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第三章 王都攻防編
公爵領脱出計画⑤
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その後、カトリーナは屋敷の財政をさらに良くするための、削減や工夫を凝らしていく。
さらには、領民達がみずからお金を得られる施策をいくつも提案した。
その間、わずか一か月。
その一か月で、公爵家の財政はみるみるうちに改善し、かなりの蓄えができるようになったのだ。
さらに言うならば、商業活動が活性化し領民達も豊かになっていく。
その変化は、週に一度しか返ってこないバルトにも明らかだった。
「一体どういうことなんだ? これは」
バルトがみていたのは、近くの街の様子だった。
その街ではいつも朝市が開かれており、その日はカトリーナとバルトは一緒に朝市の様子を見に来ていた。
すると、そこには普段の倍以上の人間が訪れており、旅人達の姿も多く見える。
カトリーナはどこか胸を張りながらバルトに話しかけた。
「どうですか? 大分、人が集まるようになったんですよ! 領民の方も商品開発とか頑張ってくれて! ようやく、周辺の街や領地にこの場所の良さが伝わってきたところです。これからもきっと、たくさんの人が訪れるようになります」
「いや、そうじゃなくて……どうして」
いまだ、困惑顔のバルトだが、カトリーナはどさくにまぎれて手を握りながら想いを語る。
「私、思ったんです。バルト様は王都でもお仕事を頑張ってくれていて。私に会いに来るために、寝る間を惜しんでまで頑張ってくれてる……だから、私も頑張りたいなって思ったんです。今、領地は豊かになろうとしています。もう、領民の方々は自分達でどんどん発展していける下地はできました。時々見にくればきっと大丈夫だと思います。公爵家の財政もだいぶいい感じになってきたんですよ? あとで、収支報告きいてください。頑張ったんですから」
熱のこもった言葉で語るカトリーナの横では、バルトはいまだに険しい表情を浮かべていた。
そんなバルトの表情を見たカトリーナは、くすりと笑みをこぼした。
「どうしてこんなことって顔してる」
「む……まあ、その通りなんだが」
「だって。このままじゃバルト様、体壊しちゃうって思って。だから、私思ったんです。私も王都に行こうって……。バルト様は領地のことが心配だったみたいだから、すこしでも心配事がなくなればって思っていろいろやってみたんです……もしかして、余計なことだった、かな?」
カトリーナが不安気な表情を浮かべながら、バルトの顔を覗き込む。
しばらく黙っていたバルトだったが、突然カトリーナを抱きしめた。
「ははっ! そんなことを考えていたのか。すまない……心配かけたな」
「いえ……。私が、バルト様にあんまり会えなくて寂しかったから」
寂しいという言葉に、バルトはさらに抱きしめる腕に力を込めた。
「それは、俺もだ。君に会えなくなった毎日は、今よりもずっと色がない」
「あら、とても詩的な表現ですね。お花が好きなバルト様らしい」
「だが、本心だ」
そのまましばらく抱き合っていたカトリーナとバルト。
しかし、ふと気づくと、周囲のみなが自分たちを見ながら話していることに気づく。
「領主様と奥方様がおの調子なら、この街も安泰だな」
「やっぱり素敵よね。なんでも、黒獅子と名乗ることを王様がお認めになったそうよ」
「あー、あんな綺麗な奥さんもらったら、そりゃ領主様もがんばっちまうわな! どうして、俺のかみさんは――いでぇ!」
「なに言ってんだい! あんなには、わたしぐらいがお似合いなのさ!」
そして、周囲の生暖かい視線に気づき、ぱっと離れた。
二人を茶化す領民の声に、カトリーナもバルトも顔を赤らめたが、それでも二人は恥ずかしがりなりながらも見つめあい、そして微笑みあった。
「ねぇ、バルト様」
「なんだ?」
「それで、どうです?」
カトリーナの曖昧な問いに、バルトは首をかしげる。
「何がだ?」
「もう……私も王都に行きたいって言ったじゃないですか。それで、行ってもいいですか?」
バルトはその言葉を受け、にやりを笑みを浮かべた。
そして、どこか芝居がかったしぐさで片膝をつくと、カトリーナの手にそっと唇を落とす。
「もちろんだ。一緒に来てくれ、カトリーナ」
「はい、バルト様!」
カトリーナの頑張りが実った瞬間だった。
さらには、領民達がみずからお金を得られる施策をいくつも提案した。
その間、わずか一か月。
その一か月で、公爵家の財政はみるみるうちに改善し、かなりの蓄えができるようになったのだ。
さらに言うならば、商業活動が活性化し領民達も豊かになっていく。
その変化は、週に一度しか返ってこないバルトにも明らかだった。
「一体どういうことなんだ? これは」
バルトがみていたのは、近くの街の様子だった。
その街ではいつも朝市が開かれており、その日はカトリーナとバルトは一緒に朝市の様子を見に来ていた。
すると、そこには普段の倍以上の人間が訪れており、旅人達の姿も多く見える。
カトリーナはどこか胸を張りながらバルトに話しかけた。
「どうですか? 大分、人が集まるようになったんですよ! 領民の方も商品開発とか頑張ってくれて! ようやく、周辺の街や領地にこの場所の良さが伝わってきたところです。これからもきっと、たくさんの人が訪れるようになります」
「いや、そうじゃなくて……どうして」
いまだ、困惑顔のバルトだが、カトリーナはどさくにまぎれて手を握りながら想いを語る。
「私、思ったんです。バルト様は王都でもお仕事を頑張ってくれていて。私に会いに来るために、寝る間を惜しんでまで頑張ってくれてる……だから、私も頑張りたいなって思ったんです。今、領地は豊かになろうとしています。もう、領民の方々は自分達でどんどん発展していける下地はできました。時々見にくればきっと大丈夫だと思います。公爵家の財政もだいぶいい感じになってきたんですよ? あとで、収支報告きいてください。頑張ったんですから」
熱のこもった言葉で語るカトリーナの横では、バルトはいまだに険しい表情を浮かべていた。
そんなバルトの表情を見たカトリーナは、くすりと笑みをこぼした。
「どうしてこんなことって顔してる」
「む……まあ、その通りなんだが」
「だって。このままじゃバルト様、体壊しちゃうって思って。だから、私思ったんです。私も王都に行こうって……。バルト様は領地のことが心配だったみたいだから、すこしでも心配事がなくなればって思っていろいろやってみたんです……もしかして、余計なことだった、かな?」
カトリーナが不安気な表情を浮かべながら、バルトの顔を覗き込む。
しばらく黙っていたバルトだったが、突然カトリーナを抱きしめた。
「ははっ! そんなことを考えていたのか。すまない……心配かけたな」
「いえ……。私が、バルト様にあんまり会えなくて寂しかったから」
寂しいという言葉に、バルトはさらに抱きしめる腕に力を込めた。
「それは、俺もだ。君に会えなくなった毎日は、今よりもずっと色がない」
「あら、とても詩的な表現ですね。お花が好きなバルト様らしい」
「だが、本心だ」
そのまましばらく抱き合っていたカトリーナとバルト。
しかし、ふと気づくと、周囲のみなが自分たちを見ながら話していることに気づく。
「領主様と奥方様がおの調子なら、この街も安泰だな」
「やっぱり素敵よね。なんでも、黒獅子と名乗ることを王様がお認めになったそうよ」
「あー、あんな綺麗な奥さんもらったら、そりゃ領主様もがんばっちまうわな! どうして、俺のかみさんは――いでぇ!」
「なに言ってんだい! あんなには、わたしぐらいがお似合いなのさ!」
そして、周囲の生暖かい視線に気づき、ぱっと離れた。
二人を茶化す領民の声に、カトリーナもバルトも顔を赤らめたが、それでも二人は恥ずかしがりなりながらも見つめあい、そして微笑みあった。
「ねぇ、バルト様」
「なんだ?」
「それで、どうです?」
カトリーナの曖昧な問いに、バルトは首をかしげる。
「何がだ?」
「もう……私も王都に行きたいって言ったじゃないですか。それで、行ってもいいですか?」
バルトはその言葉を受け、にやりを笑みを浮かべた。
そして、どこか芝居がかったしぐさで片膝をつくと、カトリーナの手にそっと唇を落とす。
「もちろんだ。一緒に来てくれ、カトリーナ」
「はい、バルト様!」
カトリーナの頑張りが実った瞬間だった。
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