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外伝53話 ここから先は俺が相手っす
しおりを挟む「……この程度、ですか……些か期待外れですケイン」
「くっ……」
戦闘が再開して10分。
状況は悪い……いや、そんなレベルでは無い。圧倒的に推されている。
もういつ殺されてもおかしく無いくらいに僕はボコボコにされていた。
しかも、シムはスキルなど一つも使っていない。
純粋な身体能力でここまでやっているのだ。
「YES、理解しました。貴方が弱いのでは無い。ワタシが強くなり過ぎたようですね。今ならばあの神鈴木にすら届くかもしれない……」
「自画自賛かよ。気が早いんじゃねえの?まだ僕すら倒してないのに」
すると、シムは随分嬉しそうに笑い始めた。
「HAHAHA、面白いですね。貴方より強い人間はこの世に存在しません。いるとしたら神鈴木かルーナの2人だけです。それでもルーナはワタシの敵ではないと分かった以上、残るは神鈴木のみ」
「違えよ、そうじゃない。お前はまだ僕に勝っていないって事だ」
「強がりを」
「僕が強さを認めた男が1人いる。アイツの方が強かったと思うぜ?なあ!ガルド!」
心の内にいるガルドに向けてケインは呼びかける。
それに呼応する様に、ケインの力が大きく跳ね上がった。
そう、ケインの十八番である『狂化』を発動したのだ。
今度は20%では無く、35%だ。
身体能力の上昇具合は今までの比ではなく、総合的なステータスならガルドを超えているかもしれない。
「まだまだこれからって事だ!」
ケインはダークレイによって壊れた剣をそっと撫でた。
(今までありがとう……本当によく着いてきてくれた!)
そして、半壊した剣をシムに向けて投げた。
剣には投擲の効果が適用されてシムに向けて勢いよく飛ぶ。
それと同時にケインは走り出した。
いつも通り、投擲を囮にして自らも突っ込む戦法である。
だが、今回はおまけをつけた。
「ファイヤーレイ!」
ケインは魔術を発動した。
これでシムは剣、魔術、そしてケイン本人を警戒しなければいけない。
「これで終わりだ!」
ケインは突っ込む直前に縮地した。
シムの背後にである。
しかし、その縮地を読んでいたシムは剣と魔術を無視してケインへ殴りかかる。
……が、そこまでケインの読み通り。
それを見越して更にもう一度縮地を発動……
今度はシムの真上にである。
「これなら対処出来ねぇだろ!」
その通り、シムには読めなかった。
ケインはありったけの力で殴りかかる……
「えっ」
が、次の瞬間ダメージを喰らったのは何故かケインの方であった。
いつの間にやら遥か遠くに吹き飛ばされていたのだ。
見知らぬ山の岩山にめり込んでおり、内臓はほとんど潰されていた。
右腕は無くなっており、目も恐らく片方何処かへと消えている。
「なっ……何がゴボッ!」
状況から見てシムの攻撃を喰らってここまで飛ばされたのだろう。
何かのスキルか?それとも魔法か?
だが、あり得ない。完全にシムの虚をついたはずである。
「まざっ……か」
「YES、そのまさかです。ワタシはただの反応で貴方の攻撃を見切ってカウンターを喰らわしました。それと、貴方には悪いですが、先程の攻撃はスキルなどは使っていません。通常攻撃です」
「まぢっ……が」
喉も潰されて上手く喋れない。
体がボロボロで、もう動くこともままならない。
ケインは絶望的状況にいる。
いつもの様に打開策すら考える暇がない。
ケインの心は完全に折れてしまったのだ。
そして、ケインは気絶した。
「OK、終わりですねケイン。中々楽しめましたよ。ただ、ワタシと『スキル重複』は相性が良過ぎた。残念でしたね」
そう言ってシムはダークレイを発動した。
「さようなら」
ダークレイは、ケインに向けて正確に放たれ、あとは死を待つのみである。
シムは終わった、とばかりに背を向けて帰り始めた。
……だが、その直後後ろからダークレイが、シム本人に直撃した。
「グヌッ!?理解不能!何故ですか!あの攻撃を一体どうやって……」
振り返ると、そこには黒髪のケインらしき人間が立っていた。
手を前に出したまま……
「NO……まさか、跳ね返した?ワタシのダークレイを?あり得ない……そんな事あるはずが無い!」
ケインらしき人は答える。
「あり得ない……、それを覆してきた人を俺は知ってるっす。今は少し休んでいるだけ。だから、俺は彼女が帰ってくるまで貴方の相手をしてあげましょう」
「NO……貴方は……誰なんですか?」
「俺の名は魔王、いや、違うっすね……俺の名前はガルド!勇者パーティーの一員っすよ!」
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