そんなのって反則です!

楠富 つかさ

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5話

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 晴天に恵まれた9月12日、土曜日。訪れたのは市内北部にある大きな商業施設。スターパレスショッピングモールである。市内最大の商業施設で、地方都市には似合わない規模である。最寄り駅は六礼駅で、地方線である星川電鉄に乗って行ける学生にとって最大のデートスポットである。まぁ、今回の目的はデートじゃないけど……。多分。

「お待たせしました」

 駅前の公園にいる先輩を見付けて駆け寄る。

「待ってないよ。鈴原さん、可愛い格好だね」
「あ……ありがとうございます。まさか先輩が女性を褒めるという気回しの出来る人だなんて思ってもみませんでした」

 すごく失礼なことを言ってしまったけれど、正直な本音である。あ、だからもっと失礼か。ちなみに、今日の私の格好は白いブラウスに黒のフレアスカートを合わせ、赤系のカーディガンを羽織っている。

「えっと……僕だってそれくらいするよ」
「そ、そうですか。では、行きましょうか」

 そう言って私がスタパの方へ行こうとすると、後ろから先輩のちょっと不満げな声が聞えてきた。

「僕はここ、よく来るんだけどなぁ」
「でも、服を買うのがメインじゃないでしょ? 男子って。本屋さんとかカードショップとか行ってそう」
「まぁ……そうだね」

 振り向いた私の目の前には私服姿の藤堂先輩。白メインのTシャツの上にデニム地のワイシャツをひっかけ、ボトムスはベージュの七分丈パンツ。似合っているし、無理に背伸びしている感じもしない。褒められた手前、褒めたいけど恥ずかしくて言えそうにない。服の話から抜け出すために、前々から気になっていた質問をぶつける。

「そういえば、先輩ってお姉さんいますか?」

 失礼な話、先輩個人のコーデとは思えない。だって首元には剣を模ったアクセまでしているんだもの。そんなお洒落上級者には見えない。

「いるけど……なんで?」
「そう思っただけですよ」

 ……本当にいたよ。前から思っていたけれど、ちょっと女々しいところとかあるし、女性の強い家庭で過ごしていそうだよ。

「えっと……行こうか。でも僕、本当にここにはよく来るんだよ?」

 市内ではどっちかというと海寄りにある南中学校を卒業した私と違って、家が市内北部にある先輩はスターパレスショッピングモールに足を運ぶこともそれなりにあったらしい。でも、各テナントで売っている服の趣向までは当然分かっていない。

「それでも、男女で見る部分が違うの! 分かりました?」
「そうだね……」
「取り敢えず、服を見に行くよ」
「プレゼントするの?」
「まさか。そんなことしたら好意がバレバレ。あくまでも自然に」

 まぁ、男子が女子に服や身に着けるものをプレゼントすると、下心があるというのが定説のため、実際にプレゼントするのは躊躇われるため、勧めるだけに留めるのだが。

「難しいね」
「それを頑張らないと、です」
「……うん」

 そんな感じで、私と先輩は店内へと向かう。
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