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第1話・花を手折る、その前に③
しおりを挟む暫く歩いた後、俺達は交差点へと着いた。
この交差点が姉さんとの分かれ道となる。
「唯衣、この先の行き方ちゃんと解る?大丈夫??」
「…姉さん、俺をバカにしすぎ…」
姉さんが不安そうに俺の顔を伺ってくる。
正直、俺を何歳だと思っているんだ、と溜息が漏れてしまった。
周りを見渡すと、互いの高校の生徒達も少しずつと増えてきた。
信号待ちをしている俺達の近くに、姉さんと同じ高校の生徒達がやってきた。
男女共に2人ずつのグループだ。
そのうち1人の男子生徒が、チラッとコチラへ視線を向けてきた。
その視線の先を辿ると、姉さんの姿ー
(アレが何学年か知らないけど、少し牽制しておくか…)
瞳を細めると信号を見上げた。
反対側の信号が点滅し始めたのを確認する。
姉さんの肩に手を置くと、男子生徒をチラッと見遣る。
姉さんは、肩に手を置かれ、不思議そうに俺を見ていた。
「唯芽」
「え?」
姉さんの名前を甘く呼ぶと、俺は前屈みになった。
そして、目を見開いている姉さんの左頬に軽く口付ける。
チュッと音を鳴らすと、俺は名残惜しそうに姉さんから離れた。
離れる際、あの男子生徒を見遣る。
男子生徒は少しばかり赤面して目を逸らした。
(そうだよ、姉さんはね?俺のなんだ、だからー)
ニヤリと男子生徒を見る瞳が無意識に嗤った。
(ごめんね、姉さんに興味があった?でも、ダメだよ)
信号の色が変わる。
姉さんに「いってらっしゃい」と告げると、俺はこれから3年間、自分が通う高校へと歩き出す。
まだ事態を飲み込めていない姉さんは、呆然と立ち尽くしている事だろう。
そんな姿を想像して、俺の表情は緩んだ。
花を手折る、その前にーー
(さぁ、準備を始めよう)
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