私のしあわせ

ぱる@あいけん風ねこ

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season 1

04

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◇◆◇



それから1ヶ月後。
私の誕生日当日は、バイト。
正行さん、悦子さん、修司さんがお祝いしてくれて、店長…京輔さんには、まだ何も言われてない。
でも、なんかソワソワしてるのは伝わるから、バイト終わったら何かあるのかな…?とは思ってる。


今日も平和にバイトが終わって、京輔さんから待っててって言われてお店の外で待機中。

そう言えば、正行さんと悦子さんから可愛らしい文房具をもらった。大人になっても使えるようなもので、すごく有り難かった。
修司さんからは、小さな花束貰った。
ドライフラワーに出来るからって言われたから、そうしてみようと思う。

今年はしあわせな誕生日だなぁ…とか考える。
毎年、親から産むつもりはなかったって言われてからは誕生日を祝ってもらってない。
姉の誕生日は毎年豪勢にしてるのに。
まぁ、もう諦めてるからいいんだけど。
でも今年は、違う。
大好きな人たちと過ごして、大好きな人たちから祝ってもらえた。
それだけで嬉しくてしあわせなんだ。
家族はただ、血の繋がってる人たちなだけ。




「梨恵ちゃん、お待たせ」
「…お疲れ様です」
「うん」




店の戸締りを終わらせた京輔さんが来て、自然に手を繋がれて駐車場まで向かう。




「………」
「………」




何も喋らなくても、居心地いいとか最高だな。

京輔さんは、きっとすごくモテる人だと思う。
優しくて大人で、店長出来るくらいの技量の持ち主で、とても誠実で。
きっと私なんかと出会わなければ、それ相応の相手と恋をして結婚して。
それでも私と出会ってくれて、私を好きになってくれて、私も好きになって。
運命だとか、必然だとか、そんな言葉で括ることなんか出来なくて、この出会いに感謝しかない。




「…梨恵ちゃん」
「…?」
「今日って…お家帰らないとダメ?」
「え?」
「いやらしい意味じゃなくて!その…一緒にいたいなぁ…なんて思いまして…」
「っ…あ、の」




これって…もしかして京輔さんのお家に、お呼ばれしてる…感じ?
い、いいのかな…お家行って…。




「あ、の…」
「………」
「だ、大丈夫、です」
「ほ、ほんと?!」
「は、はい…」
「あっ…でも、お家の人に許可取らないと、だよね?」
「あ…それ、は…」




そうだ。京輔さんに家のこと話してなかったんだ。
本当はあまり言いたくないけど…言わないと逆に心配させちゃうかな…。




「あの…実は」
「うん?」
「京輔さんに言わないといけないことが、あって」
「え?」
「…っ」




緊張する。
伝えたいけど、どう伝えたらいい?
実は、産むつもりはなかったらしいです、なんて言ったら確実に空気悪くなる。
それに、そんなめんどくさい家族がいる人間となんか一緒にいられないって思われるかもしれない。
どうしよう…どうしよう?




「…梨恵ちゃん」
「っ…」
「取り敢えず、車乗ろうか?」
「は、はい…」




京輔さんの車に乗ったら、少し落ち着いた。
ああ…京輔さんの匂いは本当に落ち着く匂いしてる。




「…あの」
「うん?」
「…私の家族は、私に興味がないんです」
「え?」
「…姉が1人いるんですけど、両親は姉にしか興味がないんです」
「それって…」
「……小学生の頃から、私はずっと1人でした」
「っ……、」




両親に、産むつもりはなかったと言われたのは、私の9歳の時の誕生日だった。
その年の姉の誕生日は盛大に祝ってたのに、私の誕生日は質素なもので。
ただ、めんどくさそうにおめでとうと言われただけだった。

それが悲しくて2人に泣き付いたら、本当は産むつもりなんかなかったって言われた。
その時はなにを言われなのか訳がわからなくて、さらに泣き付いたらうざったそうな顔して、近づくな、迷惑かけるな、泣くなって言われた。
それからの日々は最悪だった。
ご飯はくれるけど、それ以外は何もしてくれない。
学校からの手紙を渡しても、見もしないでその場に置きっぱなし。

でも、世間体を気にしてか、外では仲の良い家族を装って、家に帰れば無関心。
旅行も私だけ置いてけぼり。
姉に話しかけたら、姉も私を蔑んだ目で見てくる。
仕舞いには、両親から姉に話しかけるなって言われて。

この世界には誰も味方なんかいないんだって、そう思ったのは早かった。

それからは全部諦めた。
両親からの愛情も、姉からの愛情も、周りの友達との交流も全て。

でも、そんな時に見つけた今のお店は、私の唯一の居場所になった。
正行さんも、悦子さんも、修司さんも、京輔さんも、私の家族ではないけど家族以上の存在になって、私の唯一になった。




「っ…梨恵ちゃん」
「………」
「好き。大好き。梨恵ちゃんが大好き」
「っ、きょ、すけ…さん…っ」
「ずっと一緒にいる。俺がそばにいる。俺が梨恵ちゃんの唯一になる」
「っひ、ぅ…」
「大好きだよ、梨恵。俺のお嫁さんになって?俺と家族になって?」
「ひ、ぅっ…きょ、っすけ、さん…っ」
「ずっと一緒。絶対に離さない。梨恵が産まれてきてくれて嬉しい。俺と出会ってくれて嬉しいありがとう。大好き。ずっと大好き」
「うぅ~っ…きょうすけさんっ…」




京輔さんに抱きしめられて、暖かくて、京輔さんの言葉が嬉しくてしあわせて。
初めて産まれてきてよかったんだって思えた。



その後、2人してちょっと恥ずかしくなって、2人して照れ笑いしてしまって。
京輔さんのお家に行くことになった。




「お邪魔、します」
「どうぞ」




京輔さんのお家は、マンションの6階にあって、広すぎず狭すぎずのお家。
独り暮らしで、部屋数は3つ。
でも独り暮らしだから使ってる部屋は1つで、余ってるって言われた。




「…ここ、座って」
「あ、はい」




ソファに促されて座ったら、すっごく座り心地よくてびっくりした。
隣には京輔さんが座って、膝の上に置いてた手を握られる。
チラッと京輔さんの方見たら、真剣な目をして私を見てた。




「…梨恵」
「っ、は、はい」
「誕生日、おめでとう」
「ありがとう、ございます」
「…俺は、梨恵がすっごい好き」
「………」
「もしよかったら、俺とお付き合いしてくれませんか?」
「っ……は、い。よろしく、お願いします」
「っ…うん。梨恵、俺のこと、好き?」
「っ………すき、です」
「うん…っ、俺も大好き」




そのまま、初めての口付けを交わした。
ちゅって優しいキスで、心がさらにぽかぽかして、しあわせすぎて怖いくらいだった。




「ふふ。梨恵、顔真っ赤。かわいい」
「…は、ずかしいです」
「ダメ。目、逸らさないで」
「っ…む、り」
「無理じゃない。こっち見て?」
「~~っ…むりぃ」
「ふふ。かわいい。梨恵本当にかわいい好き大好き」




京輔さんって…こんな甘い人だったっの?
こんなの、心臓に悪すぎる。

恥ずかしいけど、頑張って京輔さんの目を見たら、蕩けるような目を向けてて、さらに恥ずかしくなった。今絶対に顔真っ赤だ。わかる。だって熱いもん。




「梨恵は、今日18歳になったよね?」
「はい…?」
「突然こんなこと言われて戸惑うかもしれないけど」
「…?」
「…一緒に、住まない?」
「…………えっ?」




………なんて?何を言われた?
『一緒に住まない?』って…言われた?空耳?




「あ、の…?」
「お付き合い初日に言うことじゃないのはわかってるんだけど、やっぱり梨恵と離れたくなくて。梨恵のこと好きだって自覚してからはずっと一緒にいたいって思い始めて」
「………」
「だから、正直に言うと…好きになった頃から一緒に住むって計画立ててた」
「っ!!?」




京輔さん…そんな計画立ててたの…?
いや、え…?待って。京輔さんって…そんなに私のことす、す…好きだった、の…?
え、やばい。嬉しいけど……ずっっっごい恥ずかしい…!!!!!




「きょ、京輔さん…」
「うん?」
「そ、そんなに…その…あの…!」
「うん。そんなに梨恵のこと大好き」
「っ!!」
「さっきも言ったけど、俺のお嫁さんになって?」
「そっ、!!」
「結婚を前提にお付き合いして?」
「けっ…!!」




そういえば、さっきも言われた気がする…。
泣いちゃっててちゃんと理解出来てなかったけど…あれって…そういう…!?
ど、どうしよう?!どうしよう?!どうしよう?!?!?!




「あ、あああ、あのっ」
「梨恵に受け入れる以外の選択肢はないよ?」
「へっ?」
「だって俺、絶対に梨恵のこと離さないし」
「まっ、」
「絶対にしあわせにするし。ずっと大好きだし、一生離す気ないし」
「ちょ、」




なにこれ…なにこれなにこれなにこれー!!!!!
なん、なんなの?!京輔さんって、こんな人なの?!
え、やばくない?甘くない?ど、どんだけわたしのことす、好きなの…?!
そして、嬉しいと思ってる私も…なんなの?!




「一緒に住もう?」
「あ、の…」
「それに、今の家に梨恵を置いとくの、俺やだし」
「そ、れは…」
「俺が梨恵の家族になりたい」
「っ、」
「俺だけが唯一の家族になりたい」
「京輔、さん…」
「ご両親にもちゃんと言う」
「………」
「だからお願い。俺のそばにいて」
「っ……はいっ」




その後、その返事に感極まった京輔さんに苦しいくらいに抱きしめられて、でも嬉しくて私も抱きしめ返した。




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