5 / 9
5話
しおりを挟む
晴天に恵まれた9月12日、土曜日。訪れたのは市内北部にある大きな商業施設。スターパレスショッピングモールである。市内最大の商業施設で、地方都市には似合わない規模である。最寄り駅は六礼駅で、地方線である星川電鉄に乗って行ける学生にとって最大のデートスポットである。まぁ、今回の目的はデートじゃないけど……。多分。
「お待たせしました」
駅前の公園にいる先輩を見付けて駆け寄る。
「待ってないよ。鈴原さん、可愛い格好だね」
「あ……ありがとうございます。まさか先輩が女性を褒めるという気回しの出来る人だなんて思ってもみませんでした」
すごく失礼なことを言ってしまったけれど、正直な本音である。あ、だからもっと失礼か。ちなみに、今日の私の格好は白いブラウスに黒のフレアスカートを合わせ、赤系のカーディガンを羽織っている。
「えっと……僕だってそれくらいするよ」
「そ、そうですか。では、行きましょうか」
そう言って私がスタパの方へ行こうとすると、後ろから先輩のちょっと不満げな声が聞えてきた。
「僕はここ、よく来るんだけどなぁ」
「でも、服を買うのがメインじゃないでしょ? 男子って。本屋さんとかカードショップとか行ってそう」
「まぁ……そうだね」
振り向いた私の目の前には私服姿の藤堂先輩。白メインのTシャツの上にデニム地のワイシャツをひっかけ、ボトムスはベージュの七分丈パンツ。似合っているし、無理に背伸びしている感じもしない。褒められた手前、褒めたいけど恥ずかしくて言えそうにない。服の話から抜け出すために、前々から気になっていた質問をぶつける。
「そういえば、先輩ってお姉さんいますか?」
失礼な話、先輩個人のコーデとは思えない。だって首元には剣を模ったアクセまでしているんだもの。そんなお洒落上級者には見えない。
「いるけど……なんで?」
「そう思っただけですよ」
……本当にいたよ。前から思っていたけれど、ちょっと女々しいところとかあるし、女性の強い家庭で過ごしていそうだよ。
「えっと……行こうか。でも僕、本当にここにはよく来るんだよ?」
市内ではどっちかというと海寄りにある南中学校を卒業した私と違って、家が市内北部にある先輩はスターパレスショッピングモールに足を運ぶこともそれなりにあったらしい。でも、各テナントで売っている服の趣向までは当然分かっていない。
「それでも、男女で見る部分が違うの! 分かりました?」
「そうだね……」
「取り敢えず、服を見に行くよ」
「プレゼントするの?」
「まさか。そんなことしたら好意がバレバレ。あくまでも自然に」
まぁ、男子が女子に服や身に着けるものをプレゼントすると、下心があるというのが定説のため、実際にプレゼントするのは躊躇われるため、勧めるだけに留めるのだが。
「難しいね」
「それを頑張らないと、です」
「……うん」
そんな感じで、私と先輩は店内へと向かう。
「お待たせしました」
駅前の公園にいる先輩を見付けて駆け寄る。
「待ってないよ。鈴原さん、可愛い格好だね」
「あ……ありがとうございます。まさか先輩が女性を褒めるという気回しの出来る人だなんて思ってもみませんでした」
すごく失礼なことを言ってしまったけれど、正直な本音である。あ、だからもっと失礼か。ちなみに、今日の私の格好は白いブラウスに黒のフレアスカートを合わせ、赤系のカーディガンを羽織っている。
「えっと……僕だってそれくらいするよ」
「そ、そうですか。では、行きましょうか」
そう言って私がスタパの方へ行こうとすると、後ろから先輩のちょっと不満げな声が聞えてきた。
「僕はここ、よく来るんだけどなぁ」
「でも、服を買うのがメインじゃないでしょ? 男子って。本屋さんとかカードショップとか行ってそう」
「まぁ……そうだね」
振り向いた私の目の前には私服姿の藤堂先輩。白メインのTシャツの上にデニム地のワイシャツをひっかけ、ボトムスはベージュの七分丈パンツ。似合っているし、無理に背伸びしている感じもしない。褒められた手前、褒めたいけど恥ずかしくて言えそうにない。服の話から抜け出すために、前々から気になっていた質問をぶつける。
「そういえば、先輩ってお姉さんいますか?」
失礼な話、先輩個人のコーデとは思えない。だって首元には剣を模ったアクセまでしているんだもの。そんなお洒落上級者には見えない。
「いるけど……なんで?」
「そう思っただけですよ」
……本当にいたよ。前から思っていたけれど、ちょっと女々しいところとかあるし、女性の強い家庭で過ごしていそうだよ。
「えっと……行こうか。でも僕、本当にここにはよく来るんだよ?」
市内ではどっちかというと海寄りにある南中学校を卒業した私と違って、家が市内北部にある先輩はスターパレスショッピングモールに足を運ぶこともそれなりにあったらしい。でも、各テナントで売っている服の趣向までは当然分かっていない。
「それでも、男女で見る部分が違うの! 分かりました?」
「そうだね……」
「取り敢えず、服を見に行くよ」
「プレゼントするの?」
「まさか。そんなことしたら好意がバレバレ。あくまでも自然に」
まぁ、男子が女子に服や身に着けるものをプレゼントすると、下心があるというのが定説のため、実際にプレゼントするのは躊躇われるため、勧めるだけに留めるのだが。
「難しいね」
「それを頑張らないと、です」
「……うん」
そんな感じで、私と先輩は店内へと向かう。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
痩せたがりの姫言(ひめごと)
エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。
姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。
だから「姫言」と書いてひめごと。
別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。
語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる