恋愛フィルター〜恋愛トーナメント第2章〜

天咲琴乃 あまさき ことの

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エピローグ

恋愛フィルターから恋愛周波数へ

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 エピローグ ― 恋愛周波数 ―



 夜が更けてから、雨音のスマートフォンが小さく震えた。
 なくるからの着信だった。


「起こしちゃった?」
「大丈夫。ちょうど原稿を閉じたところ」



 通話越しの声は、いつもより少しだけ近い。



 距離が縮んだというより、周波数、ラジオのチャネリングが合っている感じがした。



「最近さ、ラジオで話してると、沈黙が気にならなくなってきて」



 なくるはそう言って、軽く息を吐く。
「前は、間を埋めなきゃって思ってた。でも今は……無理しなくていいなって」




 雨音は、静かにうなずいた。


「わかります。私も、誰かと話してて疲れないって、久しぶりで」



 しばらく、言葉のない時間が流れる。
 切らない。急がない。


 それが、自然に共有されている。




「……もしよかったら」
 なくるの声が、ほんの少し低くなる。




「今度、外で話さない?
 収録とか仕事じゃなくて、ただ」
 雨音は、一瞬だけ考えた。
 でも不安は、なかった。



「いいですね」
 それだけで、十分だった。
「昼がいい?」



「はい。人の多い時間帯の方が、安心かも」
「じゃあ、昼で。場所は……静かなところがいいな」



 条件を並べるようでいて、どれも相手を思っている。




 恋人同士の約束じゃない。


 でも。




「楽しみにしてます」



 雨音がそう言うと、なくるは通話の向こうで小さく笑った。




「うん。俺も」




 通話が切れたあと、部屋には静けさが戻る。




 でも、孤独ではなかった。
 まだ名前はついていない。
 けれど、確かに同じ周波数で呼吸している。
 雨音は思う。





 次の物語は、もう始まっている。




 ――恋愛周波数。
 それは、近づくための合図ではなく、
 確かめ合うための音だった。
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