若き二つ名ハンターへの高額依頼は学院生活!?

狐隠リオ

文字の大きさ
44 / 45

エピローグⅡ/Ⅲ

しおりを挟む
「あら? ユニちゃんならもっと怒ると思いましたけど、もしかして何かありましたか?」

 ユニの反応を意外そうにした後、見覚えのある冷たい眼差しを向けてくるソラ。
 こいつら本当に似たもの姉妹だな。

「何もないって」
「あらそうかしら? あたしは十分あったと思うわよ?」
「そうか?」
「命懸けで助けてくれたでしょ?」
「それはお前だろ?」
「あんたもよ。あんたがいなかったらあたしは今頃死んでるわ。あんたと一緒にね」
「……この話、終わり」
「あらあらー? まさか照れてるとか? ねえねえこっち見なさいよ」

 ベッドに腰掛ける俺の隣に座り、ニヤニヤとした笑みを浮かべるユニ。……うざい。

「「……」」

 そんな俺たちのやり取りに目を点にしながら見ていたカユとソラは、一度顔を見合わせるとまた俺たちへと視線を戻した。
 嫌な予感がする。二人が何かを、確実に面倒な事になりそうな発言をする前に俺から声をかけよう。

「カユとソラ。お前らに確認したい事があるんだが良いか?」
「あ、ああ私は構わないが、なんだ?」
「グラに会った」
「「——っ!?」」

 あまりにも強い動揺を見せる二人。
 その反応は……やっぱりって感じだな。どうやらユニはその話をまだしてなかったみたいだな。
 これは確認が必要か。

「ユニ、どこまで話してる?」
「……襲われて退けた。誰とかはまだよ」
「ま、待ってユニちゃん! それではまるで、まるでっ!」
「その通りだ。俺たちを襲ったのはグラだ。お前らが死んでるだろうって言ってたグラだ」
「そん、な……」

 明らかに取り乱しているソラは、だいぶショックを受けているみたいだ。
 俺たちがグラに襲われ、しかもその戦闘によって俺とユニの二人が危うく死ぬところだったっと知ったんだからな。

 ただ、一応これは言っておいた方が良いかもしれないな。

「ちなみにだけどユニが死に掛けたのは事故だぞ。グラは逃げろって叫んでたし、始終ユニの身を、それとお前ら二人の身を案じてたからな」
「えっ? ……そう、なんですか?」
「本当よソラお姉様。グラお姉様はあたしたちを救う事ばかり考えていたわ」
「救う? どういう事だ」
「ああ、まずはこっちが仕入れた情報からだな」

 俺とユニは話した。
 グラと戦った事、竜化鬼、天使の力、そして一ヶ月後に起きる[アベル]による侵攻の事を。

「……そうか。あれは竜化鬼というのか」

 俺たちの話を聞き終え、口元に指を当てて考え込むカユ。ソラは何も言わずに俯いていた。

「へえ、最初に反応するのがそこなんだな」
「ジョンス?」

 不思議そうな顔をしているユニ。どうやら気が付いていないみたいだ。
 明らかにカユの言葉は不自然なのにな。

「もしも今の話をユニが初めて聞いたとして、最初に反応するのはどこだ?」
「えっ? それはお姉様が生きていた事に驚いて……それから、えーと……」
「まあ、知らないもしもなんて難しいか。それじゃあ今の話の中で一番拒絶したい事、知りたくない、認めたくない事は?」
「それは……あっ」

 どうやら気が付いたみたいだな。とんでもなくソラを凝視するユニ。

「ユ、ユニちゃん? あの、その、どうしたんです?」
「知ってたって事?」
「えっ?」
「……なるほど、そういう事か」

 疑問符を浮かべるソラ。カユはそっと目を伏せていた。

「カユちゃん? どういう事ですか?」
「天使だ、ソラ」
「——っ!?」

 カユの一言に目を見開くソラ。
 グラが天使になったと知った時、ユニは酷く取り乱していた。彼女が天使になったというその事実に強い拒絶反応を見せていた。
 カユがどんな反応をするのかはわからなかったけど、ユニがそうだったようにソラも取り乱すと思っていた。しかし実際はどうだ? グラが天使の力を使った事を聞いても取り乱す事はなかった。

 つまり知っていたんだ。ソラは既に知っていた。グラが天使だと。

「次はそっちの番だぞ。生徒会が竜化鬼と遭遇した日。本当は何があったんだ?」
「その話は私がしよう。ソラには酷だろう」
「カユちゃん……ごめんなさい、お願いします」

 ソラを案じるように彼女の手を一度握り締めた後、カユは話し出した。

「マリン先輩については本当の事だ。しかしその先、グラ先輩が殿を務めたというのは嘘だ」
「カユさん、どうしてそんな嘘を?」
「ユニに知られたくなかったのだ。グラ先輩が天使の手を取った事を」
「天使の手を? それって……」

 疑問符を浮かべるユニに、カユは続ける。

「竜化鬼によってマリン先輩が殺され、その凶刃がグラ先輩へ向かおうとした時、彼女は現れたのだ。波打った薄桃色の長い髪を靡かせた存在、大天使レーシャ」
「大天使レーシャ?」

 わざわざ大と付けているという事は普通の天使、グラとは違うのか?

「勿論詳しい事は知らないが、どうやら天使にも階級があるらしい。彼女は一撃で竜化鬼を滅すると、私たちを勧誘したのだ。この手を取り天使にならないかと」
「……それでグラお姉様は」
「そうだ。グラ先輩はその手を取った。大天使の力に魅せられたのだ」

 魅せられたか。その言葉にはあからさまではないけれど、それでもしっかりと責めの感情が乗っていた。

「なるほどな。ただちょっと良いか」
「どうしたのだジョンス殿?」

 ユニとソラだけじゃない。カユもまた天使に対して嫌悪感を抱いているように感じた。だからそんな天使の手を取ったグラに対しても憤りがあるのだろう。
 天使に対する拒絶。その理由について知りたいところだが、それよりも先に言わないといけない、そう思ったんだ。

「グラが天使になった理由は力を得るため、そして大切な二人の妹とカユ、お前を保護するためだったんだ」
「私たちを保護?」
「この国には未来がない、だから連れて行くって言ってたぞ。根拠は竜化鬼だ」
「確かに無数の竜化鬼に襲われればこの国は危ういだろう。しかし、だからといってあの者共の力を借りるなどあってはならないのだ!」
「——っ!?」

 明確な怒りを発し、己の足を叩くカユ。

「カユ、どうしてお前は、お前らは天使を嫌っているんだ?」
「それは——」
「——わたしが話しますよカユちゃん」
「ソラ……」

 拳を強く握り締めるカユに微笑みかけた後、ソラは今にも泣き出してしまいそうな顔をして口を開いた。

「わたしとユニちゃん、それからグラお姉ちゃん。わたしたち三人は両親を早くに亡くしているんです」

 両親を亡くしている。
 ……もしかして、そういう事か?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『25歳独身、マイホームのクローゼットが異世界に繋がってた件』 ──†黒翼の夜叉†、異世界で伝説(レジェンド)になる!

風来坊
ファンタジー
25歳で夢のマイホームを手に入れた男・九条カケル。 185cmのモデル体型に彫刻のような顔立ち。街で振り返られるほどの美貌の持ち主――だがその正体は、重度のゲーム&コスプレオタク! ある日、自宅のクローゼットを開けた瞬間、突如現れた異世界へのゲートに吸い込まれてしまう。 そこで彼は、伝説の職業《深淵の支配者(アビスロード)》として召喚され、 チートスキル「†黒翼召喚†」や「アビスコード」、 さらにはなぜか「女子からの好感度+999」まで付与されて―― 「厨二病、発症したまま異世界転生とかマジで罰ゲームかよ!!」 オタク知識と美貌を武器に、異世界と現代を股にかけ、ハーレムと戦乱に巻き込まれながら、 †黒翼の夜叉†は“本物の伝説”になっていく!

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

処理中です...