転生したらBL学園ゲームのモブでチャラい会計に愛されることになった件

陌屋

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BL学園に転生した件

公言されてしまいました

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ロビーに出ると周りがざわめき立った。
「メイ様よ!」
「私服も麗しい…。」
メイさんを褒め称す言葉が飛び交う、まるでアイドルだな。
そんな他人事に考えていたら、褒め称す言葉に混じって違う言葉が聞こえて来た。
「隣の男子は誰?」
「メイ様のご友人?」
「釣り合ってないわね…。」
いやいや、聞こえてますよ…聞こえるように言ってるのか?
誰、って一応首席だったんだけども…まぁ俺みたいなモブ覚えてられないか。
…やっぱ、釣り合ってないよな。
そんな事を考えてたら、肩に腕を回された。
意外と逞しい腕にドキリとした。
ロビーに悲鳴がこだまする。
「行こう、御形くん。ご飯無くなっちゃうよォ~。」
悲鳴も浴びせられる視線も意に介せず、メイさんは俺の顔を覗き込み笑った。
至近距離からのイケメンスマイルを眩しく思いながら一つ頷く。
「堂々として、君は俺の特別なんだから。」
耳元で囁かれ背筋がゾワゾワした、これに慣れる日は来るんだろうか。
慌てて左耳を抑える、くすくすと笑われこりゃ態とだなと思った。
ちくしょう!声までエロいとかどういう事だ!
そんな事を考えながらも食堂の前に着いた、大きな扉は開け放たれてる。
「メイ様だわ!」
ここでもか…食堂に入ってからも同じ様な言葉が飛び交い頭が痛くなる。
肩を抱く力がぐっと強くなり、なんとか平静を装う。
厨房のカウンターへ向かおうとした、その時だ。
「メイ様!」
ふわふわの金髪、くりくりとした猫目の青眼、それを怒りに歪ませた美少年が俺達の行く手を阻んだ。
…あ、あの裏路地でメイさんと口論してた子だ。
「…なに?俺達は早く夕飯を食べたいんだけど。」
メイさんは冷え冷えとした声で対峙する美少年に言葉を返した。
美少年が一拍怯むも持ち直しいまだ行く手を阻む。
ガッツがあるなこの美少年…俺なら逃げ出してる。
そんな事を考えていると美少年がビシッと俺を指さして来た。
え?何?
「ッ…これが!【薔薇のパル】ですか!」
ガヤガヤとしていた食堂が美少年の大声でシーンとなった。
…今なんて?
「そうだけど、何か文句ある?」
相変わらずメイさんの声は冷え冷えとしている。
周囲がざわめく…いや、まだ俺返事してないんだけど。
「いや、俺は…」
訂正しようと口を開くも、メイさんに抱き締められて顔を胸元へ押し付けられる。
く、苦しい…。
「そんな頭だけいい男でいいんですか!?僕は認められません!絶対に僕の方が釣り合って…」
あ、この子俺の事覚えてたんだ。
まぁ釣り合ってないよな…うんうん分かるぞ、そんな呑気な事を考える。
「御形くんを悪く言うのやめてくれる?君が認めなかろうが、俺が認めたの。君のその傲慢なところ、治した方がいいよ?」
「なっ…!?」
「じゃあね、もう付き纏わないでねェ~。」
「まだ話しは!」
「…これ以上俺に干渉するなら、然るべき対処をするから。」
ピシャリと言うと、メイさんは抱き締めた腕を緩めて俺を解放する。
正面に向き直ると顔を真っ赤にした美少年が唇を噛み締めていた。
「そんなに噛むと血が出るよ?」
「うるさい!」
叫びギンッと俺を睨むと足早に去って行った。
美少年の一睨みに萎縮した俺の背中を大きな掌が撫でる。
「気分を害したならごめんねェ…ご飯食べよっか?」
「いや、俺は大丈夫…メイさんこそあんな事言って大丈夫なの?」
「あんな事?」
「【薔薇のパル】って…。」
「あぁ!いいの、いいの。必ず落とすから。」
バチンとウインクをされ、そう言う事じゃないんだけどなぁ…と思いながら再び肩を抱かれ厨房のカウンターへ向かう。
まだ周囲は騒がしい、そりゃぽっと出のたかが首席が護迎メイの【薔薇のパル】なんて言われたら騒ぎたくもなるか…。
「ここは半券式だから、この自販機で先にメニュー選んで。」
俺は悩んでハンバーグ定食を選んだ。
メイさんはチキン南蛮定食。
二人で半券を厨房のおばちゃんに渡すと声をかけられた。
「見てたよ、メイちゃん頑張んな!」
「え?バレた?」
「年の功さね、アンタも負けずに頑張るんだよ!」
「は、はい…?」
「…メイちゃんアンタまだまだだね。」
「これからなの!」
よく分からない会話を聞きながら俺は首を傾げた。
おばちゃんとの会話を切り上げ、人が少ない席へと二人で腰掛ける。
「ハンバーグ好きなの?」
「ん?あぁ…子どもっぽいか?」
「ううん、可愛い。」
優しく微笑まれて顔が熱くなる、くそ…イケメンめ。
「可愛いわけあるか。」
素っ気なく返すも、笑みはそのままに机の下で手を繋がれる。
びっくりして顔を上げてメイさんの顔を見る。
「可愛いよ…一番可愛い」
蕩けるような笑みと優しい声で囁かれ、更に熱が上がるきっと首まで真っ赤だ。
「ふふっ…真っ赤だァ~可愛いね。」
「だから、可愛くないって…。」
そんなやり取りをしていたら番号が呼ばれた。
慌てて立ち上がろうとしたら、繋がれた手で椅子へ戻された。
「俺が取ってくるよ。」
「いや、でも…。」
「いいから、待ってて。」
有無を言わせず俺の半券を手に取り、名残惜しむ様に手の甲を指で撫でると繋いだ手を解き厨房の受け取り口へ行ってしまった。
俺は撫でられた手の甲を己の指で撫で呟いた。
「…タラシめ。」
俺はメイさんが戻って来るまでに顔の熱を引かせようと素数を数え始めた。


「食堂のご飯も中々美味しいでしょ?」
「食堂とは思えないくらい美味しかった…。」
「でしょでしょォ?デザートもあるから今度頼んでみな?」
「マジ?朝頼んでみよ。」
食事も終え廊下を二人で歩いていた。
いいと断ったのだがメイさんが送ると聞かなくて、仕方く俺の部屋まで送られてる最中だった。
女子でもあるまいに、そこまでしなくていいのに。
しかし、もう隣にメイさんが居るのが当たり前になって来ている自分もいた。
己の順応力に笑えてきた。
「?どうしたの、御形くん。」
顔を覗き込まれ、自分が本当に笑ってる事に気付いた。
「いや…まだ会ってすぐなのに、何だか一緒にいるのが当たり前みたいな気がして。」
言ってから照れくさくて頬を掻く。
「…みたいな気、だけじゃ終わらせないから。」
「え?」
「俺の隣は君だけってこと。」
その言葉を噛み砕いて飲み込む、かぁっと顔に熱が集まる。
「タラシめ…」
「タラすのは御形くんだけだよォ~。」
けたけたと笑いながら肩を抱かれた。
「…あんま人前でくっつくなよな。」
「嫌?」
「…嫌、つーか反応に困る。」
「平然としてればいいよォ。」
「出来てたら世話ない。」
「意識してくれるんだ?嬉しい。」
「うひぃ…ッ!」
耳元で囁かれカクリと膝が折れる。
ギリギリで腰を抱かれ抱き起こされる。
「おっと…ごめんごめん!」
「…お前…俺で遊んでるんじゃないだろうな。」
「まさか!御形くんには本気だよ!」
「そう言う事じゃないんだが…。」
はぁ、と溜息を吐くと不安気な顔が覗き込んで来た。
「…嫌わないで。」
お願い、そう言う姿がデカい犬みたいでもう一つ溜息を吐いて、わしゃわしゃと頭を撫でてやった。
「こんぐらいじゃ嫌いになんねぇよ。」
俺もたった半日で絆されたもんだ、呆れて笑いが溢れた。
気付けば俺の部屋の前だった。
鍵を取り出し鍵を解錠してドアを開ける。
振り返るとメイさんの顔に寂しいと書かれていた。
「…寄ってく?」
その言葉にぱっと花が咲く様な笑みを浮かべて何度も頷いた。


「…御形くん、送り狼って知ってる?」
気付けば俺はベッドへ押し倒されていた、何でこうなった?
さっきまでは二人でベッドに腰掛けてたわいもない会話を繰り広げていた筈だ。
「この状況で考え事?」
鎖骨へ口付けられて、ビクリと身体が震える。
そうだ、この男を止めなければ。
「俺を食っても美味くないぞ。」
冷静に冷静に、相手を刺激しない様に…。
「俺からしたら極上のデザートだよ。」
ギラギラとした目で見上げられて、震えた。
完全に捕食者の目だ…逃げなきゃと思うのに身体がうまく動かない。
鎖骨に再び口付けられる。
「や…やめ…ッ」
「…お願い、ちょっと触れさせて。」
「うぁ…ッ」
耳元で囁かれただでさえうまく動かない身体から力が抜ける。
ちゅっちゅっとリップ音を響かせて耳朶に口付けられて、更に身体から力が抜けていく。
「好き…好きだよ御形くん…」
「み、耳元やめろ…ッ」
「ホント耳弱いよね…可愛い…」
「んぁッ!」
カリッと耳朶を噛まれて背中が反り返る。
はぁはぁと運動をしたわけでもないのに息が上がってる。
「は…はぁ…メイさん待って…」
「……ごめんね、急き過ぎた。」
メイさんはゆっくりと身を起こし、ベッドの端に腰掛けた。
「…メイさん。」
「ごめんね…御形くん。」
その背中があまりにも寂し気で思わず抱き締めた。
「えっ…御形くん?」
「…ゆっくりでいいなら付き合うよ。」
「…ホント?」
「あぁ…俺も腹決めた。」
「いいの…?」
「好きにさせてくれるんだろ?」
メイさんがバッと振り返り、俺をぎゅうと抱き締めた。
「させる!必ず!」
必死な声に俺の肩口にある頭を撫で、そっと抱き締め返す。
大人びて見えてもやっぱり子どもなんだなぁ…と思った。
「頼んだ。」
「……御形くんって男前だね、惚れ直した。」
「ははっ!男なら男らしくいなきゃな!」
メイさんが顔を上げちゅっと額に口付けた。
「…これ以上いると止まらなさそうだから、今日は帰るね。」
抱き締めた腕を解きメイさんが立ち上がる。
「あ、待って。」
「え?うん。」
ベッドから立ち上がれば本棚へ向かい一冊の本を手にメイさんの傍まで行く。
「これ、俺のおすすめ。」
「あ!ありがとう!大事に読むね!」
手渡すとメイさんはもう一度額に口付けドアへ向かった。
俺も後を追う。
「…それじゃあ、おやすみ。」
「うん、おやすみ。また明日。」
メイさんがゆっくりと歩み出したのを見届けて、ドアを閉め鍵をかける。
ドアを背にズルズルと座り込むと、頭を抱えた。
『…ゆっくりでいいなら付き合うよ。』
約束してしまった…。
明日からどんな顔をして会えばいいんだ…。
会うのが当たり前になっている思考に気付かず、明日からの生活を憂いた。
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