姉弟日和

序章・それは闇底から深々と②

男が帰った後、俺は姉に聞いてみた

「今のって、姉ちゃんの彼氏？」

姉の表情が見れる様に、ゆっくりとゆっくりと、まるで〝毒〟が身体を侵していくように近付き

ーあと１歩、姉の鼻先に触れる距離

その距離まで近付くと、姉に笑顔を向ける。

姉は、２つに括った髪を揺らし頬を赤らめると、俺から視線を逸らすように

ー僅か２歩、俺が触れる事の出来ない距離

その距離まで離れてしまった
そして、小さく頷こうとした姉の動きを否定するように

「ヤダよ」

口から思わず発していた言葉

言われた姉も驚いた表情かおをしていたが、言葉を発した当人である俺も驚いてしまい、慌てて手で口を塞ぐ


姉は、あの困った様な笑顔で俺を真っ直ぐ見つめ

「恥ずかしいじゃない、バカ…全く、まだ子供ね、早く姉離れしてよねー」

そう言いながら、２階にある自室へ行く為に俺を通り過ぎて行った

「…違う…俺…俺もう子供じゃないよ、姉ちゃん…」

姉が俺から離れていく、その恐怖は俺のナニかを深々と呼び起こし

そして〝悪魔〟が生まれた


（あぁ、解った、理解した）

姉を取り戻すには、あの男が邪魔なんだな…
先ずは、姉とあの男を別れさせる事から始めよう。

それは、闇い底から深々と湧き起こる、俺の醜い嫉妬と独占欲の幕開け


そうして、また月日は流れるー




それは闇底あんていから深々しんしんと（序章、終）