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#6 飯島由梨

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 寮の入口で柚葉先輩と別れて私と由梨ちゃんは自分たちの部屋まで戻ってきた。

「ふわぁ、なんだか疲れちゃった」
「ごめんねいちごちゃん。でも、早めにみんなを……うぅん、みんなに紹介したかったんだ。いちごちゃんをね」

 果実会……か。人見知りでコミュ障気味な私にも優しくしてくれて、好意的に迎え入れてくれた人たち。由梨ちゃんはある意味、一番に私を受け入れてくれた人で……。

「改めて自己紹介しよっかな。それとも……、そうだね、いちごちゃん」
「な、なに?」
「なにか質問してよ。なーんでも答えるよ。下着の色でも、スリーサイズでも、経験の有無とかもね」

 ……なんでそう、質問の内容がえっちなものに偏っちゃうかなぁ。制服のブレザーだけ脱いでベッドに座る。寮で過ごす数日や今日の出会いでも、星花女子学園では女の子同士の距離が近いっていうのはよく分かった。だからこそ、これは聞いておこうと思ったんだ。

「由梨ちゃんは、女の子が好き……なの?」
「そうだと思う。ふふ、いちごちゃんみたいな子は特にね。あ、からかってるわけじゃなくて、本当に。……少し重い話だけど、聞く?」

 私はその問いに頷いた。

「私、お母さんを小さい頃に亡くしてて。で、初恋の相手はそのお母さん。家を大掃除していたら古い写真が出てきて、それが若い頃のお母さんだったの。すごく綺麗な人だったんだぁ」
「由梨ちゃんのお母さんなら、きっと綺麗な人なんだろうね」
「ふふ、ありがとう。……そうね、母みたいな人になりたい気持ちと、母みたいな人と人生を共にしたい、そんな気持ちが半々くらいあるわね。まぁ、母との思い出はあんまりないからほとんど想像なんだけどさ。きっと優しくて純真で、でも芯がある感じの人だったはずよ。ついでに話すと、父はそのあと再婚したわ。その再婚相手に連れ子がいて、義理の兄になるわけ。その人と一緒にいるのが嫌で、寮のある学校を選んで星花女子に来たわ。取り敢えず、重い話は以上。後はなんか軽い質問をお願いね」

 優しくて純真で、それでいて芯がある。……由梨ちゃんは、私のことをそう思ってくれているのかな。それを聞きたいけれど、軽い質問をって言われちゃったから、それはまたいつか聞こう。取り敢えずは……。

「誕生日、まだ教えてもらってない気がする」
「そうだっけ。十一月三日生まれのA型で部活は英会話部よ。あんまり行ってないけれど」

 英会話部……そんな部活もあるんだ。そうか、私も部活決めなきゃだよね……。

「星花女子にある部活動について、詳しく教えてくれる?」
「うん。お安い御用だよ」

 お風呂の時間になるまで、数ある星花の部活について、由梨ちゃんが知っていることをいっぱい教えてもらったのあった。
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