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「魔獣たちの国ができた」

 フフル様に言われ、私は首を傾げました。魔獣たちの国とはどういうことでしょうか。

「お前たちがインディアルと呼んでいた国は、今や魔獣しかいない」
「ふえ?」

 私はびっくりして聞き返そうとして、おかしな声が出てしまいました。

「では人間はもういないというのですか?」
「あぁ、人間と呼べるものはもういない」

 アマンダさんやアジャール様はどうなってしまったのでしょうか。インディアルの人たちはもうみんないないということなら、私が育った孤児院の先生たちはレートレースに来れたのでしょうか。

「人間はどうなったのですか?」

「死んだ者もいるし、瘴気のせいで魔獣に取り込まれた者もいる」

 魔獣に取り込まれる。私は頭の中で整理しました。魔獣に取り込まれた人間はもはや人間とは呼べないようです。姿が変わってしまうのでしょうか。

「アリス、気にしても仕方がない」

 フフル様にまた注意されてしまいましたが、私はやはり心配です。アマンダさんは魔獣になってしまったのでしょうか。それとも亡くなってしまった?もしかしたら、こっそりこちらに戻って来てるかも。

    私はいろいろ考えました。少しだけしか話しませんでしたが、どんな状況なのか知りたいと思います。人が不幸になるのは嫌です。

「アリス、人に害をなす者だけがあの国にいる。瘴気に気づいた人はみんなレートレースに来ている。来なかったのなら、それはあの国で生きていける人間なんだ。だから何も気にせずにあの国で暮らせるなら暮らしていけばいいんだよ」

 エディ様の説明によると、インディアルを逃げ出してきた人はかなりの人数だそうです。その人たちが新しくマグヌス様の領地で生活するそうです。

「アマンダは自分の意思で向こうに行ったんだ。アリスが気にすることはないんだよ」

   そう言われたら、もう気にすることはできなくなりました。私ができることは、レートレースを守ることです。

    魔獣がこっちに来てしまわないようにしなくてはなりません。

    
「変な奴らが来るなら、我が戦ってやる」

 フフル様がキッパリと宣言してくださいました。それを聞いてエディ様とグレン様が驚いています。

「過剰戦力にならないか?」
「その気になっているのならいいのでは?」

「俺も頑張るよー」

 ラビさんがニコニコ笑って言うので、私もそれならいいかと思いました。あの国で幸せに生きていけるなら、それでいいんじゃないかと思いました。

「ではまたゲートに連れていって頂けますか?念入りに幕を張ります」

   エディ様に賛成していただいたので、近いうちにゲートに行くことになりました。フフル様も何故だか一緒に行って頂けるようです。
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