サマー子爵家の結婚録    ~ほのぼの異世界パラレルワールド~

秋野 木星

文字の大きさ
5 / 100
「めんどくさがりのプリンセス」の末っ子エミリー

誕生パーティー

しおりを挟む
 パーティー当日の日曜日の朝がきた。

村の秋祭りを繰り上げて今日すればいいと思うぐらい、爽やかに晴れている。

今日の天気は、コックのジボアがお得意のロールキャベツと引き換えに、神様に掛け合ったに違いない。
半月程前から、エミリーと顔を合わせるたびに言っていた。

「エミリーさま、パーティの日のお天気はどんな具合なんでしょうねぇ。わたしゃそれだけが心配ですよ。」

庭を使うガーデンパーティーになるかどうかで、料理のメニューも変わってくるらしい。

この天気なら、ジボアもさぞ満足していることだろう。


子爵邸の庭を開放しての私たちの誕生パーティーは、本人たちの思惑を超えて、ここサマー領のみならず、近隣の貴族や名の知れた人たちの秋の楽しみとなっていた。

それもあってか、母様や使用人たちもこの催しには特に力を入れているようで、今日は朝も早くから屋敷全体が興奮でざわついていた。


「エミリー、早く支度して朝ごはんを食べちゃいなさい。おじいさまたちはいつものように、早くおいでになるわよ。」

三階の家族用の化粧室で髪を整えていると、母様がブリーを引き連れて足早に廊下を歩いていくのが、チラリと見えた。

ブリーはもう正装のドレスに着替えているようだ。
ご自慢の菫色の目の色に合わせてあつらえた、薄紫のオーガンジーだ。


母さまと一緒に階下に降りたと思っていたのに、ブリーは何を思ったのかわざわざエミリーのいる所に戻ってきて、くるりと回って全身を見せてくれた。

「どう? これいけてるでしょう。」

確かに。
ブリーの中身を知らなければおしとやかな淑女に見える。

「うん、似合ってると思う。」

「もう、エムったら張り合いがないわねぇ。今日はあなたのパーティーじゃない。もっとテンションを上げてちょうだい。」

私のパーティー? 
それはちょっと違うでしょう。

「今日は子爵家嫡男ちゃくなん、将来伯爵様になるアル兄さまの誕生パーティーなの! 私は、ついで。」

「あら、ついででもいーじゃない。私たちの誕生日よりハデに祝ってもらえるんだから。正装のドレスは買ってもらえる、お客様はいっぱい、言うことなしだわよ。あなた、まためんどくさ~い。なんて思ってるんじゃないわよね。」

はい、すみません。
思ってます。

めんどくさい。

図書室でごろごろして一日中本を読んでいたいです。


なんとか表面上はブリーに話を合わせて、おだてまくって先に階下に降りてもらった。


これから、そのめんどくささの最たるものである、ドレスに着替えなければならない。


服に対してまったく興味のないエミリーは、普段は二人の姉のおさがりをなんでも有難く着させていただいている。

ブリーは母譲りのブロンドで、キャスは父様に似た黒っぽいこげ茶の髪をしている。

おさがりの服は、その二人の好みや容姿に合わせて買ったものだから、色もデザインも全く違う。

エミリーの髪は母方のおばあ様からの隔世遺伝で、白っぽいシルバーブロンドだ。

正直、二人の姉の服は全然、自分に似合わない。


ブリーは、ジュニア・ハイスクールに行くようになったんだからもっとおしゃれをしろとうるさい。
けれども、興味のないものに時間を割くのは、めんどくさい。

それに、今は昔のように使用人に服を下げ渡す習慣なんて、無くなっているからね。
どうでもいいと思っているものにお金を使うなんて、もったいないじゃん。

服を買うぐらいなら、本を買う。

今年はジュニア・ハイに入って「準・大人」の扱いを受けるようになったので、スカートの裾長すそたけは膝下になっている。

色もエミリーに合わせてオーダーメイドしたので、濃い青色のシフォンのワンピースだ。

エミリーは目の色が薄い水色で髪も白っぽい。
少し濃いめの色を着なければ、全体がぼんやりとぼやけた印象になる。

スカート部分にはバレリーナが着るチュチュのような、水色のレースのオーバースカートがついているので、見た目だけで言えば軽々と舞い踊る妖精のプリンセスのような仕上がりになっている。


めんどくさがりだけどね。


せっかくの休みを大勢の人の中で、それも注目されて過ごさなければいけないのは、うんざりだ。

まあ嘆いていても今日は終わらない。
なんとか自分を叱咤激励して階下に降りることにした。



 一階のブレックファーストルームに行くと、アル兄さまが朝食を食べていた。

「エム、おはよう。やっと来たな。母様がさっきからイライラしてたぞ。」

「無駄に張り切ってるからね。ふぅー、なんでここまで大げさに誕生パーティーをしなくちゃいけなくなったんだろう。」

「おまえが生まれたからじゃないか。」

「アル兄さまのほうが先に生まれてたじゃない。」

兄さまはニヤニヤ笑っている。

この問答も、ここ何年かの二人の定番となっている。
お互いのせいにしてこの労苦を押し付け合いたいのだ。


「エム、おまえがめんどーがってるのは知ってるが。さらに悪いお知らせだ。おじいさまがどこかの国の王子様を招待したらしい。」

「えーーっ、なんで王子様が子爵家のパーティーなんて来るのよ。バッキンガムに行きゃあいいじゃない。」

「まぁそう言うな。ブリーは玉の輿を狙って目をきらきらさせてたぞ。」

ブリー…ぶれない女。

ブリーは16歳になったので、花婿候補の選定に入るのはしかたがない。
でもちょっとあからさまなのが玉にきずだ。


「はぁ~。挨拶しなきゃいけないのよね。」

「とーぜん。」

「外国の王族への挨拶の作法なんて知らないよ。」

「俺だって知らないよ。向こうも郷に入れば郷に従えだ。宮殿に呼ばれた時の作法で乗り切るしかないさ。」


この国では貴族の子どもが7歳になると、宮殿でのお披露目パーティーに出ることが義務づけられている。

そのため一応の宮廷作法は教えられているのだが、あまりこういうことに興味のないエミリーは身を入れて学んでこなかった。

王族・公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵・騎士爵の子供たちが一同に会すのだ。
その大人数の中、少々あらがあっても目立とうはずがない。

ましてやエミリーは爵位の跡継ぎである嫡男嫡女ではないので、王侯陛下に名を呼ばれることもない。
そのため一度だけあったお披露目パーティーには、お気楽に参加した。

それも、三年前の話。

当時習った作法など忘却の彼方にサヨウナラだ。



◇◇◇


 
 パーティーが始まると同時に、王子様に突撃していったブリーとは離れて、エミリーは隅っこの目立たない場所で、村の子供たちやジュニア・ハイの同級生たちと一緒に過ごすことにした。

なるべく王族やら伯爵のおじいさまのお仲間やらは避けたいところである。
子爵家の庭は広い。
そしてパーティ客は多い。

最後まで顔を合わせずとも、なんとかなるのではないだろうか。


有難いことに親友のマリカと幼馴染のロベルトがずっと側にいてくれたので、他の大人たちの挨拶攻勢も最小限に避けられていた。

「ほんとにエムはこういう事が嫌いよねぇ。せっかく貴族に生まれたのに。」

マリカが、あきれたようにそう言った。

マリカは大商人の娘である。
自分の家にお金はあっても爵位がないせいか、貴族というものに過大な憧れを抱いているように見える。

貴族の内実は、屋敷や領地は広いがそれを維持していくのに四苦八苦しており、経済的にはどの貴族もそんなに余裕のある生活ではない。

その上へたなプライドや義務・形式に縛られ、使いたくないお金も見栄を張って使わざるを得ない時も多々ある。

今日の催しなんかその最たるものである。

ほんとーに、貴族ってめんどくさい存在なのだ。


おとなしい眼鏡男子のロベルトは、マリカやエミリーがしゃべっている時には極力口を挟まないで、側に空気のように立っている。

ただ最近「ロビー。」と呼ぶと怒るようになった。

自分的にはジュニア・ハイにあがったのだから、もっと大人っぽく「ロブ」と呼んで欲しいらしい。

私たちより低い背丈でその主張をされると、吹き出すのをこらえずにいられない。

マリカも私も、普段は男のプライドを尊重して本人の希望通りにしてあげているが、たまにどうしようもなくからかいたくなった時はロビーと呼んでしまう。


そのロブがエミリーの顔色を見ながら言ってきた。

「エム、さすがにそろそろ主賓の人たちには挨拶しといたほうがいいんじゃない?」
「むっ。母様にそう言えって頼まれてたんでしょう。」

案の定、ロブは少し目をそらした。

「嫌だなーー。今日は外国の王子様も来ているし、あっちの方に近寄りたくないんだよね。」
「えっ! そんな人が来てるの? どの人?」

マリカは即座に食いついた。

マリカ、あんたもブリーの仲間なのね。
まあまだ切羽詰まる歳ではないので、興味の方が勝っているのだろうけど…。


しかし嫌だと言っている訳にはいかなくなりそうだ。

向こうの方からブリーが、おしとやかに見えるギリギリの速足で、こちらに歩いてくるのが見えた。

「エム、出番よ。あの呪文を使う時がきたわよ。」

「「呪文ってなに?」」

マリカとロブは怪訝な顔だ。

もうっ、時と場所を考えてよ。

はぁ~。
それもブリーだから仕方がないのか…。


何のことかわからないというロブとマリカに、最近、起こった不思議な出来事のおおまかな流れと、それに対してのブリーの考察をざっと説明した。

二人ともすべて呑み込めたとは言えないようで、ブリーとエミリーを見る目がなま温かくなったような気がする。


ブリーがエミリーを呼びに来たのにはわけがあった。

王子様の興味を引くためにブリーが思いついた話題が、よりにもよって「なつみ」という名前だったらしい。

王子さまは極東の島国でニッポンという国の皇太子だそうだ。
「背が高くて、黒髪で、エキゾチックなのー。」という情報はどうでもいいのだが…。

ブリーとしてはその国のことも知らないし共通の話題もない。
そこで思い出したのが、アジア系っぽい「なつみ」という名前だ。

ブリーが「なつみという名前の人を知っているのですが、アジアのどこの国の名前でしょう。」と皇太子様に問うと「それは、私の国に多い名前ですね。どなたの名前なのですか?」と、とても興味を御示しになったのだそうだ。

本当のことを言えるわけもなく、妹のエミリーが親しくしていた人だなどと口から出まかせを言ってしまったようで、「ぜひ、御妹さんとも、お話したいですね。」と言われたらしい。

ここで、「エムなんとかしてーー。昨日私にかけた迷惑を覚えているでしょう?」ときた。

はーーーっもう、ブリーったらぁ。


エミリーが、ぶーたれて、「死んだ人なんか呼び出したくない。」と言うと。

ブリーは「あなた自身でしょ。そんなこと言わないの。」と言う。

エミリーが「心霊写真だよ。見たくないよ。」と言えば。

ブリーは「ここに鏡なんかないじゃない。」と諭す。


エミリーとブリーのやり取りに段々興味が湧いてきたのか、マリカとロブもブリーに加勢しだした。

「王子様がエムと話したいって言ってるんでしょ。なつみさんの事を教えてもらえなきゃ話せないし、私たちニッポンのことなんて何も知らないじゃない。なに話すのよ。」

「そうだね、僕は君たちが言っていることが本当のことなのか確かめたいね。呪文を言ってみて、何が起こるのか見せてくれよ。」


三人の期待に満ちた眼差しがジリジリとエミリーに圧力をかけてくる。


「もういいよ。やればいいんでしょ、呪文。でも煙が出てくるとか私が変身するとか、おもしろいことを期待してもだめだよ。ただ私が変なことをしゃべりだしたようにしか見えないんだからね。狂ったとだけは思わないでちょうだい。」

エミリーが仕方がなくそう言うと、三人は揃ってうんうんと頷いた。


こうして思ってもみなかったことに、二度と使わないと思っていた呪文を、また使うことになったのだ。


人前で可笑しな独りトークを繰り広げるのはエミリーの本意ではないが、どうしてもこの症状? いやこの記憶チートとかいう神様からの厄介なギフトに、向き合わなければならないようである。
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~

高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。 先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。 先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。 普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。 「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」 たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。 そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。 はちみつ色の髪をした竜王曰く。 「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」 番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!

前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!

ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。 前世では犬の獣人だった私。 私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。 そんな時、とある出来事で命を落とした私。 彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。

人質から始まった凡庸で優しい王子の英雄譚

咲良喜玖
ファンタジー
アーリア戦記から抜粋。 帝国歴515年。サナリア歴3年。 サナリア王国は、隣国のガルナズン帝国の使者からの通達により、国家滅亡の危機に陥る。 従属せよ。 これを拒否すれば、戦争である。 追い込まれたサナリアには、超大国との戦いには応じられない。 そこで、サナリアの王アハトは、帝国に従属することを決めるのだが。 当然それだけで交渉が終わるわけがなく、従属した証を示せとの命令が下された。 命令の中身。 それは、二人の王子の内のどちらかを選べとの事だった。 出来たばかりの国を守るため。 サナリア王が下した決断は。 第一王子【フュン・メイダルフィア】を人質として送り出す事だった。 フュンは弟に比べて能力が低く、武芸や勉学が出来ない。 彼の良さをあげるとしたら、ただ人に優しいだけ。 そんな人物では、国を背負うことなんて出来ないだろうと。 王が、帝国の人質として選んだのである。 しかし、この人質がきっかけで、長らく続いているアーリア大陸の戦乱の歴史が変わっていく。 西のイーナミア王国。東のガルナズン帝国。 アーリア大陸の歴史を支える二つの巨大国家を揺るがす。 伝説の英雄が誕生することになるのだ。 偉大なる人質。フュンの物語が今始まる。 他サイトにも書いています。 こちらでは、出来るだけシンプルにしていますので、章分けも簡易にして、解説をしているあとがきもありません。 小説だけを読める形にしています。

「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)

透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。 有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。 「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」 そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて―― しかも、彼との“政略結婚”が目前!? 婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。 “報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...