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第三章 王都攻防編
王都コンテスト⑭
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倒れたダズルの横にたたずむバルト。
彼は、しばらくダズルを見つめていたがおもむろに振り向くと、カトリーナの元に近づいてきた。
カトリーナも、バルトに近づいていく。
「遅くなった……カトリーナ」
「うん……、きっと来てくれると思った」
しばらく見つめあう二人。
だが、今はゆっくりしている暇はない。それが互いにわかっていたのだろう。強いまなざしを向けあうと、お互いにやるべきことを伝える。
「カトリーナ。俺は、ここにいるもの達とヨハン殿下を探す。だが、まだ残党がいるかもしれん。まだ王都の民は混乱しているだろう」
「それではバルト様。私はヘルムート様と協力して街の方々への支援を行います。きっと、魔物の被害に合われたひともいると思うから」
二人は同時に頷き、弾かれたように真逆に歩き出した。
カトリーナはいまだ震えているダシャの方に手を置いた。
そして、エリアナを見据えながら声を出す。
「皆さま! この場での危機はバルトによって去りました! 町が安定するまでの間、ここに避難していてくださいませ。エリアナ様。皆さまのこと、お任せしてよろしいですか?」
「え、ええ……ですが、カトリーナは――」
「ヘルムート様と会えばもっと街のことがわかりますから。お父様、お母様、婆や。ここでゆっくり待っていてね? プリ―ニオも、ダシャもお願いね」
この場にいる面々に声をかけると、カトリーナは返事も待たず駆け出した。
同時に、カルラも隣を走る。
「カルラ様!?」
「エミリオに任されたのです。彼が今どこにいるかわかりませんが、役目を全うしないと叱られてしまいますから」
「そう……ありがとね」
「いいんです。嫌じゃ、ありませんから」
二人はそのまま外に駆け出していった。
街にでるとそこはひどい有様だ。
今すぐどうにかできるわけではないと、人々が傷つき倒れている姿を横でみながらカトリーナは走った。
駆け寄れば、目の前の人は助かるかもしれない。だが、街中に大勢いる人々は助けることはできないだろう。今は、この街のことを一番知っているであろうヘルムートのところに行くことが、目的を達成するために必要だと彼女は理解していた。
カルラと共にスラム街に行くと、そこには、ぼろぼろになった王都コンテスト本部の周りに見覚えのある人々がいるのが見えた。
ヘルムートや、リリ、ララ、そしてセヴェリーノだ。
「みんな! 無事だったのね!」
そういって駆け寄ると、ヘルムートはいつもの調子で憎まれ口をたたく。
「全く。どこでなにをしていたのやら。こちらは変な魔物が現れて大変だったのですよ」
「怪我は!? みんな無事なの?」
「怪我人はいます。が、命に別状はない程度です。今は、子供らに頼んで街の様子を見てもらっているところです。魔物の討伐が終わり、今は復旧作業に追われているようですね。それで? 用があってきたのでしょう?」
「そうなのよ! 被害状況がひどい場所や支援が必要な場所を教えてほしくて! 状況が分かり次第、援助を要請するから!」
カトリーナが嬉々とした様子でそういうと、ヘルムートは表情を苦々しく歪める。
「カトリーナ様ならそういうとおもってね。もうまとめてますよ」
「本当に!? さすがヘルムート!」
「こんなことに労力を割くなんて……まあ、あなたらしいですが」
苦笑いを浮かべるヘルムートから資料を受け取ると、カトリーナは使用人達の元に急ぐ。
三人は、ところどころ煤汚れながらも無事なようだった。
「リリ! ララ! セヴェリーノ!」
カトリーナは嬉しそうに駆け寄ると、リリとララも笑顔を浮かべて駆け寄ってくれた。
「奥様! ご無事だったのですね!」
「メイド長と執事長もご無事ですか!?」
「ええ、二人は今王城にいるわよ。だから安心して。あなた達も安全な場所に行かないと――」
カトリーナが避難を促そうとすると、二人は首を横に振る。
「いいえ! カトリーナ様がこちらにいるということは、きっと王都の方々を助けようと思ったのですよね?」
「え? ええ、まぁ、そうだけど」
「なら、奥様のメイドであるこのララも、同じようにがんばります!」
「私達もラフォン家の使用人ですから。民のために何かできればと」
二人の言葉を聞いて、カトリーナは思わず二人を抱きしめた。
「偉い子達ね。じゃあ、ヘルムート様の指示をしっかり聞いてちょうだい。彼なら二人にぴったりな仕事を見つけてくれるわ」
すると、やや離れたところからヘルムートの声が響く。その声は、明らかに非難を含んでいた。
「本当に無茶を言う人だ。つまり、二人に何かあれば私の責任ということになるってことではないですか?」
「わかってるじゃない。じゃあ、よろしくね? 二人も、まだ危険が去ったわけじゃないわ。くれぐれも気を付けて」
「はい、奥様!」
「奥様も、お気をつけて」
二人は頼られた喜びからか、意気揚々と走っていく。見ていると、ヘルムートから指示を受けているようだ。
そんな様子をみながらカトリーナが視線を戻すと、そこには俯いたセヴェリーノがいた。
彼女は、不思議に想いそっと近寄っていく。
「どうしたの……セヴェリーノ? どこか怪我とかしたの?」
問いかけるも、彼は黙り込んだままだ。
カトリーナはしゃがみ込み顔を覗き込む。すると、ようやく彼は口を開いた。
「どうして……ですか?」
「ん?」
セヴェリーノの問いかけ、カトリーナは首をかしげて優しく微笑んだ。
だが、顔を上げたセヴェリーノは悲痛な表情を浮かべ、顔色は真っ青だった。
「どうして……生きているんですか??」
彼は、しばらくダズルを見つめていたがおもむろに振り向くと、カトリーナの元に近づいてきた。
カトリーナも、バルトに近づいていく。
「遅くなった……カトリーナ」
「うん……、きっと来てくれると思った」
しばらく見つめあう二人。
だが、今はゆっくりしている暇はない。それが互いにわかっていたのだろう。強いまなざしを向けあうと、お互いにやるべきことを伝える。
「カトリーナ。俺は、ここにいるもの達とヨハン殿下を探す。だが、まだ残党がいるかもしれん。まだ王都の民は混乱しているだろう」
「それではバルト様。私はヘルムート様と協力して街の方々への支援を行います。きっと、魔物の被害に合われたひともいると思うから」
二人は同時に頷き、弾かれたように真逆に歩き出した。
カトリーナはいまだ震えているダシャの方に手を置いた。
そして、エリアナを見据えながら声を出す。
「皆さま! この場での危機はバルトによって去りました! 町が安定するまでの間、ここに避難していてくださいませ。エリアナ様。皆さまのこと、お任せしてよろしいですか?」
「え、ええ……ですが、カトリーナは――」
「ヘルムート様と会えばもっと街のことがわかりますから。お父様、お母様、婆や。ここでゆっくり待っていてね? プリ―ニオも、ダシャもお願いね」
この場にいる面々に声をかけると、カトリーナは返事も待たず駆け出した。
同時に、カルラも隣を走る。
「カルラ様!?」
「エミリオに任されたのです。彼が今どこにいるかわかりませんが、役目を全うしないと叱られてしまいますから」
「そう……ありがとね」
「いいんです。嫌じゃ、ありませんから」
二人はそのまま外に駆け出していった。
街にでるとそこはひどい有様だ。
今すぐどうにかできるわけではないと、人々が傷つき倒れている姿を横でみながらカトリーナは走った。
駆け寄れば、目の前の人は助かるかもしれない。だが、街中に大勢いる人々は助けることはできないだろう。今は、この街のことを一番知っているであろうヘルムートのところに行くことが、目的を達成するために必要だと彼女は理解していた。
カルラと共にスラム街に行くと、そこには、ぼろぼろになった王都コンテスト本部の周りに見覚えのある人々がいるのが見えた。
ヘルムートや、リリ、ララ、そしてセヴェリーノだ。
「みんな! 無事だったのね!」
そういって駆け寄ると、ヘルムートはいつもの調子で憎まれ口をたたく。
「全く。どこでなにをしていたのやら。こちらは変な魔物が現れて大変だったのですよ」
「怪我は!? みんな無事なの?」
「怪我人はいます。が、命に別状はない程度です。今は、子供らに頼んで街の様子を見てもらっているところです。魔物の討伐が終わり、今は復旧作業に追われているようですね。それで? 用があってきたのでしょう?」
「そうなのよ! 被害状況がひどい場所や支援が必要な場所を教えてほしくて! 状況が分かり次第、援助を要請するから!」
カトリーナが嬉々とした様子でそういうと、ヘルムートは表情を苦々しく歪める。
「カトリーナ様ならそういうとおもってね。もうまとめてますよ」
「本当に!? さすがヘルムート!」
「こんなことに労力を割くなんて……まあ、あなたらしいですが」
苦笑いを浮かべるヘルムートから資料を受け取ると、カトリーナは使用人達の元に急ぐ。
三人は、ところどころ煤汚れながらも無事なようだった。
「リリ! ララ! セヴェリーノ!」
カトリーナは嬉しそうに駆け寄ると、リリとララも笑顔を浮かべて駆け寄ってくれた。
「奥様! ご無事だったのですね!」
「メイド長と執事長もご無事ですか!?」
「ええ、二人は今王城にいるわよ。だから安心して。あなた達も安全な場所に行かないと――」
カトリーナが避難を促そうとすると、二人は首を横に振る。
「いいえ! カトリーナ様がこちらにいるということは、きっと王都の方々を助けようと思ったのですよね?」
「え? ええ、まぁ、そうだけど」
「なら、奥様のメイドであるこのララも、同じようにがんばります!」
「私達もラフォン家の使用人ですから。民のために何かできればと」
二人の言葉を聞いて、カトリーナは思わず二人を抱きしめた。
「偉い子達ね。じゃあ、ヘルムート様の指示をしっかり聞いてちょうだい。彼なら二人にぴったりな仕事を見つけてくれるわ」
すると、やや離れたところからヘルムートの声が響く。その声は、明らかに非難を含んでいた。
「本当に無茶を言う人だ。つまり、二人に何かあれば私の責任ということになるってことではないですか?」
「わかってるじゃない。じゃあ、よろしくね? 二人も、まだ危険が去ったわけじゃないわ。くれぐれも気を付けて」
「はい、奥様!」
「奥様も、お気をつけて」
二人は頼られた喜びからか、意気揚々と走っていく。見ていると、ヘルムートから指示を受けているようだ。
そんな様子をみながらカトリーナが視線を戻すと、そこには俯いたセヴェリーノがいた。
彼女は、不思議に想いそっと近寄っていく。
「どうしたの……セヴェリーノ? どこか怪我とかしたの?」
問いかけるも、彼は黙り込んだままだ。
カトリーナはしゃがみ込み顔を覗き込む。すると、ようやく彼は口を開いた。
「どうして……ですか?」
「ん?」
セヴェリーノの問いかけ、カトリーナは首をかしげて優しく微笑んだ。
だが、顔を上げたセヴェリーノは悲痛な表情を浮かべ、顔色は真っ青だった。
「どうして……生きているんですか??」
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