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第三章 王都攻防編
新しいものたちに囲まれて⑥
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そして、その日からリリとララがカトリーナと一緒にいることになった。
もちろんダシャも必要な時はいるが、当然、リリとララが一緒にいるときは、彼女たちの仕事の穴埋めをダシャがしなければならない。
いままでずっと一緒にいたダシャがいなくなるのは、カトリーナにとってもどこか寂しいものだった。
何事もなく夜は明け、そして朝。
どこか検がある声に目を覚ましたカトリーナの目に飛び込んできたのは、リリの姿だった。
リリは、お手本といった様子で頭をさげ挨拶をする。
「おはようございます。奥様。ただいまお茶の準備をいたしますので少々お待ちくださいませ」
「そう。ありがとう、リリ」
カトリーナは素直にお礼を言うが、リリはぷいっとその場からいなくなり、ティーセットに向かう。
(おぉ……朝からこれはなかなかきついな)
カトリーナはやや硬い雰囲気に苦笑いを浮かべつつ、さっさと身支度をしてしまおうとクローゼットに向かった。
ダシャからの話だと、自分の噂のせいで印象が悪くなってしまっているそうだ。
だとしたら、今、無理に歩み寄ろうとしても無理だろう。
そう割り切ったカトリーナはとりあえずリリのことは気にせずマイペースにやろうと決める。
「リリ。お茶をいただいたらバルト様と一緒に外に行くわね。身支度は私のほうでやるから別のことをしていていいわよ」
「え? でもそれって私の仕事じゃ――」
「いいから。早くしないと、バルト様、仕事に行く時間になっちゃうから」
「は、はい」
追い立てるようにお茶の準備をしてもらい、それを数口、口に含むと紅茶のいい香りが広がってくる。
ちゃんと仕事はやる姿に、カトリーナは感心しながら着替えを始めた。
とりだしたのは、愛用の作業着である。
リリはその服をみて目を見開いた。
「って、まさか……それに本当に着替えるんですか?」
「そのくだりはダシャとやったからもう大丈夫よ。じゃあ、私、バルト様と約束があるから。じゃあね」
「え? あ、ちょっとお待ちください、奥様!」
困惑するリリを置いて、カトリーナは外にでる。
すると、そこには既にバルトが待っており、手にはシャベルや花の種を持っていた。
「おはようございます、バルト様!」
「ああ。おはよう。カトリーナは眠れたか? 王都での初めての夜は……」
「はい! すくなくとも、実家にいたころよりも快適だったから。まあ、ようやく慣れてきた公爵領の本宅より緊張はしましたが」
「まあ、そうだろうな。早く慣れるといいんだが」
「大丈夫ですよ! それより、こっちにも作りましょう? あの屋敷みたいな立派なのは難しいかもしれないけど、ささやかなものならきっと私達でも作れますから」
「ああ。本宅の庭園は父上とのものだったが……王都の草木は、カトリーナと私が作り上げるものになる。楽しみだ」
「……はい。私も楽しみです」
そんな言葉を交わしながら、二人は顔を赤らめる。
程なくして、カトリーナとバルトは本宅の小さな庭の土を掘り起こし始めた。
こんな時こそカトリーナの出番だ。
鍬をもち、垂直に土に鍬を振るう。やはり、その鋭さは目を見張るものがあり、バルトでさえもじっと見惚れるほどだ。
「えい! よしっしょっ!」
「よし、その意気だ」
そこか楽し気に口を開くバルトを横から見て、カトリーナはからかうような口調でかえしていく。
「あら? そんなこと言って、バルト様。手がとまってるじゃないですか?」
「む……すまん」
バルトはその言葉にやや表情が硬かったが、持ってきた種を丁寧に撒き始めた。
カトリーナはその仕草をみて、にっこりとほほ笑んだ。
そんな中、リリは、作業の途中からやってきた。
そして、二人が庭園を作り上げる様子をみて愕然としたのだ
「え、どうして……」
近くに他の使用人達やバルトがいないからこそ出てしまった普段通りの言葉。
その言葉を飲み込みつつ、やはり何度も目の前の光景を見つめてしまう。
「旦那様が笑ってる……それに、奥様も楽しそう」
リリは、自分の頭の中にあったカトリーナ達のイメージと、目の前の現実が全くもって重ならない。
ひたすらに疑問視を浮かべたリリは、カトリーナの土いじりが終わるまで、ただ見ていることしかできなかった。
もちろんダシャも必要な時はいるが、当然、リリとララが一緒にいるときは、彼女たちの仕事の穴埋めをダシャがしなければならない。
いままでずっと一緒にいたダシャがいなくなるのは、カトリーナにとってもどこか寂しいものだった。
何事もなく夜は明け、そして朝。
どこか検がある声に目を覚ましたカトリーナの目に飛び込んできたのは、リリの姿だった。
リリは、お手本といった様子で頭をさげ挨拶をする。
「おはようございます。奥様。ただいまお茶の準備をいたしますので少々お待ちくださいませ」
「そう。ありがとう、リリ」
カトリーナは素直にお礼を言うが、リリはぷいっとその場からいなくなり、ティーセットに向かう。
(おぉ……朝からこれはなかなかきついな)
カトリーナはやや硬い雰囲気に苦笑いを浮かべつつ、さっさと身支度をしてしまおうとクローゼットに向かった。
ダシャからの話だと、自分の噂のせいで印象が悪くなってしまっているそうだ。
だとしたら、今、無理に歩み寄ろうとしても無理だろう。
そう割り切ったカトリーナはとりあえずリリのことは気にせずマイペースにやろうと決める。
「リリ。お茶をいただいたらバルト様と一緒に外に行くわね。身支度は私のほうでやるから別のことをしていていいわよ」
「え? でもそれって私の仕事じゃ――」
「いいから。早くしないと、バルト様、仕事に行く時間になっちゃうから」
「は、はい」
追い立てるようにお茶の準備をしてもらい、それを数口、口に含むと紅茶のいい香りが広がってくる。
ちゃんと仕事はやる姿に、カトリーナは感心しながら着替えを始めた。
とりだしたのは、愛用の作業着である。
リリはその服をみて目を見開いた。
「って、まさか……それに本当に着替えるんですか?」
「そのくだりはダシャとやったからもう大丈夫よ。じゃあ、私、バルト様と約束があるから。じゃあね」
「え? あ、ちょっとお待ちください、奥様!」
困惑するリリを置いて、カトリーナは外にでる。
すると、そこには既にバルトが待っており、手にはシャベルや花の種を持っていた。
「おはようございます、バルト様!」
「ああ。おはよう。カトリーナは眠れたか? 王都での初めての夜は……」
「はい! すくなくとも、実家にいたころよりも快適だったから。まあ、ようやく慣れてきた公爵領の本宅より緊張はしましたが」
「まあ、そうだろうな。早く慣れるといいんだが」
「大丈夫ですよ! それより、こっちにも作りましょう? あの屋敷みたいな立派なのは難しいかもしれないけど、ささやかなものならきっと私達でも作れますから」
「ああ。本宅の庭園は父上とのものだったが……王都の草木は、カトリーナと私が作り上げるものになる。楽しみだ」
「……はい。私も楽しみです」
そんな言葉を交わしながら、二人は顔を赤らめる。
程なくして、カトリーナとバルトは本宅の小さな庭の土を掘り起こし始めた。
こんな時こそカトリーナの出番だ。
鍬をもち、垂直に土に鍬を振るう。やはり、その鋭さは目を見張るものがあり、バルトでさえもじっと見惚れるほどだ。
「えい! よしっしょっ!」
「よし、その意気だ」
そこか楽し気に口を開くバルトを横から見て、カトリーナはからかうような口調でかえしていく。
「あら? そんなこと言って、バルト様。手がとまってるじゃないですか?」
「む……すまん」
バルトはその言葉にやや表情が硬かったが、持ってきた種を丁寧に撒き始めた。
カトリーナはその仕草をみて、にっこりとほほ笑んだ。
そんな中、リリは、作業の途中からやってきた。
そして、二人が庭園を作り上げる様子をみて愕然としたのだ
「え、どうして……」
近くに他の使用人達やバルトがいないからこそ出てしまった普段通りの言葉。
その言葉を飲み込みつつ、やはり何度も目の前の光景を見つめてしまう。
「旦那様が笑ってる……それに、奥様も楽しそう」
リリは、自分の頭の中にあったカトリーナ達のイメージと、目の前の現実が全くもって重ならない。
ひたすらに疑問視を浮かべたリリは、カトリーナの土いじりが終わるまで、ただ見ていることしかできなかった。
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