39 / 66
4-10
しおりを挟む
さて、これはどうやったら伝わるのだろうか。これまでにも何回か話したような気はするけど。
「えっとさ。これまでにも、何回か言ったとは思うけど。」
「その、星を見るのは、好きなんだよね。」
「うん。」
良かった、それは覚えててくれたらしい。
「でもさ、さっきのスピカとか、恒星だったら、それ使わなくても、あんまり変わんなかったから。」
そうして、僕は少し上体を倒して、夜空を見上げる。
自分から見てみたい、そんなことを言い出して、無茶苦茶な事を言っている、そんな自覚はあるけれど。
「だから、こうして見上げるだけでも、良いかなって。せっかくたくさんあるんだから。
それをこうして、ぼんやり見上げるだけ、それでいいかなって、そう思っちゃったんだよね。」
こういう時、両親なら、祖父母なら、どう説明するのだろうか。
生憎と、自分が何を考えているか、たまにしか人に話してないし、そもそも話すほど考えてもいない。
そんなことが、これまでやってこなかったことが、なんだかもどかしく感じられてしまう。
「そっか。うん、よくわかるな。」
だが、幸いにも、下手糞な僕の説明でも、彼女にはきちんと伝わったようだ。
それに頷いて、彼女も一度皿を置いてから、空を見上げる。
「私も、最初は、そうだったし。今だって、こうして見ているのも好きだから。」
「えっと、そうなんだ。」
その言葉にちょっと驚いてしまう。だったら、あの大きな、重たいだろう望遠鏡は、必要ないだろうにと、そう思ってしまうから。
「うん、これも好きだし、ああして覗き込むのも好きなんだ。」
そうして、彼女は僕の方を見ながら、悪戯気に笑う。
「私だって、恒星を見るのは、そんなに好きじゃないし。」
「え。そうなの。」
「うん、部活動としてね、記録を取るから、有名な恒星くらいは、流石にやらなきゃって、そう思ってるだけだから。」
「えっと、それじゃ、普段は惑星見てるの。」
そう尋ねてみれば、確かに惑星は僕も覗き込んで、わくわくしたし、楽しかった、彼女もそっちの方が楽しいのだろうか。
「他にも、えっと、星雲とか、星団とかって、聞いたことあるかな。」
「えっと、他の銀河系だっけ。」
写真で見た時、そんな姿をしていたように思うし。
「うーん、その、一応違うものかな。論争があって、分類もされてるけれど、銀河団が観測の精度によっては星団に見えたり、昔は銀河を星雲って呼んだりしてたから。」
「あ、まって、うん、今はそのあたりは良いや。」
何となく、嫌な予感がして彼女の言葉を止める。
このまま話を聞いていたら、恐らくまた僕の良く分からない単語がひたすら並びたてられて気がするから。
「えっと、M51とかM97とかだっけ、春に見えるのって。」
「本当によく覚えてるね。子持ち星雲と、ふくろう星雲後は、割と近い距離に確認できるM81と82とかも。」
「あ、名前付いてるのもあるんだ。」
「そのあたりは、命名権を行使するか、みたいなところがあるから。」
「へー、そういうのも見れるんだ。」
「時間と、位置で言えば、今名前を出したのは、北斗七星の周りだから、見えるかな。」
そう言われると、興味が湧いてしまう。ただ、そろそろ時間も時間だからと、僕は靴を履いてギターの方に向かう。
練習は、軽く指を動かしただけで止めてしまったし、もう少し続けたい、そんな気持ちがある。
そんな僕の様子を、残念そうに見る彼女に、僕から言える言葉は、簡単な物だ。
「えっと、また明日見せてもらってもいい。」
「ああ、そうだよね。もともと練習に来てるんだもんね。」
そう、僕がギターケースを開けながら言えば、彼女は嬉しそうに納得してくれる。
「でも、そっか。他の銀河は見えるんだ。」
「うん、春は特に。」
「へー。恒星は見えないのに、他の銀河は見えるって言うのは、なんだか不思議な感じだね。」
「そうかも。そうだね。えっとね、私たちの目には、恒星に見えてるものが、実は、っていう事もあるんだよ。」
つまり、それだけ途方もない距離離れているという事だろう。
「そっか、えっと、なんだっけ、創造の柱だっけ。」
「流石にそれは、見えないかなぁ。それに蛇座だから。」
「あ、夏の星座か。」
「うん、一応、それのあるわし星雲くらいは、観測できると思うけど。
あれを見ようと思っても、どうにか見えて、黒い影くらいにしか見えないと思うよ。写真を撮って、加工したりしたら、ひょっとしたら見えるかもしれないけど。」
取り出したギター、その弦を触りながら聞いていた彼女の言葉に驚き、思わず変な音が鳴る。
「え。そうなの。」
「うん。えっとね、今は持ってきてないけど、その、撮った写真を、取り込んで、加工すると、覗き込んでた時に気が付かなかったようなものが見えて来るんだ。」
「ああ、だから写真撮ってたんだ。」
「うん。本当は、カメラもこだわったほうが、そんな話は聞くけど、私は先に望遠鏡買っちゃったから。」
そうして、彼女が苦笑いをして見せる。
その言葉に、案外、こうして僕たちでも手に入れられる、そんなものでも色々と分かるんだと、なんだか感心してしまう。
「そっか、意外と、大掛かりじゃなくても、色々できるんだ。」
「だって、これにしたって、昔の人が使ってたのより、性能、良いんだよ。」
「えっとさ。これまでにも、何回か言ったとは思うけど。」
「その、星を見るのは、好きなんだよね。」
「うん。」
良かった、それは覚えててくれたらしい。
「でもさ、さっきのスピカとか、恒星だったら、それ使わなくても、あんまり変わんなかったから。」
そうして、僕は少し上体を倒して、夜空を見上げる。
自分から見てみたい、そんなことを言い出して、無茶苦茶な事を言っている、そんな自覚はあるけれど。
「だから、こうして見上げるだけでも、良いかなって。せっかくたくさんあるんだから。
それをこうして、ぼんやり見上げるだけ、それでいいかなって、そう思っちゃったんだよね。」
こういう時、両親なら、祖父母なら、どう説明するのだろうか。
生憎と、自分が何を考えているか、たまにしか人に話してないし、そもそも話すほど考えてもいない。
そんなことが、これまでやってこなかったことが、なんだかもどかしく感じられてしまう。
「そっか。うん、よくわかるな。」
だが、幸いにも、下手糞な僕の説明でも、彼女にはきちんと伝わったようだ。
それに頷いて、彼女も一度皿を置いてから、空を見上げる。
「私も、最初は、そうだったし。今だって、こうして見ているのも好きだから。」
「えっと、そうなんだ。」
その言葉にちょっと驚いてしまう。だったら、あの大きな、重たいだろう望遠鏡は、必要ないだろうにと、そう思ってしまうから。
「うん、これも好きだし、ああして覗き込むのも好きなんだ。」
そうして、彼女は僕の方を見ながら、悪戯気に笑う。
「私だって、恒星を見るのは、そんなに好きじゃないし。」
「え。そうなの。」
「うん、部活動としてね、記録を取るから、有名な恒星くらいは、流石にやらなきゃって、そう思ってるだけだから。」
「えっと、それじゃ、普段は惑星見てるの。」
そう尋ねてみれば、確かに惑星は僕も覗き込んで、わくわくしたし、楽しかった、彼女もそっちの方が楽しいのだろうか。
「他にも、えっと、星雲とか、星団とかって、聞いたことあるかな。」
「えっと、他の銀河系だっけ。」
写真で見た時、そんな姿をしていたように思うし。
「うーん、その、一応違うものかな。論争があって、分類もされてるけれど、銀河団が観測の精度によっては星団に見えたり、昔は銀河を星雲って呼んだりしてたから。」
「あ、まって、うん、今はそのあたりは良いや。」
何となく、嫌な予感がして彼女の言葉を止める。
このまま話を聞いていたら、恐らくまた僕の良く分からない単語がひたすら並びたてられて気がするから。
「えっと、M51とかM97とかだっけ、春に見えるのって。」
「本当によく覚えてるね。子持ち星雲と、ふくろう星雲後は、割と近い距離に確認できるM81と82とかも。」
「あ、名前付いてるのもあるんだ。」
「そのあたりは、命名権を行使するか、みたいなところがあるから。」
「へー、そういうのも見れるんだ。」
「時間と、位置で言えば、今名前を出したのは、北斗七星の周りだから、見えるかな。」
そう言われると、興味が湧いてしまう。ただ、そろそろ時間も時間だからと、僕は靴を履いてギターの方に向かう。
練習は、軽く指を動かしただけで止めてしまったし、もう少し続けたい、そんな気持ちがある。
そんな僕の様子を、残念そうに見る彼女に、僕から言える言葉は、簡単な物だ。
「えっと、また明日見せてもらってもいい。」
「ああ、そうだよね。もともと練習に来てるんだもんね。」
そう、僕がギターケースを開けながら言えば、彼女は嬉しそうに納得してくれる。
「でも、そっか。他の銀河は見えるんだ。」
「うん、春は特に。」
「へー。恒星は見えないのに、他の銀河は見えるって言うのは、なんだか不思議な感じだね。」
「そうかも。そうだね。えっとね、私たちの目には、恒星に見えてるものが、実は、っていう事もあるんだよ。」
つまり、それだけ途方もない距離離れているという事だろう。
「そっか、えっと、なんだっけ、創造の柱だっけ。」
「流石にそれは、見えないかなぁ。それに蛇座だから。」
「あ、夏の星座か。」
「うん、一応、それのあるわし星雲くらいは、観測できると思うけど。
あれを見ようと思っても、どうにか見えて、黒い影くらいにしか見えないと思うよ。写真を撮って、加工したりしたら、ひょっとしたら見えるかもしれないけど。」
取り出したギター、その弦を触りながら聞いていた彼女の言葉に驚き、思わず変な音が鳴る。
「え。そうなの。」
「うん。えっとね、今は持ってきてないけど、その、撮った写真を、取り込んで、加工すると、覗き込んでた時に気が付かなかったようなものが見えて来るんだ。」
「ああ、だから写真撮ってたんだ。」
「うん。本当は、カメラもこだわったほうが、そんな話は聞くけど、私は先に望遠鏡買っちゃったから。」
そうして、彼女が苦笑いをして見せる。
その言葉に、案外、こうして僕たちでも手に入れられる、そんなものでも色々と分かるんだと、なんだか感心してしまう。
「そっか、意外と、大掛かりじゃなくても、色々できるんだ。」
「だって、これにしたって、昔の人が使ってたのより、性能、良いんだよ。」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~
root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。
そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。
すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。
それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。
やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」
美人生徒会長の頼み、断れるわけがない!
でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。
※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。
※他のサイトにも投稿しています。
イラスト:siroma様
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる