大変なことになるわよ!」
「ご、ごめんなさい…でも…」
ハラハラすると同時に、彼女はやっぱり段々と殿下に惹かれていってるのか、とショックだった。
シナリオ通りに進んで欲しいとは思っていたし、そうなるようにコンクールに立候補させたのも私なのに。
「フリージア様、そうじゃなくて…」
「フリージア様ーっ! 用意ができましたよー!」
「ありがとう! じゃあ、はい! これとこれを持って!」
「はあ、花…?」
「美少女の小道具って言ったら花じゃない?」
「そうなんでしょうか…」
ヴィオレッタは困惑しているが、きっとファンたちにはたまらないだろう。……殿下も含めて。一瞬浮かんだモヤモヤを振り切って、
「撮影を始めましょう!」
◇◆◇◆◇
まさか、1回目でこんなにも話題になるとは思わなかった。広報部がascaのおかげでその地位を取り戻しつつあるとは言っても、イベントが終わってからも固定客がついていたのはふたりの力量だろう。
その読者たちをきっかけに、販売を開始したその日の朝から、放課後になる頃にはもう用意していた部数が全て捌けてしまっていた。
「ターナー! ジェニ!」
結果的に売り上げに繋がったから、きっと二人は喜んでくれる。その顔を想像しながら扉を開けたものの、
「あ、フリージア様…」
「………」
予想とは反対に、彼らの表情は浮かないものだった。今日は珍しくオルハンもいて、だけど彼もいつもみたいに調子のいいことを言ってこない。
「?」
状況を理解できないまま、木の椅子を引いて座る。ジェニとターナーが何か目配せをして、きっと言いたいことがあるのだと悟った。
「記事、もしくは私のことで何か気になっているの?」
堪え性がないことはわかっている。そのために、いつも気になることをすぐに追える職についていたんだから。
私の言葉に、二人ははっと顔をあげた。おそらくオルハンは関係ない。二人を見る視線が呆れているようなものだったからだ。
きっと言いづらいことなんだろう。いつも嫌々という感じで訪れるオルハンがこの場にいるのも合点がいく。
「……私、もしかして広報部を辞めた方がいいのかしら?」
「あ……」
「……」
冗談っぽく言ってみたが、二人の顔は明るくなる気配すら見せない。仕方ないだろう。確かに、いい手があったと思って広報部に混ぜてもらっていたけれど、私の記憶しているシナリオにはそんなパートは存在しなかった。
フリージアが生きやすくなるために、何ができるか。そのために必死でやってきたけれど。
……最近、考えたこと全てが裏目に出ている気がするな。
立ち上がると、座ったままの二人の表情は、怯えているように見えた。当たり前か。二人は平民だし、私は形だけとはいえ時期国王の婚約者だ。機嫌を損ねたらどんな目に遭うかわからない。
もしかして、今までもずっとそうだったのかも。
私が提案することが通っていたのも、みんなが協力的だったのも、本当の私を受け入れてくれたわけではないんだな。
当たり前だと頭ではわかってるけど、どうしても納得がいかなかった。
今日ここにオルハンがいるのも、オルハンが私を連れてきたから、彼はそのことで何かしら責任を感じているかもしれない。
それなら、私はここで身を引くべきだ。それが最後のプライドというものだろう。我ながら、貴族たちと同じくらいにはプライドが高かったんだなと笑えてくる。
「いろいろ無理させていたのね。気づかずにごめんなさい。短い間だったけれど、すごく楽しかったわ。ありがとう」
言葉を止めてしまえば、抑えた感情が溢れてしまう気がした。だから三人の顔を見ずに、ぺこりと頭を下げて部室を後にする。
◇◇◇
渡り廊下にはまだ人もある程度残っていたから、走ったり、泣きながら歩くわけにはいかなかった。背筋をしゃんと伸ばして、声をかけられれば笑顔で微笑み返す。
お手洗いですら落ち着かなくて、どこも居場所がない。困ったな。
考えた結果、殿下と二人で授業を受ける、広めの教室に逃げ込んだ。
今日もゆっくりでいいと言った手前、迎えを急かせるわけにはいかない。一人になれる場所といったら、ここしか思い浮かばなかった。
「ははっ………悲し…」
一人で泣きながら、惨めな自分がおかしくて仕方ない。
フリージアはきっと、そのままの自分で、そのままの人生を歩んだ方が幸せだったのかもしれない。私なんかが入ったせいで、こんなことになるなんて。
──コツ、コツ。
ふと、誰かの足音が聞こえた。私は慌てて鞄を取り出し、自習しているフリをする。背後で扉が開いて、「いた」と呟くのが聞こえた。
「フリージア様」
「……」
追いかけてきたのか、もしくは伝えることが他にあるのかわからなかったが、ここに来たのはオルハンだった。
一人で泣くようなこんな場面でも、この物語は王子様を私にあてがってくれる気はないらしい。我ながらひどい話だわ、と観念して立ち上がる。
「どうしたの?」
彼は私の顔を見て目を見開いたが、すぐに膝をついて首をたれた。
「……フリージア様、…申し訳ございませんでした。私がフリージア様を広報部へ無理矢理連れて行ったのに」
「いいのよ。顔をあげて、オルハン。あなたのおかげですっごく楽しかったから」
「ジェニもターナーも、辞めることに対しては反対しております」
「何言ってるのよ……あんな、……」
初めて、あんなに怯えた顔をされた。
申し訳なかった。勝手に友達だと思っていたのに、そこには確かに上下があることを実感して。
「フリージア様…」
彼は立ち上がって、私を抱きしめようとした。一歩下がって、それを避ける。当たり前のことだけれど、彼はひどく傷ついたような顔をした。
オルハンなら抱きしめてくれると、そう思っていたけれど。
「また写真にでも撮られたら、殿下に迷惑がかかるの。オルハンにもよ。…だから、これ以上私に関わらないでほしいの」
「フリージア様は、私のことがお嫌いですか」
「なんでそんなに極端なの。みんな、みんな、広報部のことだって、大好きに決まってるじゃない……」
「フリージア?」
扉の外から、殿下の声がする。
今日は散々だ。もう帰ったと思っていたのに。どうすべきか思い浮かばないうちに扉が開き、殿下が部屋に入ってきた。
「!?」
そして同時に、オルハンは私を抱きしめる。予想外のことが重なると、こうも動けなくなってしまうんだな、ってぐらいに私はされるがままだった。
一瞬時が止まったように、静かな時間が訪れる。
「……これはどういうことだ?」
殿下の冷たい声でハッとする。
「…フリージア様が、広報部を辞めるとおっしゃるので。説得しているだけです」
「とてもそうは見えないが」
「オルハン! まずは放して…!」
「こんなにも泣いていらっしゃるのに?」
「大丈夫ですから!」
目が腫れている自覚はあるけど、涙は驚きで引っ込んでしまった。殿下は私たちに近寄ってきて、無理やり引き離したかと思うとオルハンを軽く突き飛ばした。オルハンは一歩後ろに下がったが、私をじっと見ている。
その視線を遮るように殿下は私と彼の間に入った。
「言っただろう。誤解されるような行動は慎めと」
彼の方を向いているが、きっと私にも言っている。
「泣いている好きな人を放っておけるわけがありません。殿下にはそんな勇気はないでしょうが」
私は耳を疑ったが、まずはこの状況をどうにかしないといけない。オルハンは言葉を続ける。
「写真に撮られるのがなんですか。噂に振り回されて、彼女は傷ついています。そもそも、殿下があの女性と噂されたことが始まりではありませんか?」
「噂をいちいち相手にするわけにはいかないだろう。僕にだって立場がある」
「…………それでは、フリージア様を、愛しておられないという話は本当ですか?」
「オルハン!」
さすがにこれ以上傷つけられたら、もう誰も信じられなくなりそうだ。私は呼吸を整えて、殿下の背後から彼の前に躍り出た。
「言ったわよね。あなたにも迷惑がかかるって」
「ですが」
「確かに、いろんな噂があるわ。でも、…殿下には、王家の皆様にはすごく良くしていただいているの。これ以上、このことについて失礼を重ねないで」
「…フリージア様」
どうして、オルハンがそんな傷ついたような顔をするの。
「友達でしょ。私の言うことを信じて」
オルハンはまだ何か言いたそうだったが、とうとう観念して、わかりましたと頷いた。彼は私を慰めてくれたから(方法が良くなかったけど)、心なしか尻尾の下がった犬に見えて悪いことをした気になる。
「ごめんね。私のせいで巻き込んでしまって。…殿下も、申し訳ございませんでした」
私は殿下に頭を下げた。彼はすぐに顔を上げるよう言う。
「帰ろう。迎えが来ている」
「…わかりました」
◇◆◇◆◇
私はお城の長い廊下を、これから処刑されるかのような気持ちで歩いていた。そもそも先に帰ったと思った殿下が私を探していたのは、殿下の伯母であるお妃様に呼び出されたからだ。
どうやら、数日前私が黙って実家に帰ったことがバレたらしい。
逃げ出したい思いをグッとこらえて、隣を歩く殿下を窺い見る。手にグッと力が入っていて、彼も少なからず緊張しているようだ。
夕食までまだ時間があるから、お茶でもということらしい。バルコニーにテーブルとお茶がセッティングされてあって、アンヌ王妃はそこに一人で座っていた。私たちの姿が見えると、雰囲気そのままの柔らかい笑みを浮かべる。
「ノワール、フリージア。どうぞこちらに座って」
「あ…ありがとうございます」
私たちが席に座ると、お付きの人たちが紅茶を注いでくれる。
「学校お疲れさま。フリージアは部活に入ったと聞いたけれど…」
「ええ。広報部で…続けられるかは分かりませんが」
「そうかしら。何かに挑戦することはいいことだわ」
「ありがとうございます」
どうぞ、とすすめられて、殿下と一緒に紅茶を飲む。美味しいですと答えると、口元だけゆるやかに弧を描いた。カチャリ、と静かにソーサーへカップを置き、それを合図に彼女は喋り出す。
「3日前かしら。フリージアが公爵家に帰省したと聞いたけれど。それも深夜に」
余計な前置きはいらない。王よりも冷淡と言われる王妃アンヌは、その柔らかな物腰ゆえに舐めてかかってきた相手をバッサリと斬り捨てる。
固まる私より先に、殿下が答えた。
「伯母上。行こうと言ったのは私です」
「…………そうなの?」
「ええ。フリージアがascaでの結果を気に病み、泣いているのが気がかりで。彼女を愛している人がこんなにもいると言うことを、すぐにでも伝えねばならないと思ったのです」
「……」
王妃は私を大きな瞳で見つめる。私は視線を落としてゆっくり頷いた。
「……ascaの結果は、私にとって辛いものでした。両陛下が揃って優勝されたことは知っていましたし、殿下もそれを目指すと仰っていたので」
膝の上で握った手に、殿下の手が重なる。彼はつくづく、こういうポーズが上手いなと思わされる。
「ですが、殿下がその提案をして、すぐに動いてくれたことを何よりも嬉しく思います。殿下は私のことをすごく大切にしてくださっていますし」
「当然です。妻となる女性ですから」
彼は私に微笑みかける。私もぎこちなくそれに返し て、王妃の様子を見た。まったくかさの減っていないカップに、彼女は何度目かの口をつける。
「泣いているのはどうやって知ったの?」
かかった、と殿下は内心ほくそ笑んでいるだろう。
「夜、彼女の部屋を訪れた時に知りました」
「まあ」
王妃は私に視線を向けたが、どういう表情をしていいかわからず殿下を見る。それが照れ隠しに映ったらしい。
「ええ、ええ。それは結構なことね」
はじめて彼女は上機嫌な素振りを見せた。はじめの頃、私の寝室に彼を送り込んだのは彼女だったからだ。女性を家に縛り付けるにはそれが1番いいと考えているのだろう。実際、身重ではすぐに動き回れない。
「ascaの件は、仕方なかったわ。学園長に聞いたけれど、投票操作は難しいのね」
権力にものを言わせようとしてた。
「明日は、泉に行く日よね?」
「…ええ、そうですが」
「それを最後に、あの平民の娘とは同じ活動をしないように言っておいたわよ」
「!」
ものを言わせてた。思いっきり。
「何やらよくない噂があるみたいだったから、心配で。ねえ?」
「…さ、さあ。何のことか…」
「分かりませんね…」
王妃はまたカップに口をつけた。むしろカップから紅茶が湧いてる?ってぐらい、本当に減らないな。
「ある意味息ぴったりということかしら? 愛人を迎えるのはいいけれど、順番を決して間違えないことね」
殿下は困ったように笑ってごまかしている。誤魔化せてるのか? それ。
そのまま国王の待つ部屋に合流して夕食を一緒にとったけど、もう正直言って味がしなかった。
殿下は王妃に言われた言葉がショックだったのか、ほとんど喋っていなかった。
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