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蔑みの視線

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 ――聖女様、貴女は何の属性の魔法がお得意なのですか?

 そんなことを聞かれても、日本で生まれ育った絵麻には当然、得意な魔法など存在しない。

(得意科目は現国と美術と体育だけど、今そんなこと言える雰囲気じゃないのはわかる。この人たち目がマジだもん。他の特技はSNSでバズる動画を撮ること……私のアイデアと編集技術、けっこう評判良くてフォロワーもそこそこいたんだけど、それ言って伝わる……?)

 黙っている絵麻を見て、カマキリ男が猫なで声で続ける。

「あぁ、では質問を変えましょう。聖女様、この蝋燭に魔法で火を灯してくださいますか?」

「できないです……」

「おや。では水の魔法の方がお得意ですかな。こちらの空の杯を満たしていただくことは?」

「水道で汲んできていいなら……」

 絵麻が答える度に、だんだんと室内の空気が冷ややかなものになっていく。男たちの視線が突き刺さってうなじの後ろがビリビリする。声と手が、震える。心臓の音が痛いくらいにうるさかった。

「……では、このコインを浮かせることは? ウィンセント王国なら、貴族の子供であれば誰でも使えるような簡単な魔法ですよ」

「だからっ、私はこの国の人間でも貴族でもないし! そんなの、できないよ……! 私は魔法なんて存在しない世界で育ったの! わかったら、私を家に帰してよ……!」

 その絵麻の叫びに、遂に広間はシンっと静まり返った。かなりの人数がいるのに、誰も言葉を発しない。みな、フェオードルを伺うように見ている。

「……と言うことは、お前は本当に魔法が使えないんだな?」

 地を這う声で静寂を破り、フェオードルは蔑むように瞳を細めた。



* * *



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