36 / 102
第二章 波乱の七日間
三日前⑧
しおりを挟む
バルトは、屋敷の中を外から覗き込んでいた。
すると、バルトが去った後からとくに中は変わっておらず、エリオットと使用人達が一部屋に集まっている。
正直、外からみるとバルトは二階の窓に張り付いており怪しいことこの上ないが、今は気にしている余裕などあるはずもなかった。
(エリオットを殺せば魔法は消えるのか?)
だが、バルトは憶測では行動しない。
もしその仮定が間違っていたら、自分に仕えてくれている使用人達を害してしまうかもしれないからだ。
どうやったら皆を無事に取り戻せるか。
その手がかりをなんとか見つけようと躍起になっていた。
その時、ふと後ろから声がかかる。
聞きなれた声に、バルトは振り向きもせずとりあえず地面へと飛び降りた。
そして、自らの副官であるエミリオを確認して小さく頷く。
「隊長。遅くなりました」
「エミリオか。いや、助かった。いきなりで悪いんだが現状について説明する。実は――」
バルトはそういうと、エミリオに現状を伝える。
それを聞いたエミリオはしばらく目をつぶって考え込むと、おもむろに目を開き小さく唸る。
「ふぅむ……。聞いた感じだと、隊長の言う通り催眠系の魔法ですね。カトリーナ嬢と魔力の通路ができていたのは効果を増大させるためでしょう。その場の状況をみるに、カトリーナ嬢にはそうしないと魔法が効かなかったのかもしれません。意志が強そうですからね、その人は」
「む……つまりは、やはり他の者たちは触れもせず操っているのか?」
「おそらくは。かなり強力な魔法使いですね」
バルトはその言葉に顔をしかめながら、さらに質問を重ねていく。
軍の参謀でもあるエミリオは博識であり、魔法についても教養が高いのだ。
「彼らを救う方法は?」
「それはなんとも……。一番は魔法をかけた術者が解除するのはいいんでしょうが、説得するにしても隊長の使用人さんたちを安全に拘束しないとですからね。俺と隊長だけじゃ厳しいかもしれません」
「カルラはどうした」
「カルラは国境の調査ですよ。誰かさんが全てをほっぽり投げてしまったから」
「ぐ……すまない」
エミリオにやり込められながら、バルトはどうするべきか考える。
そして、エミリオと二人で実行できる方法をいくつか考え、一番妥当なものを選択した。
戦場と同じように、バルトは神経を研ぎ澄ませていく。
「しかし、まあ、なんだ……。二人だけだと、シンプルにあの方法しかないか」
「それが妥当ですよね。あまり気が進みませんけど……」
「しょうがないだろ? まあ、一番は使用人達の安全だからな。うまくやるさ」
「そこは心配してませんよ。隊長が失敗したところなんて、見たことありませんから」
エミリオはそういって不敵に笑うと、口を閉じ屋敷に忍び込むために移動を始めた。
バルトも、そのあとに続いていく。
きっと――。
ここでカルラがいたら気づいたのだろう。
バルトの身体から陽炎のようなものが立ち上っているのを。
彼の周囲の景色は歪み、ゆらゆらと揺れている。
バルトは、カトリーナや使用人達に危害を加えようとしたエリオットに、すさまじい怒りを感じていたのだ。ゆえに、体から魔力が漏れ出て立ち上っていた。
今はそれを必死で抑え込んでいる。
沸き立つ怒りは、今まさに爆発の時を待っていた。
すると、バルトが去った後からとくに中は変わっておらず、エリオットと使用人達が一部屋に集まっている。
正直、外からみるとバルトは二階の窓に張り付いており怪しいことこの上ないが、今は気にしている余裕などあるはずもなかった。
(エリオットを殺せば魔法は消えるのか?)
だが、バルトは憶測では行動しない。
もしその仮定が間違っていたら、自分に仕えてくれている使用人達を害してしまうかもしれないからだ。
どうやったら皆を無事に取り戻せるか。
その手がかりをなんとか見つけようと躍起になっていた。
その時、ふと後ろから声がかかる。
聞きなれた声に、バルトは振り向きもせずとりあえず地面へと飛び降りた。
そして、自らの副官であるエミリオを確認して小さく頷く。
「隊長。遅くなりました」
「エミリオか。いや、助かった。いきなりで悪いんだが現状について説明する。実は――」
バルトはそういうと、エミリオに現状を伝える。
それを聞いたエミリオはしばらく目をつぶって考え込むと、おもむろに目を開き小さく唸る。
「ふぅむ……。聞いた感じだと、隊長の言う通り催眠系の魔法ですね。カトリーナ嬢と魔力の通路ができていたのは効果を増大させるためでしょう。その場の状況をみるに、カトリーナ嬢にはそうしないと魔法が効かなかったのかもしれません。意志が強そうですからね、その人は」
「む……つまりは、やはり他の者たちは触れもせず操っているのか?」
「おそらくは。かなり強力な魔法使いですね」
バルトはその言葉に顔をしかめながら、さらに質問を重ねていく。
軍の参謀でもあるエミリオは博識であり、魔法についても教養が高いのだ。
「彼らを救う方法は?」
「それはなんとも……。一番は魔法をかけた術者が解除するのはいいんでしょうが、説得するにしても隊長の使用人さんたちを安全に拘束しないとですからね。俺と隊長だけじゃ厳しいかもしれません」
「カルラはどうした」
「カルラは国境の調査ですよ。誰かさんが全てをほっぽり投げてしまったから」
「ぐ……すまない」
エミリオにやり込められながら、バルトはどうするべきか考える。
そして、エミリオと二人で実行できる方法をいくつか考え、一番妥当なものを選択した。
戦場と同じように、バルトは神経を研ぎ澄ませていく。
「しかし、まあ、なんだ……。二人だけだと、シンプルにあの方法しかないか」
「それが妥当ですよね。あまり気が進みませんけど……」
「しょうがないだろ? まあ、一番は使用人達の安全だからな。うまくやるさ」
「そこは心配してませんよ。隊長が失敗したところなんて、見たことありませんから」
エミリオはそういって不敵に笑うと、口を閉じ屋敷に忍び込むために移動を始めた。
バルトも、そのあとに続いていく。
きっと――。
ここでカルラがいたら気づいたのだろう。
バルトの身体から陽炎のようなものが立ち上っているのを。
彼の周囲の景色は歪み、ゆらゆらと揺れている。
バルトは、カトリーナや使用人達に危害を加えようとしたエリオットに、すさまじい怒りを感じていたのだ。ゆえに、体から魔力が漏れ出て立ち上っていた。
今はそれを必死で抑え込んでいる。
沸き立つ怒りは、今まさに爆発の時を待っていた。
10
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。