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#5 東雲柚葉

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「うふふ、寮でなんとなく声をかけた女の子がまさかいちごちゃんだったなんてね」

 なぜか由梨ちゃんと東雲先輩に両腕をがっちりホールドされたままの帰り道。柔らかい感触にそわそわとしてしまう。お風呂で見ているはずなのに、こういうシチュエーションの方がかえって恥ずかしさをあおる。

「じゃあ改めて自己紹介。東雲柚葉よ。柚子にちなんでお茶会に誘われたの。高等部一年の時に、先代の柚子の人と入れ替わりでね。中等部の頃は高等部の先輩と付き合ってたんだけど、その先輩が卒業してちょうどフリーだったから加入したの」

 ……さらりと言っているが中学生の頃に高等部の先輩と付き合っていたって。星花じゃよくあることなのだろうか。女の子同士のお付き合いってそもそも何をするんだろう。

「中等部の頃は社交ダンス部にいたんだけど、背が伸びて男性パートを踊らなくちゃいけなくなって、それが嫌で辞めちゃった。だから今は帰宅部ね。高校生活最後の恋人が君みたいな可愛い子で嬉しいわ」
「えっとまだ恋人じゃ……ないです、よね?」
「野暮なこと言わないの。君はもう果実会全員の恋人よ」
「そうそう。流石にまだキスとかはしないけど、こういうスキンシップとかボディタッチには慣れておいてよね」

 東雲先輩と由梨ちゃんから囁くように言われると耳がこそばゆくて、このまま流されてしまってもいいんじゃないかなんて考えがよぎってしまう。あれだけの美人・美少女が私がいちごって名前だからってだけで好意的に接してくれる。さぞかし心地いいのだろう。
 私は次第に果実会の他のメンバーへの興味を抱いていたのだった。
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