転生したらBL学園ゲームのモブでチャラい会計に愛されることになった件

陌屋

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BL学園に転生した件

彼の香り

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気付いたら二人して眠っていたみたいだった。
静かな寝息に胸元をそっと覗き込む、伏せられた眼を縁取る銀色のまつ毛の美しさに魅入る。
少し赤くなった目尻に指を這わせると、瞼が震えゆっくりと眼が開かれる。
「ごめん、起こした。」
「ううん...大丈夫。」
丸めていた背中を伸ばし、メイさんが流れる様に口付ける。
ちゅっちゅっと何度か繰り返しキスをすると、最後に俺の下唇を舐め顔を離した。
「泣いちゃってごめんね、嬉しくて...。」
「うん。」
「ダサいよねェ...幻滅した?」
「いや、嬉しかった。」
メイさんは目を丸くして直ぐに破顔した。
「よかったァ...やっぱ御形くん男前だよね。」
「そうか?」
「うん、包容力が凄い。安心する。」
俺の首筋に顔を埋めるとそこにも口付けをした、擽ったさに身を捩る。
甘い雰囲気を破る様に俺の腹がくぅと鳴った。
「ふふっお腹空いたよね。今日はAmber諦めて食堂行こっか。」
恥ずかしさに声を出さず一つ頷く。
上体を起こすと、メイさんはスマホを取り出し暫く何やらやり取りをしていた。
「古鬼田くんも来るって。」
なるほど、古鬼田くんとメッセージのやり取りをしていたらしい。
俺とメイさんは床に落ちた服を拾い身につける、俺がボタンの取れたカーディガンを手に取ると横から腕が伸びて来て一着のカーディガンを手渡された。
「代わりにこれ着て?」
「...ありがとう。」
自分のカーディガンをベッドに置くと、手渡されたカーディガンを羽織る。
予想はしていたが丈が余る、男としては悔しいがメイさんの香りがして安心した。
「可愛い...似合ってるよ。」
「男としては屈辱だ...。」
照れ隠しにそう返すとメイさんがベッドの上のカーディガンを指さした。
「これどうする?処分する?」
「あ~うん、処分かな。」
「じゃあ俺が処分しとくよォ~。」
「すまん、頼む。」
二人共身なりを整えるとメイさんの部屋を後にした。


食堂に着くと見慣れたカバンを肩に掛けた古鬼田くんが待っていた、俺のカバンだ。
「古鬼田くん、さっきはありがとう。カバン、回収してくれたんだ?」
「おう、気にすんな。ダチのピンチに何もしない訳ねぇだろ。」
カバンを受け取りながら、古鬼田くんの言葉にじんとした。
その後三人で食事をして別れた。
部屋へ戻ると巻かれた包帯を見てシャワーを浴びるのはやめて濡らしたタオルで身体を拭くだけに留め、寝間着へ着替えた。
貸して貰ったカーディガンを抱えベッドへ寝転ぶ。
顔を埋めすうと息を吸い込むとメイさんの香りがした。
その日はそのままカーディガンを抱き締めたまま眠りについた。


それから数日、古鬼田くんに対する花咲ナズナの猛攻は続いていたが何事もなく平和な学園生活を送っていた。
しかし、メッセージのやり取りはあるもメイさんに会えない日々が続いていた。
どうやら生徒会の仕事が忙しい様だった。
そんな日が続き痕が薄れ俺の包帯が取れた頃、メイさんからメッセージが届いた。
『今夜三人でAmberに行こう。』
俺は直ぐさま了承のメッセージを返した。
今日も古鬼田くんと寮へと帰っていた。
「今日は一人で行くなよ。」
「わかったってば…。」
「お前には危機感が足りてねぇべ。」
「そうかなぁ?」
自身の顎を撫で考え込む、あんな事何度もある訳ない。
いや、あってたまるか。
部屋に着けば準備出来たら声かけろと言われ、頷きながら部屋へ入る。
ベッドにはメイさんのカーディガン、あれから毎日抱いて眠るのが日課になっていた。
持って行くか迷ったが荷物になるだろうと思いやめた。
制服から着替えカバンを持ち部屋を出て鍵をかける。
古鬼田くんはもう準備出来ていたらしく、廊下の壁に凭れ掛かっていた。
「ごめん、待たせた?」
「いや、さっき出て来たとこだ。」
古鬼田くんが壁から離れると歩み出した、その後を追う。
「傷、治ったんか?」
「うん、もう殆ど痕も残ってないよ。」
袖を捲り見せる。
「…ん、残んなそうで良かったな。」
「ありがと。」
袖を元に戻しロビーへ向かう。
「Amberってこっからどんくらいかかんの。」
「歩いて10分くらいだよ、でも穴場。」
「へぇ、意外と近いんだな。」
靴を履き替え、外へ出ると門の前にはもう見覚えのある銀髪がいた。
「メイさん!」
俺は声を上げ駆け寄った。
メイさんがこちらを振り返り手を振る。
「御形くん!古鬼田くん!」
「メイさん、久しぶり。」
「うん、久しぶりィ~!会いたかったよォ~!御形くん不足だったァ。」
肩を抱かれ頬擦りされる。
そこに遅れて古鬼田くんが合流する。
「メイさん、うっす。」
「古鬼田くんも久しぶりィ~!」
「お久しぶりっす。」
古鬼田くんがペコッと頭を下げる、この礼儀正しさもメイさんのお気に入りポイントだ。
「じゃあ、揃ったことだし行こうか!」
「テンション高いっすね。」
「楽しみにしてたからねェ~!」
そう話しながら三人肩を並べてAmberへ歩み出した。


Amberへ着くとメイさんを先頭にドアベルを鳴らしながら入店する。
「瑞希さーん!今日のおすすめ三つ!」
「また新顔か。」
「そう!可愛い後輩!」
そう応えながら前にも座った一番奥の席へメイさんが腰掛ける、俺らはメイさんの対面に。
今日もお客はいない。
瑞希さんがお冷を持って来てくれて礼を言い、対面に座るメイさんの顔をまじまじと見る。
「…メイさん寝れてる?」
メイさんの目の下には薄らと隈が出来ていた、心做しかやつれてる気もする。
「え?いや、あはは…ちょっと忙しくてねェ~。」
「眠れないくらい生徒会って忙しいの…?」
「まぁ、そんな感じ。あ、そんな事より二人に報告。」
そんな事よりって…と思いながらも聞く体勢に入った。
「御形くんを襲った計七名は生徒会権限により退学となりました。古鬼田くんお手伝いありがとう。」
「えっ…?」
「驚いてるが、拉致に強姦未遂だホントなら警察案件だべ。」
「それは、まぁ…なら、古鬼田くんが手伝いってのは…?」
「俺が古鬼田くんに連中の生徒手帳を預かって来て貰ったのさ。」
没収したの間違えでは、と思ったが黙っておいた。
「連中どうもあの場を録画してたみたいでな、それも証拠にあげた。」
「ってな訳で退学処分になったわけ。これで当分馬鹿な事する奴は現れないから御形くんは安心して。」
メイさんに手を両手で包み込まれ、古鬼田くんには頭を撫でられる。
「二人共、ありがとう。」
二人の顔を交互に見、微笑んだ。


今日は海老グラタンとミルフィーユだった。
海老グラタンはシンプルながらに美味しく、ミルフィーユは手作りとは思えないくらい美しかった。
食後の珈琲も頂き、三人満足で帰路に着いた。
メイさんはカーディガンを取りに来るらしく一緒に部屋まで来た、部屋の前で古鬼田くんと別れドアを開けてメイさんを部屋に招き入れてから後悔した。
カーディガンはベッドの枕元に置いたままだったのだ。
「メ、メイさんこれは…!」
言い訳を考えるが何も浮かばない、焦り視線を彷徨わせる。
「…もしかして、毎晩ベッドに持ち込んでたの?」
事実を突かれ心臓がドキンと跳ねる、気持ち悪いと思われたかも。
そんな事を考えていると腕を掴まれ抱き寄せられた、嗚呼…メイさんの香りだ。
そんな場合じゃないのに、安心してメイさんの香りを吸い込む。
「…数日ぶりの本物はどう?」
「…安心する。」
もういいかと開き直り、メイさんの首へ両腕を回し胸元へ顔を埋めメイさんの香りをめいいっぱい吸い込む。
するとメイさんが俺を抱き上げ、ベッドへ下ろされた。
「俺にも数日分の御形くん補給させて。」
言葉は優しいがギラついたメイさんの眼に心臓をドキドキと鳴らしながら頷いた。
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