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BL学園に転生した件
こんなに早く遭遇するとは
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編入試験から1週間が経った、毎日「夢なら覚めるかも」と思って過ごして来たが覚める事はなかった。
1週間も経つと慣れるもので、母(仮)のことも父(仮)のことも「母さん」「父さん」と呼ぶことにも慣れたし…
「じゃあ…いってくるよ、愛。」
「えぇ…いってらっしゃい、御郎さん。」
毎朝の今世の別れか、と思う程の両親の熱い抱擁も見慣れて来た。
…ちょっと羨ましい、いや俺にもして欲しいとかではないけども。
将来奥さんが出来たらして欲しいな。
「…遅刻するよ、父さん。」
一声掛けると彼は腕時計を見てから名残惜しそうに母さんから離れた。
「あぁ、御形も見送りありがとう。」
母さんからネクタイを直されながら、そう言うと俺の頭を撫でて出勤して行った。
撫でられるのにも随分と慣れた、初めはこそばゆくて仕方がなかった。
転生前の俺の家はスキンシップがあまりない家だったから。
…孫の顔見せてやれなかったな…少し胸が痛んだ。
玄関でぼーっとしているとバイクの音が聞こえて来た、次いでインターホンの音。
「あっ、はーい!」
玄関を開けるとそこには小脇に抱えられるサイズの箱を持った配達員さんが立っていた。
「嶋崎御形さんのお宅で間違いないですか?」
伝票をチラリと確認しながら問われた。
一つ頷くと箱から伝票を剥がし差し出してくる。
「お届け物です。」
「どうも。」
箱を受け取ると配達員は一礼して去って行った。
俺に荷物…?一体何だろう?
戸締りをし、箱を持ったままリビングへ戻ると母さんがテレビから目を離して問うてくる。
「何だったの?」
「わからない、俺宛だってさ。」
リビングのテーブルに箱を置き、開封すると中には白地に青色の模様があしらわれた箱が入っていた…何だか見覚えがあるような?
母さんが身を乗り出して箱を認めると、俺の片手を両手で握って来た。
「まぁ!無事合格したのね!」
…合格?
思い出した、これは【青薔薇学園】の合否通知書だった。
合格なら箱が届くんだった。
中身は合否通知書と校章な筈。
片手で箱を開くとそこには思った通り、合否通知書と薔薇モチーフの校章が光っていた。
「うん、合格したみたい。」
書類は母さんに渡すと、校章を手に取り翳してみる。
母さんは俺の片手から手を離し、書類へ目を通している。
嗚呼、本当に【青薔薇学園】へ入学するんだなぁ…。
校章を元の位置に戻していると再び母さんが声を上げた。
「まぁ!首席ですって!」
首席とな…まぁ確かに試験は簡単だったけども…そうか【青薔薇学園物語】には義務教育を終えていれば簡単な問題を解く主人公を成長させるギミックも含まれていたな。
道理で簡単な訳だ。
しかし、首席とは…【青薔薇学園物語】にそんな描写なかった様な…?
当たり前か、俺はモブだ。
少々目立ってしまうが、気にする程のことでも無いだろう。
そう思案していたら母さんに肩を叩かれた。
「御形、今から制服を仕立てて貰いに行って来なさい。」
思い立ったが吉日か、まぁ暇だしいいか。
「わかった、行ってくる。」
「学園都市の仕立て屋さんに行けば全部やってくれるわ。」
一つ頷き自室からカバンを取ってくれば玄関へ向かう。
「じゃあ、いってきます。」
「いってらっしゃい、御形。」
朗らかな顔で見送る母さんに手を振り、俺は学園都市へと向かった。
学園都市【青薔薇地区】は自宅から電車とモノレールを乗り継いで4時間半かかる。
埋立地を全域学園都市として設計されたその場所は、初等部から全寮制となっている【青薔薇学園】には必要不可欠なもの…らしい。遊園地や動物園、水族館に映画館、テーマパークまで充実しているのだから舌を巻く。
スマホで位置情報を調べながら歩いて行くと仕立て屋さんはすぐ見つかった。
カランコロンとドアベルを鳴らしながら入るとそこは白を基調とした豪奢な造りのお店だった…そうだった【青薔薇学園】は元々セレブが通う私立校だった。
「何がご入用ですか?」
ドアに手をかけたまま店内を眺めていると、気付けばそばに店員さんがいた。
慌てて腰が引けながらも店内へ身体を滑らせれば、持たされた合否通知書を渡す。
「今年から青薔薇学園高等部に入学するので、制服一式を。」
渡された店員さんは合否通知書に一通り目を通すと頷き。
「ではこちらに、採寸致します。」
そう言って店の奥へと導かれた。
採寸も終わり、説明も受けた。
制服は一着分は自宅に届くが、残りの替えは寮に届けられるらしい。
「…少し疲れたな。」
長旅だったし、採寸を測られるのも初めての経験だった。
何処かでお茶でもして帰るか…。
そんな事を考えながらぶらついていると気付けばだいぶ裏路地まで来てしまったみたいだった。
…何やら揉めてる声がする。
恐る恐るそちらへ向かうと、長身のフードを被った男性と小さな男の子が揉めている様だった。
「…だからァ…無理だって。」
「何故無理なのですか!僕なら家柄も!」
「だからァ~そういうのじゃないんだってばァ…。」
「何故ですか!納得いきません!」
「だからァ……あっ」
あっ長身の男性とサングラス越しだが確かに目が合ってしまった、まずい。
さっと目を逸らすも遅かった。
「おーい!俺あの子と用があるから!」
「えっ!ちょっとお待ち下さい!」
声をかけられたのが自分とわかり、急いで立ち去ろうとするもそれより早く腕を掴まれてしまった。
「…ごめんね、ちょっと付き合って。」
耳元で囁かれゾワリと背筋が震える、な、なんだこの感覚…?
考えてる内に相手が自分の腕を掴んだまま走り出してしまい、足を縺れさせながらもついて行くしかなかった。
暫く走って気付けば人気の無い公園に着いていた。
「はぁ…はぁ…ッ」
息を乱してる自分とは違い相手は余裕そうだった…悔しいな!
「ごめんねェ急に、ここ座ってて!」
言うが早いか相手にベンチへ座らされた、正直助かる。
ベンチで息を整えてる間に相手は足早に何処かへ向かい戻って来た。
「これ、お詫びに。」
顔を上げると目の前にはココアの缶がぶら下がっていた。
ココアの缶と相手の顔を見比べる。
「…あれ?もしかして嫌い?」
「い、いえ…。」
寧ろ好きだ、俺は甘いものに目が無いのだ。
「じゃあ、はい。」
ココアの缶を俺に握らせると彼は俺の隣に腰掛け、珈琲のプルタブを開ける。
「…どうも。」
一言礼を言えば自分もココアのプルタブを開け、ちみりと一口飲む…甘さと水分が沁みる。
「ごめんねェ付き合わせちゃって。」
ポンと頭に手を置かれて撫でられる…何だかムズムズする…。
他人に撫でられた事など、いや此方の父母を除き、そんな事ないものだからどんな顔をしていいのか分からない。
「いえ…よかったんですか?」
一緒にいた人は、言外に伝える。
すると彼は首を横に振りながら、フードとサングラスを取る。
「いいの、いいの。大して知らない人だから。」
サラリと流れる銀髪のウルフカット、キュッと上がった眉に、対照的にタレた碧眼、それを彩る泣きぼくろ、薄いが整った唇…見覚えがある、いや、見覚えしかない顔が目の前にあった。
「護迎メイ…」
「あ、やっぱ知ってる?」
知ってるも何も【青薔薇学園物語】の攻略対象で、男女問わず食うし、二度は寝ないと噂の生徒会会計の護迎メイだ。
本物が目の前にいる……やはり転生したのか、リアルな夢なのか…どの道【青薔薇学園物語】の世界にいることは間違いない、確定した。
一気に自分が本当に【青薔薇学園】へ入学するのだと現実味を帯びた。
「おーい、聞こえてる?」
「わひゃぁ…ッ!」
低くて甘い声が耳元で囁く、再びゾワリと背筋が震えて飛び上がりそうになる。
くそぅ、男からしてもいい声だ。
「耳元やめてくれる!?」
「なァに?耳性感帯なの?」
くつくつと笑いながら耳朶を擽られる。
「ッあ!」
反射的に上擦った声をあげてしまい、ぐぁっと顔に熱が集まる。
なんちゅー声あげてんだ俺!
「やっ!やめろ馬鹿!俺は男だぞ!」
缶を持ってない方の手で相手の手を振り払う。
「…ふーん?」
振り払われた手を歯牙にも掛けないで彼は思案する様に視線を空中に泳がせている。
「君、名前は?」
「は?」
「名前、教えてよ。」
名前?俺の名前なんて知ってどうするんだ?
まぁ、知られたって困ることはない…よな?
逡巡するもおずおずと口を開く。
「…緒形、嶋崎御形。」
「御形くんね、おけおけ。」
何がOKなのだろうか…怪訝に思いながらココアに口を付ける。
「御形くん。」
「あ?」
「好きです、付き合って?」
ココアを吹き出しそうになるのを寸前で止め、無理矢理嚥下するも噎せてしまう。
「わっ!大丈夫?御形くん?」
大きな掌が背中を擦る。
暫く噎せていたが、何とか持ち直す。
今なんて言ったこの人?
「返事は?」
こてんと見た目に反して可愛らしく首を傾げられる、いや、なんだよ可愛らしくって。
返事…返事?
「いや…君のことよく知らないし…。」
知ればいいみたいな返事をしてしまった!
よくない!よくないぞ嶋崎御形!
「じゃあ…これからよく知って貰おうかな?」
ほれ見ろ!嶋崎御形!
脳内で己を叱責していると頬にふにゅっと柔らかい感触が当たった。
「…へ?」
「ほっぺた柔らかいね。」
柔らかい感触が離れ彼がへらりと笑った。
顔が近い……今何された?
「…ちゅーしちゃった。」
父さん…母さん…俺はとんでもない人の目に止まってしまったかも知れません。
その後どう帰って来たか分からないが、スマホの連絡先が三つになっていた…。
俺の学園生活どうなっちゃうんだ…?
1週間も経つと慣れるもので、母(仮)のことも父(仮)のことも「母さん」「父さん」と呼ぶことにも慣れたし…
「じゃあ…いってくるよ、愛。」
「えぇ…いってらっしゃい、御郎さん。」
毎朝の今世の別れか、と思う程の両親の熱い抱擁も見慣れて来た。
…ちょっと羨ましい、いや俺にもして欲しいとかではないけども。
将来奥さんが出来たらして欲しいな。
「…遅刻するよ、父さん。」
一声掛けると彼は腕時計を見てから名残惜しそうに母さんから離れた。
「あぁ、御形も見送りありがとう。」
母さんからネクタイを直されながら、そう言うと俺の頭を撫でて出勤して行った。
撫でられるのにも随分と慣れた、初めはこそばゆくて仕方がなかった。
転生前の俺の家はスキンシップがあまりない家だったから。
…孫の顔見せてやれなかったな…少し胸が痛んだ。
玄関でぼーっとしているとバイクの音が聞こえて来た、次いでインターホンの音。
「あっ、はーい!」
玄関を開けるとそこには小脇に抱えられるサイズの箱を持った配達員さんが立っていた。
「嶋崎御形さんのお宅で間違いないですか?」
伝票をチラリと確認しながら問われた。
一つ頷くと箱から伝票を剥がし差し出してくる。
「お届け物です。」
「どうも。」
箱を受け取ると配達員は一礼して去って行った。
俺に荷物…?一体何だろう?
戸締りをし、箱を持ったままリビングへ戻ると母さんがテレビから目を離して問うてくる。
「何だったの?」
「わからない、俺宛だってさ。」
リビングのテーブルに箱を置き、開封すると中には白地に青色の模様があしらわれた箱が入っていた…何だか見覚えがあるような?
母さんが身を乗り出して箱を認めると、俺の片手を両手で握って来た。
「まぁ!無事合格したのね!」
…合格?
思い出した、これは【青薔薇学園】の合否通知書だった。
合格なら箱が届くんだった。
中身は合否通知書と校章な筈。
片手で箱を開くとそこには思った通り、合否通知書と薔薇モチーフの校章が光っていた。
「うん、合格したみたい。」
書類は母さんに渡すと、校章を手に取り翳してみる。
母さんは俺の片手から手を離し、書類へ目を通している。
嗚呼、本当に【青薔薇学園】へ入学するんだなぁ…。
校章を元の位置に戻していると再び母さんが声を上げた。
「まぁ!首席ですって!」
首席とな…まぁ確かに試験は簡単だったけども…そうか【青薔薇学園物語】には義務教育を終えていれば簡単な問題を解く主人公を成長させるギミックも含まれていたな。
道理で簡単な訳だ。
しかし、首席とは…【青薔薇学園物語】にそんな描写なかった様な…?
当たり前か、俺はモブだ。
少々目立ってしまうが、気にする程のことでも無いだろう。
そう思案していたら母さんに肩を叩かれた。
「御形、今から制服を仕立てて貰いに行って来なさい。」
思い立ったが吉日か、まぁ暇だしいいか。
「わかった、行ってくる。」
「学園都市の仕立て屋さんに行けば全部やってくれるわ。」
一つ頷き自室からカバンを取ってくれば玄関へ向かう。
「じゃあ、いってきます。」
「いってらっしゃい、御形。」
朗らかな顔で見送る母さんに手を振り、俺は学園都市へと向かった。
学園都市【青薔薇地区】は自宅から電車とモノレールを乗り継いで4時間半かかる。
埋立地を全域学園都市として設計されたその場所は、初等部から全寮制となっている【青薔薇学園】には必要不可欠なもの…らしい。遊園地や動物園、水族館に映画館、テーマパークまで充実しているのだから舌を巻く。
スマホで位置情報を調べながら歩いて行くと仕立て屋さんはすぐ見つかった。
カランコロンとドアベルを鳴らしながら入るとそこは白を基調とした豪奢な造りのお店だった…そうだった【青薔薇学園】は元々セレブが通う私立校だった。
「何がご入用ですか?」
ドアに手をかけたまま店内を眺めていると、気付けばそばに店員さんがいた。
慌てて腰が引けながらも店内へ身体を滑らせれば、持たされた合否通知書を渡す。
「今年から青薔薇学園高等部に入学するので、制服一式を。」
渡された店員さんは合否通知書に一通り目を通すと頷き。
「ではこちらに、採寸致します。」
そう言って店の奥へと導かれた。
採寸も終わり、説明も受けた。
制服は一着分は自宅に届くが、残りの替えは寮に届けられるらしい。
「…少し疲れたな。」
長旅だったし、採寸を測られるのも初めての経験だった。
何処かでお茶でもして帰るか…。
そんな事を考えながらぶらついていると気付けばだいぶ裏路地まで来てしまったみたいだった。
…何やら揉めてる声がする。
恐る恐るそちらへ向かうと、長身のフードを被った男性と小さな男の子が揉めている様だった。
「…だからァ…無理だって。」
「何故無理なのですか!僕なら家柄も!」
「だからァ~そういうのじゃないんだってばァ…。」
「何故ですか!納得いきません!」
「だからァ……あっ」
あっ長身の男性とサングラス越しだが確かに目が合ってしまった、まずい。
さっと目を逸らすも遅かった。
「おーい!俺あの子と用があるから!」
「えっ!ちょっとお待ち下さい!」
声をかけられたのが自分とわかり、急いで立ち去ろうとするもそれより早く腕を掴まれてしまった。
「…ごめんね、ちょっと付き合って。」
耳元で囁かれゾワリと背筋が震える、な、なんだこの感覚…?
考えてる内に相手が自分の腕を掴んだまま走り出してしまい、足を縺れさせながらもついて行くしかなかった。
暫く走って気付けば人気の無い公園に着いていた。
「はぁ…はぁ…ッ」
息を乱してる自分とは違い相手は余裕そうだった…悔しいな!
「ごめんねェ急に、ここ座ってて!」
言うが早いか相手にベンチへ座らされた、正直助かる。
ベンチで息を整えてる間に相手は足早に何処かへ向かい戻って来た。
「これ、お詫びに。」
顔を上げると目の前にはココアの缶がぶら下がっていた。
ココアの缶と相手の顔を見比べる。
「…あれ?もしかして嫌い?」
「い、いえ…。」
寧ろ好きだ、俺は甘いものに目が無いのだ。
「じゃあ、はい。」
ココアの缶を俺に握らせると彼は俺の隣に腰掛け、珈琲のプルタブを開ける。
「…どうも。」
一言礼を言えば自分もココアのプルタブを開け、ちみりと一口飲む…甘さと水分が沁みる。
「ごめんねェ付き合わせちゃって。」
ポンと頭に手を置かれて撫でられる…何だかムズムズする…。
他人に撫でられた事など、いや此方の父母を除き、そんな事ないものだからどんな顔をしていいのか分からない。
「いえ…よかったんですか?」
一緒にいた人は、言外に伝える。
すると彼は首を横に振りながら、フードとサングラスを取る。
「いいの、いいの。大して知らない人だから。」
サラリと流れる銀髪のウルフカット、キュッと上がった眉に、対照的にタレた碧眼、それを彩る泣きぼくろ、薄いが整った唇…見覚えがある、いや、見覚えしかない顔が目の前にあった。
「護迎メイ…」
「あ、やっぱ知ってる?」
知ってるも何も【青薔薇学園物語】の攻略対象で、男女問わず食うし、二度は寝ないと噂の生徒会会計の護迎メイだ。
本物が目の前にいる……やはり転生したのか、リアルな夢なのか…どの道【青薔薇学園物語】の世界にいることは間違いない、確定した。
一気に自分が本当に【青薔薇学園】へ入学するのだと現実味を帯びた。
「おーい、聞こえてる?」
「わひゃぁ…ッ!」
低くて甘い声が耳元で囁く、再びゾワリと背筋が震えて飛び上がりそうになる。
くそぅ、男からしてもいい声だ。
「耳元やめてくれる!?」
「なァに?耳性感帯なの?」
くつくつと笑いながら耳朶を擽られる。
「ッあ!」
反射的に上擦った声をあげてしまい、ぐぁっと顔に熱が集まる。
なんちゅー声あげてんだ俺!
「やっ!やめろ馬鹿!俺は男だぞ!」
缶を持ってない方の手で相手の手を振り払う。
「…ふーん?」
振り払われた手を歯牙にも掛けないで彼は思案する様に視線を空中に泳がせている。
「君、名前は?」
「は?」
「名前、教えてよ。」
名前?俺の名前なんて知ってどうするんだ?
まぁ、知られたって困ることはない…よな?
逡巡するもおずおずと口を開く。
「…緒形、嶋崎御形。」
「御形くんね、おけおけ。」
何がOKなのだろうか…怪訝に思いながらココアに口を付ける。
「御形くん。」
「あ?」
「好きです、付き合って?」
ココアを吹き出しそうになるのを寸前で止め、無理矢理嚥下するも噎せてしまう。
「わっ!大丈夫?御形くん?」
大きな掌が背中を擦る。
暫く噎せていたが、何とか持ち直す。
今なんて言ったこの人?
「返事は?」
こてんと見た目に反して可愛らしく首を傾げられる、いや、なんだよ可愛らしくって。
返事…返事?
「いや…君のことよく知らないし…。」
知ればいいみたいな返事をしてしまった!
よくない!よくないぞ嶋崎御形!
「じゃあ…これからよく知って貰おうかな?」
ほれ見ろ!嶋崎御形!
脳内で己を叱責していると頬にふにゅっと柔らかい感触が当たった。
「…へ?」
「ほっぺた柔らかいね。」
柔らかい感触が離れ彼がへらりと笑った。
顔が近い……今何された?
「…ちゅーしちゃった。」
父さん…母さん…俺はとんでもない人の目に止まってしまったかも知れません。
その後どう帰って来たか分からないが、スマホの連絡先が三つになっていた…。
俺の学園生活どうなっちゃうんだ…?
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