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第七話

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……どうしよ、何か一気に緊張が……。

二体が退室してしん、と部屋が静かになるとどうしても先生を意識にしちゃってどんどん心臓の鼓動が早く大きくなっていく。
初めはどくどくだったそれが今やばくばくになって耳元で鳴り響く感覚にぎゅうと浴衣の裾を握っていると、不意におれへと体ごと向き直った先生の手がぺたりとおれの体の中心、丁度心臓の真上に置かれてびくんと肩が跳ねあがった。

「う……ッ!? せんせっ!?」

突然の事にさらに鼓動が早くなりどきまぎしながら先生を見遣れば小さく息を付いた先生の瞳と視線が絡み合う。

「……大分早いな。体も緊張で固まっとるし。璃、少し力抜け。こんなんじゃやってる最中、変な力入るぞ。ほれ。」

「……う……。」

そのまま胸元を優しく擦られるものの、早いと言われたのがおれの心臓の鼓動だって事に気が付いてカッと顔が熱くなり、逆に体が強張る。
瞬間先生に半眼で見られたけど、だって……!と涙目になっていると伸びてきた指で顎を持ち上げられて、あ、と思った時には唇が重ねられていた。

「ン……ッ、んッ……」

チュッ、チュッと音を立て何度も角度を変え唇を軽く啄むようなキスに吐息が少しずつ乱れて先生の寝間着である浴衣の胸元をぎゅっと握り締める。
そのまま下唇を甘噛みされたり啄まれるうちにぞくぞくとした甘い刺激に体から力が抜けていけば小さく笑った先生にそっと唇を離された。

「よし、良い具合に力抜けたな。……ま、緊張するなと言う方が無理かもしれんがまだ房事をするには時間的に早すぎるからな。暫くは時間潰すぞ。ほれ。」

「……うん。」

そう言って渡されたのはテレビのリモコンで、まだキスの余韻が残る頭で頷くとするりとおれの腰から手を離し立ち上がろうとした先生と離れたくなくて、咄嗟に握ったままの胸元をさらに強く握りしめて止めれば、少しだけ考えるように眉を寄せた先生にひょいと抱き上げられる。

「……先生?」

「あのな。んな顔しなくても、冷茶を入れに行こうとしただけだ。折角周が気ぃ効かして用意してくれてたからな。お前さんも飲むだろ?」

「……ん、飲む。周兄の冷茶美味しいし。って、あ、だったらおれが入れるから……!」

ハッとして慌てて言えばストンと布団の上に下ろされて、良いからテレビ付けろと言われて渋々その場に腰を下ろしリモコンの電源ボタンを押す。
プツッと言う小さな音と共に今まで暗かった画面が明るくなり、同時にテレビから聞こえてきた賑やかな声にほっと息を付いていると戻ってきた先生にほれ、とグラスを手渡された。

「ん。先生、ありがと。」

「ああ。チョコも持ってきたから食え。」

「うん!」

そう頷くとおれの前に小皿を起きすぃっと瞳を細め隣に腰を下ろした先生に再び腰を抱き寄せられる。
同時にまた早くなってきた鼓動を誤魔化すように冷茶を一口飲むとその冷たさとお茶の甘さに瞳を細め、甘えるようにこてんと先生の肩にもたれれば視線はテレビに向けたままの先生の手にぽんぽんと腰を叩かれた。



その後、そんな感じで先生とテレビを見たり冷茶やチョコを食べて過ごす事約半刻。

何となく見てた恋愛ドラマが終わりプツリとテレビを消した先生に璃、と呼ばれ顔を向けるとかぷりと唇を甘噛された。

「ッ、う!?」

「……そろそろいいだろう。――ヤるぞ。」

そう耳元でいつもより低い声で囁かれぞくりと背筋に痺れが走る。

「……ッあ……。」

さらに咄嗟の事で反応出来ないでいるおれの手の中からグラスを奪い、布団から離れた位置に先生の手が置くのをぼんやりと見ていると視界が大きく動いて。
気が付いたら布団に仰向けに押し倒されていた。

「……せんせ、ッま、待って、電気、電気消してッ……!」

そのままおれに覆い被さった先生の顔がゆっくり近付いてくるのを見て周兄の講座で教えてもらった事を慌てて告げれば一瞬動きを動きを止めてああ、と頷いた先生にチュクと音を立てて唇を吸われる。

「うっ!!?  で、電気……。」

「ああ。実はさっき周とも言ってたんだが、間接照明を用意すんの忘れててな。今夜は雨で月明かりもねえし、常夜灯ってのも色気がねえ。とりあえず今日はこれで我慢しろ。」

全く悪びれない様子で言われ先生の片手が枕元に伸びるとリモコンを操作してるのかピッ、ピッと微かな音がする度に先生の肩越しに見える部屋の灯りがしぼられたもののお互いの顔や部屋の様子も分かる程度の暗さにしかならなくて小さく息を飲んだ。

……これじゃ、色々見えちゃう。

「……これ以上暗くならないの?」

「ああ。まあお前さんの裸なんて風呂場で散々見とるから、今更だろ。ほら、集中しろ。」

「んン!」

それはそうだけど、と反論しかけた口に唇を押し付けられる。
唇の隙間から舌を差し込まれて舌を絡めとられながらシュ……と小さな音を立てて浴衣の帯が外され肩がぎくっと強張るタイミングで舌をチュッと吸われ先生が唇を離した。

「ッせんせ……。」

「大丈夫だ、ちゃんと気持ちよくしてやる。ただな璃、こういう時に『先生』も情緒がねえだろ。志紅でいい。」

「っ、でも……。そうかもしれないけど、おれ弟子なのに先生の事名前で呼ぶなんて……。」

さすがにそれはどうかと渋っているといいから、と額をこつんと合わせられる。
至近距離にある優しい光を称えた鳶色の瞳に胸がどきどきしていると促すように下唇を親指で優しく擦られる。

「何もずっとそう呼べっつってんじゃないんだしいいだろう。今だけだ。ほれ。呼んでみろ、璃。」

「ん……ッあ……ッし……志紅さん……。」

「ま、及第点だな。――良い子だ、璃。」

「んッ!」

そのくすぐったいのにじんじんとする刺激に思わず吐息を漏らしながら呼べば、そう囁かれて唇に吸い付かれる。
チュッと微かな音を立ててすぐに離れたかと思ったら先生の……志紅さんの頭がおれの首筋に埋められてきつく吸いあげられ、チリッとした微かな痛みに体を震わせると宥めるようにねっとりと舌を這わせられた。

「……ッや、それ……ッあ、ッ……!」

ゆっくりと下へ降りていく熱い舌にぞわぞわとした弱い刺激が走ってむずがっているうちにおれの浴衣の前を開け鎖骨をきつく吸い顔をあげた志紅さんの視線がおれの薄っぺらい身体に注がれている事に気が付いてカッと頬が熱くなる。

「っ、せ……志紅さんッ……?」

堪らず声をかければ、いやなにと呟いた志紅さんの手がおれの胸に這わせられた。

「さっきも言ったようにお前さんの裸は見慣れとるつもりだったが、こうして見るとなかなかに綺麗な体だと思ってな。瑞々しくて、それでいて吸い付くような手触りのいい象牙の肌に、この薄ピンク色の乳首とかな。」

「ひァ!?」

瞬間両方の胸の粒をぐっと親指で押し潰されびくっと体が跳ね上がる。
ぐりぐりと親指でさらに押し潰されたかと思うと今度は親指と人差し指できゅっと摘ままれくりくりと機械の摘みを回すかのように捏ねられた。

「あ、アッ、ンやッ、ダメぇ……!」

くすぐったいのに、先生の指で弄られる度にチリチリとした甘い疼きが沸き上がってお腹の奥が少しずつ熱くなっていく。その初めて感じる疼きに膝をもぞかせていると喉の奥で笑い声を漏らした志紅さんにべろりと顎を舐められた。

「……んっ……!」

「……随分と感度が良いな。いや、『本能』が目覚めた事で感度があがったと言う方が正しいのか。キモチイイか、璃。」
「ッ、ひァ……! ッ、キモチイ……? ッよく分かんな、けどッ……志紅さ、にそこ触られると、チリチリしてお腹の奥、熱いッひあァ!」

「――そうか。」

くりくりと胸の粒を捏ねられたまま尋ねられ、このチリチリとした感覚が志紅さんの言う『キモチイイ』か分からなくて感じたまま吐息を乱して答え、爪で軽く粒の先端を引っかかれた瞬間それまでのチリチリがビリビリとした刺激に変わって背筋がしなった。
そんなおれの反応に志紅さんがにやりと意地の悪い笑みを浮かべたのは一瞬。
限りなく嫌な予感に志紅さんを止めるより早く、ぱくりと右の粒を口に含まれ先端を甘噛みされ、ビリビリとした刺激にさらに体が反応する。

「あ、ヤ、ッあせんせ、しぐれさ、だめェッ! あ、ッア!!」

そのまま右を口で左を指で愛撫され布団のシーツを握りしめてびくびく震えていると右手を伸びてきた先生の左手に取られ指を絡めるようにしっかり繋がれた。
そのまま左の粒の先端をカリカリと引っ掻いていた右手が肌をすべるように下ろされ閉じていた膝を割られ、浴衣の下に唯一付けていた紺色のボクサータイプの下着の上から徐々に熱が集まり出していた自身に触れられてビクッと体が強張る。
形を確かめるように掌全体で撫でられ羞恥で一気に顔がさらに熱くなって、ぎゅうっと足を閉じればぽんぽんと太股の内側を叩かれた。

「……固くなっとるな。璃、足の力抜け。触りづらい。」

さらにやっと胸の粒から口を離し顔をあげた志紅さんに言われ、首をぶんぶんと横に触ればきゅうっと自身を無理矢理握られてビクンと体が跳ね上がる。

「やァあっ!!」

「あーーきーー、足首掴んで大股開きされたいのか、お前さんは。ほれ、さっさと力抜け。」

「や!! だって、ッおればっか、こんななって……ッはしたないもん、だから、ッや、ァッんん!!」

くにゅくにゅと揉まれながらじわりと視界に水の膜が張るのを感じながら必死に言えば、軽く息を付き阿呆かと呟いた志紅さんが少し体をずらすと、しっかり繋いだままの右手を引かれ、ぺたりとその股間に押し当てられた。

「う!!? せんせ……ッ!?」

「璃、次『先生』と呼んだら罰ゲームだからな。ほれ、いいから触ってみろ。」

「ば――ッ!?」

さらりと色んな意味でとんでもない事を言われたような気がして戸惑っていると再度ほれ、と促されこくんと喉を鳴らし指先で志紅さん自身に触れれば浴衣の上からでもソレが熱く猛っているのが分かってさらに顔が熱くなる。

「分かったか? 俺もお前さんと同じだ。だから、はしたないだなんて思うな。むしろこれだけエロい反応を返されたら男冥利に尽きるしな。……続けるぞ?」

そのままゆっくりと愛撫を再開した志紅さんに頷き足を開けば瞳を細めた志紅さんにチュッと額にキスを落とされた。

「……エッ、ひャッう……でも、何で? おれ、志紅さんに……ッん、してもらってばっかで、志紅さんに奉仕できてないのに……ッああ!」

「……そんな事せんでもそんなエッロい顔されてエッロい声上げられたらこうなるに決まっとるだろ。脱がすぞ。」

「ふ、ァ、ッあ、待っ……――――!!」

ずぐずぐと熱くなり志紅さんの手の中で少しずつ形を変えていく自身に体を震わせ吐息を乱しているとその一言の元、勢いよく下着を脱がされた勢いでぷるんと飛び出し上を向いている幼い自分自身にさらに涙目になっていると、志紅さんの手で包むように握られてゆっくり上下に扱かれ僅かに捲れているピンク色の先端を親指で擦られ腰が戦慄いた。

や、ッあ、これ、駄目……!

「あッ、あ、志紅さ……! ッんヤぁ、 ちんち、ビリビリする! ッァあ……!」

今まで感じた事のない激しくて甘い刺激に繋いだままだった志紅さんの手をぎゅうっと握りしめれば手は止めないものの先端から指を離した志紅さんが僅かに眉を寄せる。

「……全然剥けとらんし本当に幼いな。ちょい刺激が強すぎるか。璃、一つ聞くがお前さん精通はもう来とるのか?」

「せーつう? ンん、ア! ッむ、せーは、前、夜中にッん、パンツ汚しちゃった時、周兄に……んア!」

きちゅきちゅと幹を扱かれ体を震わせながらぶんぶんと首を振り答えるとそうか、と呟いた志紅さんの愛撫が止まり、繋いだ手をほどかれそうになり慌ててぎゅっと握り直す。

「璃、体勢換えるだけだ。暫くシーツ握ってろ。またすぐ繋いでやるから。」

「……うーー……。なら、志紅さんも、脱いでっ。おれだけ裸なのやだ……。」

軽く手を振られながら言われてもどうしても志紅さんの肌と触れ合えないのが嫌で、そうしたら少しだけなら手ぇ離してもいいと提案すれば瞳を瞬かせた志紅さんがそれもそうだなと頷いた。

「じゃあ脱ぐから離せ。で、大人しくしてろ。」

「……ん。」

小さく頷いて志紅さんの手をそっと離せばぽんぽんと頭を撫でられる。
そのまま自らの浴衣の帯を外し前をはだけた志紅さんの年齢なんて微塵も思わせない引き締まった身体が凄く扇情的に見えて喉を鳴らせば、小さく笑った志紅さんに唇を重ねられた。

「……んッ、志紅さ……?」

「璃、今俺に欲情しただろ。顔に全然出てたぞ。」

「う……だ、だって。志紅さんが凄く色っぽかったから……。」

すぐに離されて問われた内容に少し気まずさを覚えながら小さく頷くと、頬に唇を押し付けた志紅さんが喉の奥で笑う。

「そうかい。ま、お前さんが望むなら後でいくらでも触ればいい。ただ今は……。」

「あ、ッン、ッ!」

それだけ言うと首、胸元、お腹と、唇を滑らせていきながら身体を下げていく志紅さんを見ながら言葉の続きを待っているとお臍に舌を這わせた志紅さんが微かに笑い、ぱくっとおれ自身が根本まで志紅さんの口に咥え込まれた。
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