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第二章 波乱の七日間
三日前⑧
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バルトは、屋敷の中を外から覗き込んでいた。
すると、バルトが去った後からとくに中は変わっておらず、エリオットと使用人達が一部屋に集まっている。
正直、外からみるとバルトは二階の窓に張り付いており怪しいことこの上ないが、今は気にしている余裕などあるはずもなかった。
(エリオットを殺せば魔法は消えるのか?)
だが、バルトは憶測では行動しない。
もしその仮定が間違っていたら、自分に仕えてくれている使用人達を害してしまうかもしれないからだ。
どうやったら皆を無事に取り戻せるか。
その手がかりをなんとか見つけようと躍起になっていた。
その時、ふと後ろから声がかかる。
聞きなれた声に、バルトは振り向きもせずとりあえず地面へと飛び降りた。
そして、自らの副官であるエミリオを確認して小さく頷く。
「隊長。遅くなりました」
「エミリオか。いや、助かった。いきなりで悪いんだが現状について説明する。実は――」
バルトはそういうと、エミリオに現状を伝える。
それを聞いたエミリオはしばらく目をつぶって考え込むと、おもむろに目を開き小さく唸る。
「ふぅむ……。聞いた感じだと、隊長の言う通り催眠系の魔法ですね。カトリーナ嬢と魔力の通路ができていたのは効果を増大させるためでしょう。その場の状況をみるに、カトリーナ嬢にはそうしないと魔法が効かなかったのかもしれません。意志が強そうですからね、その人は」
「む……つまりは、やはり他の者たちは触れもせず操っているのか?」
「おそらくは。かなり強力な魔法使いですね」
バルトはその言葉に顔をしかめながら、さらに質問を重ねていく。
軍の参謀でもあるエミリオは博識であり、魔法についても教養が高いのだ。
「彼らを救う方法は?」
「それはなんとも……。一番は魔法をかけた術者が解除するのはいいんでしょうが、説得するにしても隊長の使用人さんたちを安全に拘束しないとですからね。俺と隊長だけじゃ厳しいかもしれません」
「カルラはどうした」
「カルラは国境の調査ですよ。誰かさんが全てをほっぽり投げてしまったから」
「ぐ……すまない」
エミリオにやり込められながら、バルトはどうするべきか考える。
そして、エミリオと二人で実行できる方法をいくつか考え、一番妥当なものを選択した。
戦場と同じように、バルトは神経を研ぎ澄ませていく。
「しかし、まあ、なんだ……。二人だけだと、シンプルにあの方法しかないか」
「それが妥当ですよね。あまり気が進みませんけど……」
「しょうがないだろ? まあ、一番は使用人達の安全だからな。うまくやるさ」
「そこは心配してませんよ。隊長が失敗したところなんて、見たことありませんから」
エミリオはそういって不敵に笑うと、口を閉じ屋敷に忍び込むために移動を始めた。
バルトも、そのあとに続いていく。
きっと――。
ここでカルラがいたら気づいたのだろう。
バルトの身体から陽炎のようなものが立ち上っているのを。
彼の周囲の景色は歪み、ゆらゆらと揺れている。
バルトは、カトリーナや使用人達に危害を加えようとしたエリオットに、すさまじい怒りを感じていたのだ。ゆえに、体から魔力が漏れ出て立ち上っていた。
今はそれを必死で抑え込んでいる。
沸き立つ怒りは、今まさに爆発の時を待っていた。
すると、バルトが去った後からとくに中は変わっておらず、エリオットと使用人達が一部屋に集まっている。
正直、外からみるとバルトは二階の窓に張り付いており怪しいことこの上ないが、今は気にしている余裕などあるはずもなかった。
(エリオットを殺せば魔法は消えるのか?)
だが、バルトは憶測では行動しない。
もしその仮定が間違っていたら、自分に仕えてくれている使用人達を害してしまうかもしれないからだ。
どうやったら皆を無事に取り戻せるか。
その手がかりをなんとか見つけようと躍起になっていた。
その時、ふと後ろから声がかかる。
聞きなれた声に、バルトは振り向きもせずとりあえず地面へと飛び降りた。
そして、自らの副官であるエミリオを確認して小さく頷く。
「隊長。遅くなりました」
「エミリオか。いや、助かった。いきなりで悪いんだが現状について説明する。実は――」
バルトはそういうと、エミリオに現状を伝える。
それを聞いたエミリオはしばらく目をつぶって考え込むと、おもむろに目を開き小さく唸る。
「ふぅむ……。聞いた感じだと、隊長の言う通り催眠系の魔法ですね。カトリーナ嬢と魔力の通路ができていたのは効果を増大させるためでしょう。その場の状況をみるに、カトリーナ嬢にはそうしないと魔法が効かなかったのかもしれません。意志が強そうですからね、その人は」
「む……つまりは、やはり他の者たちは触れもせず操っているのか?」
「おそらくは。かなり強力な魔法使いですね」
バルトはその言葉に顔をしかめながら、さらに質問を重ねていく。
軍の参謀でもあるエミリオは博識であり、魔法についても教養が高いのだ。
「彼らを救う方法は?」
「それはなんとも……。一番は魔法をかけた術者が解除するのはいいんでしょうが、説得するにしても隊長の使用人さんたちを安全に拘束しないとですからね。俺と隊長だけじゃ厳しいかもしれません」
「カルラはどうした」
「カルラは国境の調査ですよ。誰かさんが全てをほっぽり投げてしまったから」
「ぐ……すまない」
エミリオにやり込められながら、バルトはどうするべきか考える。
そして、エミリオと二人で実行できる方法をいくつか考え、一番妥当なものを選択した。
戦場と同じように、バルトは神経を研ぎ澄ませていく。
「しかし、まあ、なんだ……。二人だけだと、シンプルにあの方法しかないか」
「それが妥当ですよね。あまり気が進みませんけど……」
「しょうがないだろ? まあ、一番は使用人達の安全だからな。うまくやるさ」
「そこは心配してませんよ。隊長が失敗したところなんて、見たことありませんから」
エミリオはそういって不敵に笑うと、口を閉じ屋敷に忍び込むために移動を始めた。
バルトも、そのあとに続いていく。
きっと――。
ここでカルラがいたら気づいたのだろう。
バルトの身体から陽炎のようなものが立ち上っているのを。
彼の周囲の景色は歪み、ゆらゆらと揺れている。
バルトは、カトリーナや使用人達に危害を加えようとしたエリオットに、すさまじい怒りを感じていたのだ。ゆえに、体から魔力が漏れ出て立ち上っていた。
今はそれを必死で抑え込んでいる。
沸き立つ怒りは、今まさに爆発の時を待っていた。
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