もういらないと言われたので隣国で聖女やります。

ゆーぞー

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「聖女様、宰相のギルバート・ニコスと申します。聖女様にはまず、我が国に結界をお願いします」

 ギルバート様は銀縁の眼鏡をかけていて、静かですが威厳のある話し方をされる方でした。陛下も皇后陛下もアンディ様もエディ様もみんな静かに黙ってしまいました。

 結界。つまり幕を張ればいいのですね。私は頭の中で思い浮かべました。頭の中で幕を張る。

「あっ」
 アンディ様が小さく呟きました。続いてエディ様も
「嘘だろ」
 と、呟きます。

 ギルバート様を見ると眉がピクリと動きました。

「もう、ですか」

 ギルバート様の声は最初と違い少し驚いたように聞こえました。

「こんな感じでよろしいでしょうか」

 インディアルでは祈りの間で儀式としてやらなくては無理でしたが、どういうわけかレートレースでは簡単にできました。もう少し厚くした方がいいか、範囲を広げた方がいいか、他の方に確かめていただきたいところです。実際のところ、レートレースの国がどこまでなのかよくわからず、何となくでやってしまったところもあるのです。

「上出来でございます」

 ギルバート様の目が少し大きくなったようです。ここの国の方はみなさん、幕のことがわかるのですね。アジャール様はわからないままでしたが。

「こんな簡単にやれるもんなのか?」

 陛下の言葉に私は戸惑いました。確かにこれでは働いたことにならないでしょう。もう少し何かしないと国においてもらえないかもしれません。

「陛下、失礼を承知でお願い申し上げます。私の手を少しの間握ってはいただけませんか」

 エディ様がにっこり笑ってこちらを見てくださいました。エディ様の笑顔に私も安心します。

「こうかね」

 私は陛下に魔力を流しました。陛下は少しお疲れのようでした。それを無くすつもりで魔力を流していきます。陛下の頬が少しずつ赤みを増していきます。陛下の目が大きく見開かれて、私のことをじっと見つめてくださいました。

「皇后陛下様もよろしいでしょうか」

 陛下の後は皇后様です。皇后様もやはりお疲れのご様子でした。陛下へは力強い魔力を流しましたが、皇后様へは優しい魔力を流しました。

「まぁ」

 皇后様はうっとりとした表情をなさっています。本当にお綺麗な方で私は何だか恥ずかしくなってしまいました。

「お、俺もいいかな」

 アンディ様にももちろん魔力を流します。アンディ様はお疲れではありませんでしたが、エネルギーが身体の中で暴れまくっている感じがしました。それで静かに流れるように魔力で中和します。

 そして最後はギルバート様です。

「私もですか」

 ギルバート様は遠慮するような様子でした。しかし陛下が
「ギル、お前もやってもらえ」
と、おっしゃいました。

「しかし、聖女様がお疲れになりますよ。国に結界を張るだけで大変な魔力の消費です」
「確かに馬車で移動してきて寝ていないのだろう?」

 アンディ様が心配そうにおっしゃいました。皇后様も眉を寄せ難しいお顔をしています。

「いえ、大丈夫ですよ」

 私は笑って言います。魔力が減っている感じは全くありません。まだまだ使わないといけないと思っています。

「本当に大丈夫ですか」

 ギルバート様は恐る恐るという感じで手を出してこられました。私はその手を握ります。ギルバート様はお疲れでもなく、落ち着いた様子が感じられました。それでも魔力を流していくとどんどん冷静さが増していく感じがしました。

「素晴らしいですね」

 ギルバート様の頬が若干緩んだ感じがしました。

「では今日はゆっくりくつろいで、仕事のことなどはまた後ほど話すことにしよう」

 陛下のお言葉に私は深々とお辞儀をしました。この後は朝食をいただけるそうです。そういえば寝ていないことに気が付きましたが、徹夜は以前からよくしていたので特に問題ありません。それよりこのドレスを脱ぎたくてたまりませんでした。これでは食事が入らないと思います。
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