婚約破棄されたと思ったら次の結婚相手が王国一恐ろしい男だった件

卯月 みつび

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第三章 王都攻防編

ピンぼけ夫婦の奮闘⑥

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 カトリーナは、すぐにドレスから自作のワンピースに着替えた。
 だが、ダシャは丈の短いワンピースに卒倒しそうになり、すぐさまマキシ丈のワンピースへとつくりかえられた。
 バイカラーのワンピースになったからむしろおしゃれなのかな、などとい言いつつカトリーナは満足げに鏡の前でくるりと回った。
 
 おそらくはいまだ納得が言っていないダシャを後目に、カトリーナは同じように着替えさせたセヴェリーノと共にようやく屋敷をでることになった。当然、護衛は遠巻きながらつけてある。

 二人は、徒歩で街の入り口からほど近いところまでやってきた。
 その場所は、日のあたらない暗がりで明らかに街の中でも立地は悪そうだ。カトリーナは初めて踏み入れるその場所に、思わず唾を飲み込んだ。

「この辺りはまだ治安がいいですが、奥はそれなりに危ない奴らもいます。どうしますか? 今日のところはやめておきますか?」

 全く動揺していなさそうなセヴェリーノの姿を見て、カトリーナは思わず強がった。

「だ、大丈夫よ! それよりセヴェリーノの方こそ大丈夫なの? このあたりの元締めの人に会わせられるって言ってたけど」
「それは大丈夫かと。デュランデ家にお世話になっていたときは度々顔つなぎで来たことがありましたから」
「侯爵家がスラムの人間とね……あんまりつつかないほうがよさそうね」

 そんな話をしていると、セヴェリーノはあっという間にスラムの奥へと歩いてきていた。
 立ち止まり、見上げる建物はどこにでもあるような二階建ての家。彼は、カトリーナを一瞥すると乱れぬ所作で中へと入る。
 カトリーナも同じように中に入ると、そこは明かりが届かず暗く、床もきしむ。
 階段を上がり一つの部屋の扉の前に来ると、セヴェリーノは静かにノックを五回した。

 そのまましばらく待っていると、中からくぐもった声がする。

「部屋間違えてるぜ」
「いえ、ここで合っているかと……待ち人は待っていても決ませんから」
「誓いは?」
「他言無用」
「よし、入れ」

 慣れた様子でやり取りするセヴェリーノに驚くカトリーナだが、よくよく考えれば彼はもともとここで暮らしていたのだ。
 頼もしいとばかりに彼の後に続いた。
 中に入ると、そこには数人の男達がいた。
 柄が悪く腕っぷしが強そうな男が数人、部屋のあちこちからこちらを見ている。その中央には、机に座った壮年の男がいた。
 その男はこの場所に不似合いな上品な正装をしており、人好きのしそうなにこやかな笑みを浮かべている。

「セヴェリーノ。久しいですね。そしてそちらのお嬢さん。はじめまして。私はこのあたりを取り仕切っているヘルムートと申します。お名前をお伺いしても?」

 その言葉を受けたカトリーナはそっとセヴェリーノの前に立ちカーテシーをする。
 貴族としての礼をしっかりと示した。

「私はカトリーナ・ラフォン。今日はお願いがあってやってきました。お会いできて光栄です、ヘルムート様」
「不思議なお嬢さんですね……それよりもセヴェリーノ。公爵夫人を連れてきて何を企んでいるのか。場合によっては、日の目を見ることはありませんが……返答はいかに」

 バルトとはまた違った圧力が二人を襲う。
 例えるなら、バルトが真正面から襲う圧倒的な力と暴力ならば、目の前の彼は知らぬ間に首を刈り取られるような狡猾さと鋭さだ。
 ぞくりとした寒気を感じたカトリーナだが、気圧されてなるものかとむしろ一歩前に出た。

「それに関しては、私が。セヴェリーノは私に言われてここに連れてきただけなのです」
「ほぅ……。今のをうけて話せるとはさすがですね。いいでしょう。話は聞きます。ですが、聞き入れられないこともあることはご承知を。おい、お前ら。お茶を入れて差し上げろ」

 そういうと、周りにいた厳つい男達のうちの一人が部屋を出ていく。
 カトリーナとセヴェリーノは、部屋の中央にあるソファへと座った。ほどなくしてお茶が運ばれてくるとヘルムートも正面に座る。

 温和な笑みとは裏腹に、牙を隠し持っているヘルムート。
 カトリーナはその視線を真っ向から受け止め、同じようにほほ笑みを浮かべた。
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