姉弟日和

我妻 夕希子

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第1話・花を手折る、その前に②

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「アンタって、何も付けずに良く食べれるわね」

姉さんがしみじみと呟く。

「美味しいよ、本来の味ってヤツ?」

冗談めかして言うと、姉さんは真剣な顔で「なるほど」と頷いたのだった。



*****


食べ終わった食器を台所の流しへ置くと、俺は真新しいブレザーを羽織った。
俺の高校は深い紺色(と言ってもほぼ黒に近いが)でネクタイは赤色だ。

「おぉー!格好良いじゃん!いいね、いいね!」

姉さんは俺の制服姿を見て、嬉しそうに拍手を送る。

「俺の事は良いから、ほら、行くよ」

段々と恥ずかしさが勝り、俺は姉さんの肩を抱き寄せながら玄関へと歩いた。

玄関に着くと、俺は学校指定の靴を履いた。
姉さんも慌てて自分の靴を履いている。

そして、2人一緒に「行ってきます」と告げると、玄関のドアを開けた。


*****


通学路が途中まで一緒という事もあり、俺達は肩を並べながら歩いている。

姉さんは腕を組みながら、今朝の朝ご飯の不満をブツブツと零していた。
「やっぱり朝ご飯は、お米だと思うのよ、お母さんは手抜きしてるんだわ」と眉を顰めると1人でウンウンと頷いていた。

「母さんも忙しいんだから、そんな事を言っちゃダメだよ」

そんな姉さんを見遣ると、俺は可笑しくて笑ってしまう。
すると姉さんは俺の方を見上げ、真剣な表情で「確か…アンタって、パン派だったわよね?」と言ったのだ。
俺は思わず素っ頓狂な声を上げる。

「へっ?!」
「お母さん、アンタ凄くない?!」
「お、俺贔屓ってなんだよ」
「だって、毎朝、パンなんだもん…」

絶対アンタの為だわ。と、姉さんは口を尖らせながら上目遣いで俺を見てきた。

「ち、違うと思うけどな…」

俺は姉さんの視線を受け止めれず、曖昧な事を言いながら顔を逸らした。

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